第10話 彼女の頑張るって言う言葉は曇り空

「いい天気だね~♪」

「いい天気ではあるね。」

「あ、あそこの花綺麗!何かな?」

「いや、普通の野草の花じゃない?」

「野草の何だろう?晃太くん分かる?」

「野草博士じゃないんだから分からねーよ。」

「じゃあ野草博士を呼ぼう!すみません!この辺りに自分野草博士だぞ~!という方お心当たりのある方来てください!」

「でかい。でかい。声がでかい。止めて。注目されるから…………あと………」

「何?」

「何しれっと恋人繋ぎしてんだよ。」

「え?」

「え?じゃないし。」


香織の家から学校の今手前まで我慢してみたがやっぱりおかしい。我慢しすぎたとは思うけど。やっぱりおかしい。


「恋人なんだから。恋人繋ぎでしょ?」


「…………俺が認めてない場合どうなるの?それ。」


「それは多数派が勝つ時代なので。」


「本人の意思をまず尊重しろよ。」


「まぁまぁ、落ちついて。ほらヒーヒーフーヒーヒーフー。」


「ラマーズ法じゃないから。俺出産しないから?」


「あ。そっか。私が出産か!鼻からスイカの準備しなきゃね?」


「……………」


アホに付き合うとアホな脳になる。仕方がないが厄介だ。

とそこに。


「おはよー。香織ちゃん!」


後ろからクラスメイトの香林 灯(こうばやし あかり)が抱きついてくる。


「うわ!びっくり!おはよー。灯ちゃん!」


「う~ん。いつ見てもデカイ胸だよね?これを晃太が揉んだんだ?」


「……………香林揉みながら話すな。お前はすぐそっちに持っていくよな。話を。」


「だってクラスライムにヤった報告したお二人に比べたら………恐れおおくて!」


「お前………ビンタか張り手かどっちがいい?」


「どっちも一緒じゃない?てか女子に暴力ふるったら問題になるんじゃない?自分で問題の種増やしてどーすんの?」


「ぐっ……………」


香林の言葉にグサリと刺さる。確かに問題はもう増やしたくない………でも………


「どんな感じだった?」

「赤ちゃん出来るの?」

「意外と肉食系だったんだね?」

「知らなかったの?香織ちゃんはガンガンに肉食系だよ?だけど鈍感さんのせいでね……」


「な、なんだよ………」


じっ、っと見つめる香林率いるクラス女子グループ。てかいつの間にそんな集まった?例えが悪いがゴキブリ並みのスピードだぞ?


「え、てか何で急にそんなヤることになったの?」

「確かに!」

「何で?」

「何で?何で?」


またじっ、と見つめる女子軍団。


「それはね晃太くんが」


「あー」

「おーい!晃太っくん!おっはよー!えーてかライムで聞いたんですけどぉ?香織ちゃんとセックスしたって本当です………かべし!」


いきなり大声で突っ走ってくる男をビンタで吹き飛ばす晃太。

吹き飛ばされた少年は草むらに………


「えへ?酷くない?酷くない?いきなりビンタとか酷くない?クラスメイトにビンタとか酷くない?」


「お前が朝から下ネタワード発しながら走ってくるからだろうが。石村」


草むらで痛痛っといいつつもいつものバカみたいな顔をしているのが石村 友明(いしむら ともあき)、まぁコイツはこんな扱いでいい。


「てか元々全員にビンタするつもりだったし。」


「女子男子関係なく?」


「………そこを今悩んでるとこ。」


「悩んでる状態で俺殴られたの?」


「お前はそんな扱いでいいだろ。」


「酷くない?俺に対する扱い酷くない?」


てか門の前で何をこんな喋ってるんだよ。


「早く入ろうぜ。」


「その前に理由を聞かせてよ?色々不透明じゃない?」


「不透明でいいんだよ。家族でもないお前らに伝えることではないんだよ。」


「クラスの目標は皆仲良くだよ?嘘偽りあったらダメだよ?」


「香林。嘘偽りがあっても人は仲良くできる。大丈夫だ。」


「そういうことじゃないよ。嘘偽りはダメだよ?って目標でしょ?」


「てか何だよ今さらだけどその目標は?小学生の目標かよ?」


「仕方ないでしょ?先生が適当に決めたんだから。」


「じゃあ効力薄いじゃねーかよ。早く行くぞ香織。」


「あ、ちょっと……ホントに伝えないの?」


「伝えたいのかよ?」


「伝えたいね。私の気持ち。」


「アイドルアニメとかなら名台詞になりそうな言葉だな。」


「誰にも伝えないなんてもったいないよ!」


「もったいないとか関係なくない?てか誰にも伝えないとか言ってねーし。」


「え?」


「あ、来た。」


晃太たちの後ろに1人見える人影は………


「よっす。」

「よっす。」

「おはよう。進藤。」

「何だよ。何か改まって?気持ち悪い。」

「ちょっと時間あるじゃん?」

「時間?まだ10分くらいあるけど………」

「じゃあこっち来て?」

「はぁ?はぁ………」


不審に思いながらもついてきた彼。

そう彼こそが


「で、こんな階段の真下に呼び出して何の用だよ?」


大きい欠伸をしながら話す彼が

進藤 優(しんどう ゆう) 晃太の男友達で一番の友達、親友である。


「進藤、ライム見たよな?」


「あぁ、ライム?見たよ?」


「どう思った?」


「どう思ったって………ついにか~って」


「お前もそっち派なのかよ………」


「晃太くんそっち派も何も皆当然みたいなライムのメッセージだったよ?」


「………………進藤もそう思ってたのか?」


「いや。俺はお前が香織ちゃんのことをホントに女としてではなく親友として見てんだな~って理解してたし香織ちゃんが晃太大好きなのも理解してたよ?」


「いつからだよ。」


「中一くらいからかな?」


「中学から?マジかよ………」


「で、本題はなんだよ?こんなとこまで呼んで何かあるんだろ?言いたいことが?」


「進藤……さすが進藤。話が早くて助かる。そうなんだよ。聞いてくれよ。俺の災難を。」


「災難?」


「おふざけだったんだよ?」


「おふざけ?お前何言ってるんだよ?話をまとめろ。」


その進藤の言葉に渇を入れられ本題へ。


「進藤。彼女いないよな?」


「彼女?う~ん。いない、な。」


「だよな?もしだよ?想像上の彼女がもし誕生日プレゼントに私ってやったらどう思う?」


「まぁ、引くわな。」


「だよな!だよな!だよな!やっぱり俺は間違ってな」


「だけど!」


「へ?」


「相手はほぼ10年以上片思いしてきた人間

それがそんなこと言われたら………ネジ飛ぶよな。」


「………………」


進藤は冷たくそういう。


「てか何でそんなことしたの?お前にも気があったんじゃねーのか?」

「そうだ!そうだ!」


「てかセックスしたって言ってもいくら何でも力の差でお前香織ちゃんに勝てるだろ?なのにそれをしなかった、その時点でお前も受け入れの態勢に入ってたんじゃねーの?」

「そーだ!そーだ!」


「うるさいヤジをとばすな。香織。」


ここぞとばかりにヤジをとばしまくるな。


「いや、冗談だと思うし面白いと思って俺は言っただけでそんな気持ちはないし。それにコイツ以上なくらい力強くてそれで………」


「「「「「認めなよ!」」」」」


どこかから聞こえてくる誰かの声……それはライムのテレビ電話機能のところからで……


「香織!お前!ライムで今言ってたこと全部バラシやがったな!」


「皆も聞きたいだろうから!これは大衆の意見です!」


「俺の意見は通ってないんですが!」


「そんなことより…………」


ライム画面の香林が指を指す。


「そんなふざけた文言言ってセックスして今さら元の関係に戻る?無理に決まってるでしょ?早く諦めなさい。私たちは準備万端。私たちは君たちからのほのけエピソードをこれでもかというくらい貰えるから!さぁ、早く付き合」


プツン。


「あ、切った!ダメじゃん!」


「ダメじゃねーよ。これは少しばかりの反抗だよ。」


反抗にしては小さいと晃太としても思うが。


「香林、彼氏いたよな?」


「いるよ。サッカー部の内藤くん。」


「なら、俺らのほのけとか関係なくね?」


「そことそこは違うんじゃね?」


「………はぁ…………意味分からん………」


授業、いや、ホームルームが始まるからのそのそと動く晃太。


「外堀は完璧に埋まってるね!」


「あぁ、ホントに完璧だと思うわ。」


「なんなん?親に許しでも行ったの?」


無言でうんっと進藤に頷く。


「進撃するヤツみたいにもう逃げれないんじゃないの?」


「一ミリでも隙間が空いてたら出れるだろ?」


「絶対に開けさせないよ?私今日頑張るんだから!」


その頑張るがとても怖かった。

殺すと同じくらい怖かった。

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