第9話 人生で最低で最悪な日の始まり
目が覚めると………そこにはカメラを持った香織のお母さんがいた。
「何……してんすか?」
「写真撮ってるの!」
「いや、行動は理解できます。でも、行動に至った経緯が分かりません。」
「I have 香織 晃太 I have ベッド ふん!
同衾!」
「………………ふざけてます?」
「香織のためを思って写真とってるんだよ!結婚式の写真で流すんだから。」
「流せませんよ。こんな写真。」
涙も引っ込むぞ。
「とりあえずおはよう。目覚めはどう?」
「最悪ですね。盗撮されてるんで。」
「盗撮じゃないよ。親という力を使った職権乱用だよ。」
「誇らしげに何を言ってるんですか?」
職権乱用してる時点でアウト何ですよ。
「あ、香織も起こしてあげて?もう学校にもいかないといけなくなるし。」
「おばさんが起こせば……」
「お義母さんと呼んでくれてもいいんだよ?」
「そんな切なそうに言われても何にも切なくないんで。」
「てか晃太くん横だから起こすくらいいいじゃん?」
「はぁ……………まぁ、いいっすけど。」
この人も頑固だよな…………
「香織………起きろ。朝だぞ?起きろ?学校にいくぞ?」
「う~ん………むにゃむにゃ……晃太くんもうそんなに入らないよ。もうお腹パンパンだよ。ミルク漏れちゃうよ………ミルク溢れ出るよ………って痛!」
頭をグーで強めにいった晃太。
「あ、痛。何でそんな酷い起こしかたを?私が何をしたというのだ。」
「デカイ声で変な卑猥な言葉を喋ってたんだよ!馬鹿たれ!」
「え、そーなの?無意識だわ………愛って怖いね?」
「愛じゃないし。性欲だし。狂気だし。てか無駄にデカイ声………大五郎さんに聞こえたら………」
「大五郎さんならもう漁に出たよ?漁師の朝は早いんだよ?」
「あ、そっすか………」
顔に安心って文字が出るくらい安心してしまった晃太。
「あ、けど晃太くんに。大五郎さんから。」
「え?へ?手紙?」
「中開けてみてみて?」
手紙を開けるとそこには………
娘のためを思い2人でみっちり話したいことがある。また日にちを決めて2人で夜が明けるまで話そう。
そう………書いてあった。
「………………」
「何て書いてあったの?晃太くん?」
「………地獄への招待状だった。」
「早く制服に着替えなさいよ?」
「はーい!」
「パン焼いたけど何を塗る?」
「私ブルーベリージャム!」
「晃太くんは?」
「え、え………な、なんでも……」
「よしっ。じゃあ黒ニンニクジャムで……」
「待ってください。俺もブルーベリーで。お願いします。」
歯磨きと制服までしっかりと用意してきていた親。そこまでするくらいなら帰らせろよ。
「ちゃんと制服は着るのよ?あ、香織裏表逆じゃない?上の服。」
「あ、ホントだ!」
「何で気づかないんだよ。違和感あるだろ?」
「じゃあ早く脱いじゃいなさい。」
「はーい!」
「ちょお!俺がいる場所で脱ぐなよ!」
「………何を言ってるの?晃太くん。私たちはもうまぐわった存在。一つとなった存在、つまり地球のエゴと同じ存在なんだよ?」
「例えが広すぎて分かりにくい。」
「まぐわった存在なのに今さら下着でふらつくなんて、弱々しい。」
「ふざけんな!俺はほとんどあの時記憶失ってんだぞ?だから下着でビビっても当たり前だろ!」
「腑抜けたことを。それなら下着の中のプリンも見せてあげようか?ほら……美味しそうなプリ……」
「早く着替えろ!アホ!」
てなコントをしてる間に時間は過ぎていき、いつもの登校時刻に。
「お前のアホな会話が無ければもっと早く行けたんじゃないか?」
「あれは必要な事柄なのです。我が宗教において………」
「いつてめえが宗教のトップになったんだよ?そんなインチキ宗教すぐ化けの皮剥がれるわ。」
玄関でもボケ倒す彼女を前に扉を開けようとする晃太に……
「ちょっと待って!」
勢いよいスピードの声。
主は香織のお母さん。
「はい!2人とも弁当!作っておいたから!」
「ありがと!」
「………あざいます……」
好意には素直に受け止めないとな………
けど………
「精力とか元気とかが一番だからね!やっぱり!それを皆の前で食べてね!」
何だろう。この爆弾を持ったような感覚は…
「じゃあ行ってきます!!」
「行ってらっしゃい!」
「…………行きます…………」
がらがらと扉を閉める晃太。
この時晃太は知らなかった。今日一日が一番最悪で最低で一番人に注目されて人にある意味人気になる日だとは到底思わなかった。
ホントに。あんなことになるなんて思わなかったんだよ。
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