クリスマスパーティー その1

 1泊2日の修学旅行が無事終わり、俺たちは家に帰る。


 夕食を摂り、今はゆっくりと2人でリビングでくつろいでいる。


「しばらくお預けでしたから、いい……ですよね?」

「うん……」


 アリサの可愛らしい小顔が迫り、唇が重なる。


「んっ……ちゅ……」


 日に日にキスを求める回数が多くなるアリサが愛おしくて、つい頭をなでてしまう。


「ふふっ」


 嬉しそうに微笑んだアリサは、より深いキスをする。


「んっ……ちゅっ……うん……ふぁ……」


 脳がとろけそうになる甘美で淫靡いんびな時間。手を絡ませて、舌を絡ませ、身体を絡ませる。


「ふふっ……まだまだ……ですよ?」


 妖艶ようえんな笑みを浮かべるアリサ。その瞳に魅入られた俺は、なすすべもなく、その行為を受け入れる。


「今日は……激しいね。アリサ」

「だって……しばらくお預けだったんです。その分は取り返したいです……」

「ふふっ、そっか」

「ねぇ、ミナト君」

「何? アリサ」

「恋のABCって知ってますか?」

「あ、ああ、AがキスでBが……アレで〜ってやつだよね?」


 B以降を直接口にするのははばかられた。Bがちょっと過激なボディタッチで、Cが一線を超えることだったはず。


「はい。ユイカが言ってたんですけど、世の中の恋人はAの深いキスまで行ったら、一気にCまで行くって聞きました」

「(ユイカはアリサに何を教えてんだ……)」

「それで、Aから先に進まないのは、私の身体に魅力がないのかなって……思ってしまって……」


 アリサは少し不安そうな顔をしたので、俺は優しくアリサの頬を撫でる。


「あっ……」

「馬鹿だなアリサは。そんな訳ないよ。俺はアリサの全部が好きだ」

「ミナト君……」

「好きで大切だからさ、その……そういうのはゆっくりでいいと思うんだ。他の人がどうとかじゃない。自分達のタイミングがじっくり進んでいこう」


 俺は優しく語りかける。


「だからさ、アリサはどうしたい?」

「私はまだ、キスだけでも十分というか……そんなに焦る必要はないと言うか……」

「うん。それでいいと思うよ。俺もアリサとキスをしてるだけで幸せだ」


 アリサの顔がパァと明るくなる。


「ミ、ミナト君……! 大好きです……!」


 そして再び唇を重ねあう。今度は激しいキスではなく、ゆっくり丁寧なキス。


 2人の気持ち伝え合うにはそれで十分だった。

 




 二学期も終わりを告げる。夕食を食べている途中、アリサが提案をする。


「クリスマスパーティーをしましょう!」

「うん、楽しそうだね!」

「アタシはいいけど、アンタ達、2人で過ごさなくていいの?」

「私はみんなで楽しく盛り上がりたいです!」

「うん、俺も。ユイカもいた方が楽しいよ」

「そ、そうかしら。な、ならアタシも参加しようかな……」

「決まりだな。たかしも呼んでいいか? 人数は多い方がいいだろ?」

「はい、ぜひ!」

「まぁ、修学旅行、同じ班だったしね」





「と言う訳で、たかしもクリスマスパーティーに来ないか?」


 俺はたかしに電話をする。


『ククッ、このサタンに魅入られこの俺に、キリストの生誕を祝えというのか……。倒錯的とうさくてき過ぎて、目眩がするわ!』

「そっか……残念だな。じゃあまた……」

『──まて! 行かないとは行ってないぞ!』

「ってことは?」

『まぁ、そういう倒錯的な催しもたまには悪くてなかろう。いいだろう! この俺様が聖夜に降臨してやろうではないか!』

「最初からそう言えよ……」


 なんだかんだ、たかしも楽しみみたいだな。


「あっ、プレゼント交換するから、プレゼント持ってきてくれよな。まぁ、できるだけ無難なやつ」

『──承知』


 電話切れたけど大丈夫かな? 変な怪しいアイテム持ってこないだろうな……。

 





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