体育祭 その2

 借り物競走のアナウンスが流れた。俺は借り物競走に出場するために、席を立ち上がる。


「ククッ、骨は拾ってやる。存分に走ってくるがいい」


 たかしが俺の肩を叩いて、応援?してくれた。


「サンキュ。行ってくる」

「まぁ、せいぜい頑張んなさいよ」

「ミナト君、ファイトです!」

「うん、行ってくる」


《ミナトー頑張れよー》

《行けるぞーミナトー》

《頑張ってー、如月くん!》

《また唐揚げ作ってくれー!》


 クラスの声援を背中で受け止め、俺は中央に向かう。





 借り物競走で、俺の出番が回ってきた。軽快なピストル音が鳴り響き、スタートを告げる。


 俺は全力で、箱が置いてある位置まで走り、中から紙を引く。


「これは……」


 俺はクラスのテントまで走り、ユイカを呼ぶ。


「ちょっと、ユイカさん頼む!」

「え? 私?(え? まさか好きな人……とか? や、やだ、まさか……)」


 俺はユイカの手を引き、一位でゴールする。係員が紙の中身を確認する作業に入る。


「ちょ、ちょっと? 中身は何だったのよ?」

「ん? まぁ、待てって」


『一位赤組! お題は“異性の友達”でした!』


 俺はふぅと息をつく。これ異性の友達いない人だったら、泣いちゃうぞ……。


「まぁ……そうよね……(好きな人だったら大問題だったわ……)」

「ん?」

「な、なんでもないわよ!」


 俺たちは2人でテントに帰るが、途中でアリサが駆け寄ってきた。


「むぅ……」


 なんだか、プクーとむくれているみたいだ。


「私じゃなくて、ユイカだったんですね……」

「(ちょっと! なんとかフォローしなさいよ!)」


 ユイカが俺をひじでつついてくる。わ、分かってるって……。


「俺はさ……アリサさんとは“友達以上”……だと思ってるから……」

「うっ/// そ、そうですか……。えへへ」


 アリサは頬を染めて、照れている。ちょっと、嫉妬してくれるアリサも可愛いなと思った。


「ノロケは家でやりなさい……」

「の、ノロケてない!」

「そ、そうですよ!」





「え? お母様とコハルちゃんも来てるんですか?」

「うん、コハルは創立記念日で丁度、休みだってさ」

「会いに行きましょう!」


 俺はアリサと共に保護者席へと向かう。昼休憩中で、生徒と保護者が入り乱れている。


「あらあら、お久しぶりね」

「アリサお姉ちゃん! と、おまけのお兄ちゃん」


 母とコハルが応援に来ていた。


「おまけは余計だよ。久しぶり、母さん、コハル」

「お久しぶりです。お母様、コハルちゃん」

「見てたわよー! 2人とも頑張ってたわねー!」

「お兄ちゃんが借り物競走で、別の女の子連れてきた時はヒヤヒヤしたよー! アリサお姉ちゃん、ブチギレるんじゃないかって!」

「そ、そんなことはないですよねー! ミナト君!」

「う、うん」


 なぜかアリサの声に圧を感じた。


「ミナトちゃん、浮気はダメよ?」


 いつになく、真剣な表情をする母。


「そうだぞ! お兄ちゃん!」

「そうですよ! ミナト君!」

「なんでアリサさんまで、乗っかってんの!?」

「えへへ、つい」

「ミナトちゃんが浮気をしたら、いつでも連絡してね、アリサちゃん。お母さん、吹っ飛んでいくから!」

「アタシもね!」

「ありがとうございます。頼もしいです、お母様! コハルちゃん!」

「勘弁してくれよ……」


 息ぴったしの仲の良い女性陣だった。

 




 二人三脚ではアリサとユイカがコンビを組む。


「行くわよ、アリサ!」

「はい!」


 2人がスタートの位置についた瞬間、大歓声が巻き起こった。


 無理もない。学園でもトップクラスの可愛さを誇る2人だ。


《ユイアリファンクラブのみんなー! 声上げろー!》

《応!》

《きゃー! かわいいー!》

《たまんねぇなぁ!》


 競技が開始し、他のペアがもたつくなか、2人は息ぴったしで、華麗に走り出す。


 まるで元は1つだったかのような、コンビネーションに、ギャラリーは息を呑む。


 そして圧巻のゴール。2人は抱き合って、喜びを噛み締めている。


 本当に仲がいいんだな。あの2人。






 



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