第7話 ゴム無しのぉ~威力ぅ~

「はい♪いただきます!」


「いただきます!」

「……………」

「……………」


香織のお母さん、大五郎さん、香織、晃太。

4人は椅子に座り食卓を囲む。

食卓の上には、トンカツに赤飯に鯛に………祝福ムード満載のご馳走が並ぶ。

全然食べる気にならないけど………


「大五郎さん、それ箸じゃないですよ?リモコン。」

「大五郎さん、それお茶じゃないですよ?醤油。」

「大五郎さん、それトンカツじゃないですよ?箸置き。」


全然食べる気にならないのは晃太だけじゃないみたいだ。いや、違うな。大五郎さんは混乱しているんだな。だって普通醤油とお茶間違えないでしょ?醤油がぶ飲みしたら死ぬし?


「……………………晃太くん…………」


「は、は、は、は、はい!」


急に呼びかけられて背筋が凍る。急激に寒くなったし………一気にスナイパーに狙われた感覚だわ。


「晃太くんは………………香織のことが好きなのか?」


「え~っと………友達の範囲でいいなら大好きです。」


「友達の……範囲ぃ?」


「いやっ……色々な事情がありまして……そのなんていうか……」


「香織と付き合うのか?」


答えは聞かないのか先の質問に進む。


「付き合うとか………そんなことはな」


「ないよな?ないよな?」


「はい!はい!ないですよ?」


被せるように言葉を追撃させてくる大五郎さん。あれ?これいけるんじゃ………


「ないですよ!ない!ない!香織と付き合うなんて0パーセントです………」


言い切る前に頬を貫く弾丸のようなパンチが飛んできた。もちろんそれは………


「いってぇ!」


倒れながら飛んでいく晃太に大五郎さんはたちながら話す。


「そんな饒舌にないない言われると逆にうちの娘が魅力ないみたいでムカつく。」


「それでパンチしたんすか………」


晃太悪くなくない?


「けど、けど………大五郎さんの意見は反対ってことですよね?俺と香織の恋人に反対ってことですよね?だったらそれだけで……」


「セックスしたんだろ。」


「………………」


つかれたくとこつかれる。


「もちろん………ゴムはつけたな?」


「……………」


「ゴムはつけてしたよね?」


「……………」


口カサカサで寒気と吐き気が出てきた……


「え~っと………その………」


「お父さん!お父さん!

ゴムなし中だし4時間連続コースだよ!」


ドカン。バコン。

今度は足で。2発。もう部屋から飛び出した晃太。廊下に飛んでいく。


「き、き、き、君は?と、と、と、友達……し、親友と思っているやつに………そ、そんなこと出来るヤツなのか?君への印象がガラリと変わるんだが。」


「ゲホゲホ………ち、違います!違うんです!」


「何が違うんだ!もう事は起きてしまっただろう!事が起きてから何を弁論する必要があるんだ!」


「違うんです!違うんです!俺に責任はないんです!全て香織のとんだぶっとんだ勘違いから始まってるんですよ!」


「勘違い?」


晃太は、誕生日プレゼントは俺、のことをこと細かに説明した。よしっ。これでもう大丈夫………


ガスッ!


脳天から足に向けて拳骨の要領で叩かれる晃太。まるでガラケーのように蓋がしまる。


「それは!晃太くん!君が悪い!」


「な、な、何で……ですか?」


「うちの娘のピュアさを舐めないで欲しい。」


「……………」


ピュアなヤツは4時間も人を固定して性行為しないしまずピュアというかバカなのでは?


「でも……………大五郎さんの意見はどうなんですか?俺と香織が付き合ったらイヤでしょ?ならセックスどうこうより」


「君は頭がいいよな。」


「へ?」


「学年で一桁だったっけ?」


「え、あ~まぁ………日によりますけどね…」


「性格も温厚だ。」


「温厚………温厚というかマイペースというか………」


「顔もそこそこいけている。」


「それは買い被りすぎ…」


「それに私は長いこと前から香織が晃太くん、君を好きなことを知っていた。」


「え?」


「知っていながら無視をしていたんだ。まだ娘を手放したくないと。」


ちょっと待って。話がイヤな方向に向いてないか?風向き良くなくないか?


「だがそれも年貢の納め時かな………」


空を見上げる大五郎さん。

いや、ちょっと……何、哀愁漂わせてるんですか?ちょっと、ちょっと!


「晃太くん。一発気合いのビンタをしてもいいかい?」


「はい?」


「拒否権はない。」


「あのないなら言わないでもらえませんか…」


2メートルある大男に軽々持ち上げられ目の前に立たされる。そして………


「娘を………香織を………君に……任せる。

気合いの一発だぁ!とりゃあああああっ!」


ビンタの勢いは凄く玄関のドアに頭から当たる勢いでふき飛ばされ………

頭を触る。血が一滴も出てないのは魔法か何かか?体は死ぬほど痛いけど。


「君に……社 晃太くん!君に!香織を預ける!だからちゃんと守るんだ。もし浮気や別れようなんてしたら……………」


ポキポキと拳を鳴らす大五郎さん。


「君の脳ミソで味噌汁つくってあげるよ?なぁ、晃太くん?」


「は、は、は、は、はい…………」


力で脳ミソ抜くってこと?どんだけ怖い脅し文句だよ………


「じゃあ、私と晃太くんのお付き合い兼結婚は?」


「私が認めた男だ。許すよ。」


「やったー!!やったー!!いぇーい!いぇーい!ブイブイ!いぇーい!」


「痛いから止めろ………」


完全に闘いを終えて満身創痍の戦士にパンパン叩くのは良くないと思うが?てか結婚?


「これからも娘をより一層頼むよ。晃太くん…………」


「………………あ、は、は、はい………」


大男が土下座をしてこちらを睨んでる場面でノーとは言えない。逆らえない。それが生物としての性。

最悪だよ………最悪………なんか謎のレッテル貼られたし………ほんの少しの力じゃとれないぞ……これは………


「ピンポーン!大正解!」


後ろの方で拍手をする香織のお母さん。


「晃太くん、正解だったでしょ?食らった回数。これが愛故の力よ!」


「……………」


鼻高くしてますけどもっと他に掘り下げる場面があっただろう!




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る