告白
文化祭を終え、俺達は帰宅する。
今日の夕食は、文化祭で焼きそばやたこ焼きを食べて、みんなお腹いっぱいなので、なしになった。
「今日は楽しかったですね」
隣のソファに座っているアリサがそう言った。
「うん。コスプレ喫茶、お化け屋敷、演劇、そしてなによりファッションショー。アリサさんのドレス姿、本当に綺麗だったよ」
「あ、ありがとうございます……」
アリサは顔を少し赤らめた。
「ミナト君の声援、嬉しかったです。誰も反応してくれなくて、とっても不安だったんです。でもミナト君が声を上げてくれたから、私にとってはそれだけで、出てよかったと思えました」
「みんな見惚れたんだよ」
「そ、そうですか?」
「そう」
「ミナト君も見惚れて……くれましたか?」
アリサはおずおずと俺の反応をうかがう。
「もちろん。誰よりも釘付けだったと思う」
俺はアリサの頭を優しくなでる。
「えへへ。嬉しい……です」
トンと俺の肩にアリサが頭を乗せてきた。
今日、改めて思った。俺はアリサが大好きなんだと。その全てがたまらなく愛おしいと。
ロミオとジュリエットに感化されたのかもそれない。
俺は俺の気持ちをしっかりと伝えようと思った。
「アリサさん」
「はい?」
「俺と(仮)じゃない、本当の恋人になって欲しい」
「っ!?」
「美味しそうに俺の食事を食べてくれる姿。いつも楽しそうに笑う笑顔。甘えたがりなところ。意外と怖がりなところ。全部が、好きだ」
「…………」
沈黙が場を支配する。ドクンドクンと己の鼓動だけが響く。
「本当に私でいいんですか?」
「もちろん」
「私、家事が苦手で……」
「うん」
「お料理もからきしで……」
「うん」
「ミナト君の迷惑かけると思いますよ?」
「うん。それでいいんだよ。お互い、不得意な分野はあるんだしさ。それをお互い支え合っていくのがパートナーなんじゃないかな?」
「ううっ……。ミナト君///」
「答えを聞かせてもらってもいいかな?」
「はい……」
アリサは顔を近づけると、俺の唇にキスをした。
「っ!?」
「はい、これが私の“答え”です。えへへ、本当の恋人になっちゃいましたね」
「アリサさん……」
「もう2人きりのときは“アリサ”って呼んで欲しい……です。ミナト君」
「あ、アリサ。アリサは俺のことミナトって呼ばないの?」
「私はこの響きが気に入ってるんですよ、ミナト君」
「ふふっ、そっか」
お互い顔を見つめあう。そして、互いに目をつむり、幾度となく、ついばむようなキスをした。
「んっ……ふっ……ちゅ……」
抱きしめ合い、何度も何度も。お互いの愛を確かめ合うように。
♢
「俺達、付き合うことになったんだ」
「はい」
ユイカにこのことを報告する。一番最初に伝えないといけないと思った。友達として。
「ふぅ、時間の問題だとは思ってたわよ。おめでとう、2人とも。末長く、お幸せにね。あと、ミナト。アリサを泣かせたら許さないわよ?」
その眼差しは真剣なものだった。
「ああ、そんなことは絶対させない」
俺は強い決意を秘めた眼差しで見つめ返す。
「そう。それならいいわ。おかわり」
「おっけー」
俺はユイカにおかわりをつぐ。
「それならアタシが、ここに食事に来るのもこれで最後かしらね」
「え? なんでですか? ユイカ」
「なんでって? 邪魔でしょ? どう考えても」
「そんなことないですよね? ミナト君」
「あぁ、ユイカには世話になったし、これからも遠慮なく食事に来て欲しい。アリサも喜ぶし」
「“アリサ”……ね。恋人らしくなってきたじゃない。ふふっ、そうね。お邪魔じゃなければ、これからも来させてもらうおうかしら。ただし、アタシの前でイチャイチャしないでよね!」
「わ、分かってるって」
「TPOはわきまえますよ!」
ふぅ、とユイカが伸びをする。
「それで学園ではどうするの? 付き合ってるってカミングアウトするの?」
「そうですね。カミングアウトしようかなと。勇気を出して、告白してくれる人に悪いですし」
「そうね。まぁ、はっきり言った方が誤解を生まなくていいかもね。ま、しばらくはミナトは大変かもね。ふふっ」
少し意地悪気な瞳でこちらを流し見るユイカ。
アリサと付き合っている事実が広がったら大騒ぎだろうなぁ……。
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