ラストエピソード

「最近は父との仲も良好なんです」

「そっか! それはよかったよ」


 確か父親との仲は冷え込んでいたという話を以前聞いたことがある。


「父がミナト君と話がしたいって言ってたんですけど、どうしますか? 嫌ならいいですよ?」

「うん、一度、アリサのお父さんに挨拶しないといけないとは思ってた」


 俺はアリサの電話から父親に電話する。


「もしもし、アリサさんのお父さんですか?」

「その声は、アリサの言っていたボーイフレンドだね」

「はい」

「まずは、君に感謝を。君のおかげでアリサは助かった」

「俺は当たり前のことをしただけですよ……」

「妻が亡くなってから、厳しくしつけるだけで、アリサのことを何も知ろうとしなかった。アリサが家事がひとつもできないなんて、知ろうともしなかった。私は父親失格だよ……」

「……」

「そんな状態から、日本に飛び出す程、ウチの家庭は息苦しかったのだろう。しかし、アリサから送られてきた写真のアリサはどれも幸せそうに笑っていた」

「……はい」

「私が間違っていた。ミナト君、どうかこれからもアリサをよろしく頼む!」

「はい、俺、いや俺たちは2人で幸せになります。だから、お父さん、いつか2人で挨拶にうかがってもよろしいですか?」

「! ……もちろんだ。歓迎するよ」


 そして通話は終わった。


「ミナト君、父と通話してくれてありがとうございました」


 アリサはぺこりと頭を下げる。


「ミナト君と一緒過ごして、私も余裕ができて、改めて父と向き合うことができたんです。今までは私も父を否定するばかりで、ちゃんと向き合おうとしなかった部分もありましたから」

「そっか。なら少しは分かり合えたのかな?」

「はい!」

「うん、それじゃあさ、いつか2人で挨拶にいこうね、アリサ」

「──はい」

「それで、アリサの国のこといっぱい教えてよ!」

「はい! 日本とはまた違った良さがあるんですよ!」

「うん、楽しみだ!」





 4月になった新学年初日、俺たちは2人手を繋いで登校する。


「三年生だね」

「同じクラスになれるといいですね!」

「うん!」


 桜は満開に咲き誇り、新たな出会いを祝福しているようにも見えた。


「おはよー、アリサ、ミナト!」

「ククッ、おはよう」


 校庭でユイカ、たかしと出会う。そして、共に学年のクラス分けの表示を一緒に見に行く。


 どんな一年になるだろうと不安と期待が入り混じる。


 でも確かなことが一つだけある。


 繋いだアリサの手を離すことは、決してないということ。


 それは依存ではなく共存。お互い助け合い、俺たちはこれからも生きていく。


「さぁ、行きましょう! ミナト君!」

「あぁ!」


 どんなに困難なことがあっても、決して。



《完結》


 最後まで読んで頂き、本当にありがとうございました!

 よろしければ、最後に⭐︎で今回の作品を評価していただければ幸いです!

 次回はおまけのユイカルートです!

 

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