第5話 一筋の光すらも飲み込む闇

「いや~まーちゃん!ついにね!ホントうちの息子が焦らしゃってゴメンね!」


「いやいや!何言ってるの!みーちゃん!結果良ければすべて良しよ!結果中だしセックスに落ち着いた訳だから!文句ないよ!」


中だしセックスに落ち着いた、こんな汚い日本語があるんだな。日本には。


ちなみにまーちゃんとは香織のお母さんのこと、沢 真理(さわ まり)さんからのまーちゃん。

みーちゃんとは晃太の母親、

社 雅(やしろ みやび)からのアダ名である。

ちなみにちなみに晃太の父親は

社 圭介(やしろ けいすけ)と言って家でのおかんの呼び方はけーちゃんである。

結婚してもう何十年も経つのにここまでラブラブだとこちらとしても少し………気持ち悪い。普通で、普通の距離感でいてほしい。


「で、何でおかんと親父がいるの?」


「私がライムで呼んだのよ?ついに2人がセックスしたっ!って」


「そのライム送るのもどうかと思いますし送られてきてすぐ来るのもどうかしてると思いますけど?香織のお母さん………」


「香織のお母さんっていいかた長いでしょ?ここは一気に縮めてお義母さんにしちゃおう!」


「しませんよ?縮めても俺がすぐそれ伸ばしますからね?」


何段階すっ飛ばした過程だ。


「てかいい加減に言わないと。」


「何をですか?」


「どうしてセックスまで持っていったかを」


「そうそう!」

「お父さんお母さんはそれが一番聞きたいんだぞ?」


「息子のめちゃくちゃプライバシーの入った性事情そんな聞きたいか?」


「「聞きたいからいるんじゃん!」」


「……………」


ハモるなよ。また両親…………


「俺が………冗談でよ?冗談でな?冗談で…

今日香織誕生日じゃん?だから……よくテレビとか漫画とかの一種のネタみたいなモノであるじゃん?誕生日プレゼントは私! みたいな?それを香織に言ったんだよ。そしたらこの有り様で………」


「晃太。」

「晃太。」

「晃太くん。」


「はい?」


順々に親父おかん香織のお母さんに名前を呼ばれる晃太。そして………


「「「それは晃太(くん)が悪い。」」」


全員口を揃えてそう言った。


「何で?」


「晃太。人間にはついちゃいけない嘘とついていい嘘があるんだよ?」


「ついていい方の嘘だろ!」


「バチバチバリバリについたらダメな嘘だよ。」


「嘘だぁ~………」


「晃太くん。」


「はい?」


「うちの娘の性欲と行動力舐めないでくださいな。」


「そんなモノに誇りを持たないでもらえますか?」


「そうだよ!晃太!何のために私が香織ちゃんに写真提供してたか分かんないじゃん?それじゃあ。」


「はぁ?」


何を言ってる、うちの母親は。


「香織ちゃんが使うからって色々な晃太の写真渡してたのに私の努力はどうなるの?」


「どうにもなんねーよ!てかおかん……写真………渡してた?」


「うん。小学生の時とか中学生の時のとか」


「何で渡すの?」


「欲しいって言われたから。」


「…………なぁ、おかんは息子の写真を街中に貼れって言われたら貼るの?」


「な~に言ってるの!貼る訳ないでしょ!そんな頭悪いことしないわよ!」


「今現在いや、ずっーと現在進行形で頭悪いしおかしいんだよ。」


「え?」


「え?じゃないし!何で香織に俺の写真提供するの?」


「え、義務だから。」


「義務?日本の法律にそんなんあったっけ?」


もしそんな法律があるなら日本オワタですよ。


「義務というか同情みたいな感じかな?」


「同情?」


「香織ちゃんはずっーと晃太のこと大好きなのに晃太はずっーと親友親友とかいい抜かしこきよるやん」


「いい抜かしこきよる?」


どういう日本語?


「だから少しでも近くに晃太を感じて欲しくて写真を提供してたんだよ!」


「ありがとうございます!お義母さま!おかげで安眠、性欲解消に繋がりました!ありがとうございます!」


ぺこりと挨拶する香織。いらない。いらない。そんな話もそんな挨拶も聞きたくないから。


「まぁ、でもとりあえず。何はともあれ、中だしセックスをしてしまった以上は恋人いや夫婦にならないといけないからね!これはもう無条件で………」


「いや、ちょっと待って………」


「待てない。」


「いや、待てよ!香織の意見は全部ストレートで入るのに何で俺の言葉はどこかへ飛んでいくの?いや、聞いて?マジで!」


「何さ。一体。往生際の悪い男は嫌われるよ?」

「そうね。往生際は良くないと。」

「父さんは往生際いいよ~。見習いなさい。」

「いくら往生際が悪くても私待つから。いつまでもいつまでもナイフを持って待ち続けるから。」


「ナイフ持ってる時点で実力行使に出る気満々だろうが!ナイフを持つな!凶器を出すな!」


香織のぶっ飛んだ意見にだけツッコミを入れ話を続ける。


「確かにしたよ。確かに襲われましたよ。俺は。」


「4時間くらい食べたかな?」


「時間とかはいいんだけど………」


「もう出ないから……もう許して……もう痛い……もう声も出なくなるから……とか色々キュートな声を沢山聞かせてくれたよ!晃太くんは!」


「いらない!いらない!そんな情報親の前で言うな!」


「ふむ。今日は両家赤飯ですね?」

「ふむふむ。そうですね?買いにいかないと?」


「いらない!いらない!赤飯もいらないから!」


ダメだ!4対1では埒があかないというか分が悪すぎる。言うことだけ、今頭にある最大のネックを口に出さねば!


「貴方たちが納得しても……

大五郎(だいごろう)さんが!香織の父親の大五郎さんが!許してくれないでしょ!絶対に!」


「あ」

「あ」

「あ」

「あ」



少し希望の光が見えたか?

沢 大五郎。

漁師で筋骨粒々。身長は2メーターを超えたいいかた考えないなら化物、いいかた考えるなら大男。そんな大五郎さんは娘である香織のことを心から溺愛している………だから中だしセックスしたから付き合いますし結婚しますよ!フゥー♪

なんてふざけた言葉は許されないだろう!よしっ、勝ち筋が見え………


ガシッ。


「へ?」


両腕を親に掴まれる晃太。


「大五郎くん帰ってくるの何時くらい?」


「大体19時くらいかな?」


「なら………まだ間に合う!よし!行くぞ!晃太!」


「行くぞって、一体何処へって痛い痛い痛い!手がちぎれる!ちぎれる!」


両親共に引っ張るため晃太の体は変な感じに………


「てか何処にいくんだよ!」


「ドレスアップだよ!」

「ドレスコードだよ!」


「は?」


ドレスアップ?ドレスコード?

どちらか1つに言葉絞れよ?

てかドレス?何のことだよ!

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