修学旅行 その2
三つの塔からなる、
「高いですね〜!」
「ククッ、見事也」
「31mと国内最大級よ!」
「やけに詳しいな、ユイカ」
「べ、別にガイドブック見て、ワクワクしてた訳じゃないから!」
「(ガイドブック見て、ワクワクしてたんだな……)」
♢
そしてチケット代を払い、ついに本堂へ。
「ここが清水の舞台かぁ〜」
木造建築でできた、本堂からつき出た形の清水の舞台。舞台からは京の街並みを一望できた。
「いい景色ですね〜」
「“清水の舞台から飛び降りるつもりで”ってやつか」
「フハハっ、この程度の高さ造作もないわ!」
「あら、それじゃあ飛び降りて見る? 安心しなさい。死んでも成仏できるらしいわよ?」
「やめておこう。俺は地獄に堕ち、
たかしは土産屋で買った、木刀を構えている。ご丁寧に名前まで付けたようだ。
「かっこいいよな! その木刀」
「ククッ、この
「木刀……ありですね」
アリサは顎に手を当てて、真剣に購入を検討していた。
「あ、アリサさん?」
「もし買ったら、名前は“
「ほう、京の都でその
「な、何を言ってるんだ……?」
俺は助けを求めるようにユイカに振り向く。
「あら、そう? 京都と言えば新撰組。新撰組と言えば沖田総司。沖田総司と言えば愛刀の“菊一文字宗則”でしょう?」
「く、詳しいな……」
「日本人なら常識よ?」
「そ、そうなの……か?」
な、なんかこのグループ、異様にレベル高いんですけど!?
♢
帰りに
裏にある不動明王にお参りを済ませる。
「3つの滝がありますね!」
「右端から“延命長寿”、“恋愛成就”、“学業成就”。どれか一つだけ選んで飲むの」
「一つだけしか選べないんだよな?」
「ええ、過ぎた欲は身を滅ぼすわよ。しっかり、選んで決めなさい」
各々、悩みに悩んで水を選ぶ。
「ククッ、俺は“延命長寿”とゆこうか。この世界を支配するには時間はいくらあっても足りぬでな……」
たかしが
「ククッ、ちゃんと一口で飲み干すのだぞ? 二口だとご利益が半減するそうだ」
「キャラの割には豆な奴だな……。俺は無難に“学業成就”にするよ。来年は受験に向けた年になるからな」
たかしに言われた通り、一口で水を飲み干す。
「アタシも無難に“学業成就”にするわ」
「では、私は“延命長寿”を」
アリサとユイカもコクリと
「なんで延命長寿にしたの?」
俺はなんとなく聞いてみる。
「えへへ、ミナト君と少しでも長く一緒にいられたらなって」
花のような笑顔でそういうアリサに胸がキュンとなる。
「アリサさん……」
俺は抱きしめたくなる衝動をなんとか堪える。お、落ち着け、ここは公の場だ。
「俺も“延命長寿”にしとけばよかったな……」
「お熱いわねぇ……」
「ユイカは恋愛成就にすると思ってた」
「……そうね。そうしようとも思ったけど。しばらくはそういうのいいわ。今はアンタらバカップル眺めてるだけで、お腹いっぱいだもの」
ふふっと、はにかみながら、ユイカはそう言った。
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