体育祭 その3

 その後も綱引き、騎馬戦、100m走など、数々の種目で、赤組と白組は競い合った。


 中でも選抜リレーでは、アリサが陸上部が混ざっている中でも、快速を飛ばし、チームを勝利に導いた。結果──


『優勝は赤組です!』


 見事、赤組は勝利し、俺たちはクラスで喜びを分かち合った。





「疲れました……」

「疲れたわ……」


 体育祭が終わった後、2人ともシャワーを浴びたのちにウチに来て、ぐったりとしていた。


 2人とも体育祭で、八面六臂はちめんろっぴの活躍を見せたのだ。無理もない。


「よかったら飲んでくれ」


 俺は家の野菜とフルーツを使った、スムージーを提供する。


「ありがとうございます!」

「おっ、気がきくわね! ありがと!」


 2人はごくごくとスムージーを飲み干す。


「ぷはー! 美味しいです!」

「冷えてて、たまらないわ!」

「疲労回復に効果のある“クエン酸”を含んだ、グレープフルーツとレモン搾りを入れてあるんだよ」

「なるほど、ほどよい酸味の正体はそれでしたか!」

「あー確かに、疲れ取れたわー!」


 ユイカは肩を軽快に回す。


「そんなにすぐには効かねーよ……」





「料理、出来たよー。“ささみときゅうりの梅あえ”と“おかかおにぎり”」


「「おー!」」


 2人は目をキラキラと輝かせて、食事を待ち侘びている。


「「「いただきます!」」」


 アリサがパクりと一口。


「ん〜! ささみときゅうりに梅の味がさっぱりとマッチしています!」

「運動後なのに、おかげでおかかおにぎりが進む、進む! 止まらないわ!」

「運動後のタンパク質補給も意識して、料理してみたんだ。たくさん、食べてくれよな」

「はい!」

「任せなさい!」


 2人は夢中で、食事を食べ進める。運動後を意識した食事は、うまくいったようだ。





「皿洗いはアタシがやっとくわ。アリサはミナトのマッサージでもしてあげなさい。体育祭の後で料理もしてくれて、疲れているはずよ」

「はい!」


 という訳で、俺は今、アリサから肩のマッサージを受けている。電気マッサージ器で、肩を全体的にほぐした後、手で指圧されている状態だ。


「んしょ! んしょ! どうですか?」

「うん、とっても効いてる〜」


 確かに今日は疲れていたので、正直ありがたかった。しばらく揉んでもらった後に、「交代しよう」と持ちかけた。


「え? 悪いですよ」

「いいから、いいから」


 俺はアリサの肩をほぐしに入る。


「固っ!」


 岩のようにガッチガチに固まっていた。


「アリサは胸が大きいから、肩が凝るのよ」


 皿洗いを終えた、ユイカがこちらにきた。


「うっ……。はい、年々大きくなるにつれて、酷くなってる気がします……」

「そ、そっか。それは大変だね」

「アタシは全く、肩が凝らないけどね……」


 どんよりとユイカは沈み込む。小柄な体格なユイカは胸も……その……スマートなのだ。


「ユイカがうらやましいです……」

「なんでよ!」

「だって、胸が大きいと肩凝るし、可愛い下着も見つけにくいんですよ……」

「くぅー! 一回でいいから言ってみたいわね!」


 お互い、ないものねだりということだろうか。ところで男子がいる中で、胸の話はやめていただきたい。


「うう……アタシはこのまま成長しないのかしら……。結構、コンプレックスなのよね……小柄だし……」


 本格的に落ち込み出したので、フォローを入れる。


「べ、別に胸だけが女の子の魅力じゃないだろ? ユイカは小柄でも、その分可愛らしさがあると思うぞ?」

「そ、そうかしら?」

「ああ、学園だって男子の人気めちゃくちゃあるのに、気にする必要ないだろ」

「あ、ありがと、ミナト。なんか元気出たわ」


 ユイカの表情が明るくなる。──が


「ミナト君は小柄な女の子の方が好きなんですか?」


 反対にアリサの顔がプクーとむくれていた。げっ!


「べ、別にそういう訳じゃ……」

「なによ、やっぱり胸大きい方がいいんじゃない! ミナト!」

「ええ!?」


 板挟みになり、非常に厳しい状況となる。


「ミナト君は胸大きく方がいい派ですよね!?」

「え!?」


 アリサがずいっと身を乗り出してくる。


「ミナトは小柄で控えめの胸がドストライクなんでしょ!?」

「ええ!?」


 2人に迫られ俺は、プチパニックになり、ポロリと本音がこぼれる。


「お、俺は“尻“派だから……!」


 あっ、言っちゃった……。場が、シンと一瞬静まる。


「ミナト君のえっち……」

「ど、どうしようもないほどのケダモノね!」


 2人の顔が赤くなる。やばい、フォローしとかないと、俺が終わる。


「む、胸の大きさじゃなくて、大事なのは中身だろ? そんなに、2人とも気にすることないよ」

「そ、そうですよね!」

「ま、まぁ、いい事いうじゃない!」


 無難なフォローがなんとか効いたようだ。よかった……。


 巨乳も貧乳もそれぞれに良さがあると思いました。まる。



 

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