修学旅行 その3

 一日中、京都を満喫し、ホテルに着いた。アリサとユイカと別れ、俺とたかしは同じ部屋に入室する。


 ホテルの部屋は割と広く、大きなベッドが2つ。座ってみると、柔らかくも弾力性のあるマットレスが心地よく、高級さをうかがうことができた。


「ククッ、なかなかのベッドだな」

「ああ、今夜はぐっすり眠れそうだな」

「さて、19時にはディナーだ。それまでに風呂に入らねばなるまいよ」

「そうだな。俺たちの班の入浴時間は、もうすぐだ。用意しとこうぜ」

「──承知」





《ユイカ視点》



 アタシ達は今、大浴場にいる。身体を洗い、大きな湯船に浸かったところだ。


「ふぅ……」


 疲れ切った身体に、程よい熱さのお湯がみる。身体の芯からほぐれていくようだ。


「気持ちいいですね、ユイカ」

「そうね〜」


 アリサも長い髪をタオルで結い、ゆったりと肩まで浸かっている。


 アリサの一糸纏いっしまとわぬその姿は、同性であっても艶っぽいと感じた。


 特に目を引くのが、全てを包み込むような豊満な胸だろう。


「…………はぁ」


 思わず自分の小さな胸と見比べてしまい、ため息が出る。脅威の──いや胸囲の格差社会がここに存在した。


「どうしたんです? ため息なんかついて。幸せが逃げて行っちゃいますよ?」


 可愛らしく小首を傾げるアリサ。


「アリサっていつ頃から胸が大きくなったの?」

「んー、11歳の時くらいから膨らんできましたね。成長痛が酷かったのを覚えてます……」

「それだけ大きければ……ね。なんか胸を大きくする為の秘訣とかあるの?」

「気づいたらこうなってました!」

「…………」


 とりあえず風呂上がったら、牛乳飲もう。アタシはそう固く誓った。


「でも胸が大きくても、あんまりいいことないですよ?」

「肩凝ったり、好みの下着が見つからないと前に言ってたわね」

「はい。本当は今日のユイカが履いていたみたいな可愛らしい下着が着たいんですけどね……」


 そこは確かに自分の良いところかもしれない。下着選びで困ったことないし。


「あと、汗かくんですよねー。夏はボディーシート手放せません」

「そっか。谷間とかかー」

「はい。あとは男性の視線が気になったりするので、薄着しづらいですね〜」

「そっかー。夏とか薄着したいのに大変よねー」

「そうなんですよ〜」


 そう思うと胸が小さいのも悪くないのかもしれない。いや、本当はもうちょっと欲しいけどさ!


「そう言えば、アンタ達付き合ってるけど、どこまで行ったんだっけ? A? B? C?」

「ABC?」

「知らないのね……。まぁ、いいわ。Aがキッス」

「ふむふむ」

「Bは……」

「Bは?」


 Bでアタシは言いよどむ。Bからはちょっと言葉に出しづらい。


「や、やっぱりいいわ……」

「気になるじゃないですかー!」

「し、仕方ないわね……」


 アタシはアリサの耳にBとCをごにょごにょと伝える。するとアリサは顔が真っ赤になり、


「そ、そんなハレンチなことする訳ないじゃないですかー! Aまでですー!」


 と言った。なんだか少しホッとする。まだ健全なお付き合いをしているようだ。


 しかし、このグラマラスな身体を前にミナトはよく手を出さないものだ。同じ屋根の下で過ごしているのに。


 よっぽど紳士なのだろうか? それとも、もしかして──貧乳好き?


 変な考えが頭をよぎったので、ぶんぶんと頭を振る。


「本当に大事にされてるのね、アリサ」

「はい! 修学旅行でしばらくキスできないから寂しいって言ったら、頭なでなでしながら、たくさんキスしてくれました!」

「よ、よかったわね……。その……キスってどんな感じなの?」


 アタシは興味本意で聞いてみる。


「頭がなんだかぽわーとして、とっても幸せな気分になるんです……。病みつきになっちゃいます……」

「へ、へぇ……。ちなみに深い方のキスはしたの?」

「わ、私の方からしちゃいました……」

「あ、アリサから!? い、意外と大胆ね……」

「うう……。キスしてたら好きな気持ちが止まらなくなって。つい……」

「な、なるほど……。ちょ、ちょっとのぼせてきたわ。風呂上がるわ……アタシ」


 脱衣所の鏡を見ると顔が真っ赤だった。風呂にのぼせたのか、それとも──


 


 

 



 




 

 

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