第15話 気づいた時には大事なモノは失くなっている

「明日は指輪買いにいくんだよね~♪」


「行かねーって言ったろ?」


「でも宣言したし?」


「撤廃もしただろ?」


「出来てないよ~!」


「へらへらしながら喋るな!」


帰り道香織と晃太はそう話す。


「てかついてくんなよ。俺の家あっち。お前は向こうだろ?」


「何言ってるの?晃太くん?今日も私の家で寝泊まりだよ?」


「何で?」


「何でって………私がそう決めたから。」


「ふざけんな。」


「だから明日の服の用意とかだけしていくために家に帰るんだよ?晃太くんの。」


「俺は俺の部屋でリラックスしたいから行くだけだぞ?」


「私の部屋もリラックスできるでしょ?何度入ってきたことか。」


「入ってはいたけど。今とは現状が違う。今はヤバイから。何か野生の勘的に無理。」


「でもきてもらうからね?晃太くんママパパともにおっけーでてるから!」


「アイツらの意見を取り入れるな。もう。バカだから。」


「バカって……とりあえず今からいくよ?晃太くんの家に!」




「ついたね!」


「ホントに来やがった。」


「嘘はつかない主義だから!」


「いらない主義だな………」


「はぁ………まぁ入るか……じめじめ湿気すごいし………」


「ホント。ワカメになっちゃう。」


「なっとけなっとけ。」


「なったらワカメ汁にして食べてくれる!?」


「何で嬉しそうなんだよ?食わねーよ。グロい。」


「そっか………残念………」


「何でしょんぼりするかなぁ?」


意味不明だわ。とりあえずドアを開けよう。


「ただいまー………って………あれ?」


何か静かなんですけど?何か音がないんですけど?


「おとん?おかん?」


「あ、ママパパさん少し時間空けてくれるって!4時間くらい?」


「何のためだよ。」


「そりゃ………色々でしょ?」


今16時。20時まで帰ってこないのか?あのアホども。


「ともかく晃太くんの部屋に行こうよ!お茶用意するから。私が。」


「お前の家じゃねーだろ?」


「私の家にもいずれなるんだから!大丈夫。大丈夫。」


「その言い方は大丈夫じゃねーよ?」


「ともかく早く上がって!上がって!」


「あ、あぁ、うん………」


この時気づけば良かったのだ。こいつ一人にしたらダメなことを。



「お茶用意したし!部屋も入れたし!やることは1つ!うりゃぁぁ!」


という声とともに………ベッドにダイブする香織。


「意外と俺気にするよ?菌とか汚いとか。」


「大丈夫!私は綺麗!」


「そうゆーヤツに限って汚いんだよ。」


「汚くないもん!ほら見る?」


「何を見せる気だ?おい!脱ぐな!バカ!」


「痛っ!」


香織の頭にチョップを入れる晃太。


「入れるのはフランクフルトだけにしてよ……」


「突っ込まないからな?」


「突っ込まないって突っ込んでくれるの!」


「バカ言ってんな!ほら明日の用意だろ?用意するぞ!さっさと俺は!」


「俺はって。晃太くんの家なんだから。晃太くんしか用意できないでしょ?」


「だったらむかつくこと言わないでさっさと仕事させろ!」


「え?勝手に突っ込んでるだけじゃん?」


「こ、この………もういいや………疲れた……」


「疲れたならこのお茶をどうぞ。」


「お前が主にメインで疲れてるからな?分かれよ?」


といいながら差し出したコップの麦茶を飲む。旨い。やっぱりお茶は麦茶だ。


「さっ!用意しよ。」


「ゆっくり用意してね?私は待つから。私は何分でも15分でも待つから…」


「何で15分刻み?」


「テキトーだよ。」


フフッと笑うその顔に異変に気づけば良かった。この時に。逃げれば良かった。このときに。

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