体育祭 その2
借り物競走のアナウンスが流れた。俺は借り物競走に出場するために、席を立ち上がる。
「ククッ、骨は拾ってやる。存分に走ってくるがいい」
たかしが俺の肩を叩いて、応援?してくれた。
「サンキュ。行ってくる」
「まぁ、せいぜい頑張んなさいよ」
「ミナト君、ファイトです!」
「うん、行ってくる」
《ミナトー頑張れよー》
《行けるぞーミナトー》
《頑張ってー、如月くん!》
《また唐揚げ作ってくれー!》
クラスの声援を背中で受け止め、俺は中央に向かう。
♢
借り物競走で、俺の出番が回ってきた。軽快なピストル音が鳴り響き、スタートを告げる。
俺は全力で、箱が置いてある位置まで走り、中から紙を引く。
「これは……」
俺はクラスのテントまで走り、ユイカを呼ぶ。
「ちょっと、ユイカさん頼む!」
「え? 私?(え? まさか好きな人……とか? や、やだ、まさか……)」
俺はユイカの手を引き、一位でゴールする。係員が紙の中身を確認する作業に入る。
「ちょ、ちょっと? 中身は何だったのよ?」
「ん? まぁ、待てって」
『一位赤組! お題は“異性の友達”でした!』
俺はふぅと息をつく。これ異性の友達いない人だったら、泣いちゃうぞ……。
「まぁ……そうよね……(好きな人だったら大問題だったわ……)」
「ん?」
「な、なんでもないわよ!」
俺たちは2人でテントに帰るが、途中でアリサが駆け寄ってきた。
「むぅ……」
なんだか、プクーとむくれているみたいだ。
「私じゃなくて、ユイカだったんですね……」
「(ちょっと! なんとかフォローしなさいよ!)」
ユイカが俺を
「俺はさ……アリサさんとは“友達以上”……だと思ってるから……」
「うっ/// そ、そうですか……。えへへ」
アリサは頬を染めて、照れている。ちょっと、嫉妬してくれるアリサも可愛いなと思った。
「ノロケは家でやりなさい……」
「の、ノロケてない!」
「そ、そうですよ!」
♢
「え? お母様とコハルちゃんも来てるんですか?」
「うん、コハルは創立記念日で丁度、休みだってさ」
「会いに行きましょう!」
俺はアリサと共に保護者席へと向かう。昼休憩中で、生徒と保護者が入り乱れている。
「あらあら、お久しぶりね」
「アリサお姉ちゃん! と、おまけのお兄ちゃん」
母とコハルが応援に来ていた。
「おまけは余計だよ。久しぶり、母さん、コハル」
「お久しぶりです。お母様、コハルちゃん」
「見てたわよー! 2人とも頑張ってたわねー!」
「お兄ちゃんが借り物競走で、別の女の子連れてきた時はヒヤヒヤしたよー! アリサお姉ちゃん、ブチギレるんじゃないかって!」
「そ、そんなことはないですよねー! ミナト君!」
「う、うん」
なぜかアリサの声に圧を感じた。
「ミナトちゃん、浮気はダメよ?」
いつになく、真剣な表情をする母。
「そうだぞ! お兄ちゃん!」
「そうですよ! ミナト君!」
「なんでアリサさんまで、乗っかってんの!?」
「えへへ、つい」
「ミナトちゃんが浮気をしたら、いつでも連絡してね、アリサちゃん。お母さん、吹っ飛んでいくから!」
「アタシもね!」
「ありがとうございます。頼もしいです、お母様! コハルちゃん!」
「勘弁してくれよ……」
息ぴったしの仲の良い女性陣だった。
♢
二人三脚ではアリサとユイカがコンビを組む。
「行くわよ、アリサ!」
「はい!」
2人がスタートの位置についた瞬間、大歓声が巻き起こった。
無理もない。学園でもトップクラスの可愛さを誇る2人だ。
《ユイアリファンクラブのみんなー! 声上げろー!》
《応!》
《きゃー! かわいいー!》
《たまんねぇなぁ!》
競技が開始し、他のペアがもたつくなか、2人は息ぴったしで、華麗に走り出す。
まるで元は1つだったかのような、コンビネーションに、ギャラリーは息を呑む。
そして圧巻のゴール。2人は抱き合って、喜びを噛み締めている。
本当に仲がいいんだな。あの2人。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます