調理実習
「という訳で次回は調理実習だ。カレーを作ってもらう。3人1組で行い、組み分けは、こっちで決めておいたから、後で確認しておいてくれ」
家庭科の先生の発言にクラスのみんながざわつく。
《っしゃあ! カレーだぜ!》
《うわぁ。俺、料理なんてカップ麺くらいしかできねーべ?》
《どれどれ、組み分けは……っと》
《くっ……これも因果律の定めか……》
クラスの反応は様々である。俺も張り出された組み分け表を確認してみる。
2班 如月湊 早乙女アリサ 救世ユイカ
「アリサさん、ユイカ、今度の調理実習、一緒だよ。よろしくね」
「「…………」」
2人とも真っ青な顔をして、固まっていた。いや、アリサは分かる。料理苦手だから。もしかして、ユイカお前もか?
「ユイカは料理苦手なのか?」
「は、はぁ!? この私が料理が苦手な訳ないじゃない!」
嫌に取り乱しているな。怪しい。
「本当か?」
「あ、当たり前じゃない!」
♢
とある夕食前のこと。アリサとユイカは俺の部屋で、まったりしていた。
「今日は、今度の調理実習に向けて、みんなでカレーを作る練習をしようと思うんだ」
「なるほど! 確かにその方が良さそうですね!」
「ふ、ふーん。まぁ、アリサの練習にもなるし、いいんじゃない? 私は寝てるわ! ぐぅーzzz」
「ユイカもな?」
「ユイカもやりましょう!」
「ぐっ……仕方ないわねぇ!」
♢
結果は散々だった。包丁の握り方、野菜の剥き方、どれもめちゃくちゃだ。
「ユイカ……?」
「ううっ、アタシも料理下手なのよ……。見栄張ってごめんなさい……」
ユイカはしょんぼりと肩を落とす。
「ユイカ、私と料理下手同盟を組みましょう!」
「嫌な同盟ね……」
ユイカも俺の家で食事をとる機会が多い理由がわかった気がする。
「言いにくかったよな……。でも素直に言ってくれるありがとう。ユイカ。これで調理実習に向けて、対策を打てるよ」
「う、うん……」
「丁寧にゆっくり教えるから、頑張ろうな」
「そうね……。アタシやってみるわ」
「私も頑張りますから!」
「アンタはほどほどにね? 家が壊れるわよ?」
アリサの家事の下手さは次元が違うのだ。
♢
「ピーラーでニンジンを剥いたら、次は包丁で切るよ。左手を猫の手のようにして、ゆっくり切ってね」
「こ、こうかしら?」
「ん〜もうちょっと曲げてみて」
俺はユイカの左手に触り、指を曲げさせる。
「ッ〜!(し、自然に手を触ってくるのわね。アリサで慣れてるのかしら……)」
「そうそう、いい感じだよ」
俺はにっこりと優しく微笑む。
「あ、ありがと……(う〜、笑顔が眩しい……)」
「私は何を手伝いましょうか?」
「アリサさんは、ジャガイモを洗ってくれるかな?(アリサさんは、包丁持たせると指切っちゃいそうだからな……)」
「分かりました! お任せ下さい!」
♢
「うん、美味しいです〜! まろやかなコクと程よい辛さが口いっぱいに広がります〜! じっくりと煮込まれたお野菜とお肉が、またたまりませんね!」
満面の笑みでアリサが
ユイカ作のカレーが完成した。
「ほ、ほとんどミナトに手伝ってもらったものだけど……」
「俺はアドバイスしただけ。作ったのはユイカだよ」
「あ、ありがと……。あっ、美味しい……」
「だろ? 自信持っていいよ。ユイカ」
「うん!」
ユイカの顔は作る前と比べて、イキイキとしていた。この感じで、うまく分担すれば、調理実習もなんとかなりそうだ。
♢
調理実習は大成功だった。先生の味見も高評価で、自分たちで食べても文句なしの出来だ。
《ユイカの班のカレー、すごく美味しそうね!》
《うんうん、すごくいい匂いだわ!》
《ちょっと、味見させてくれよ》
ざわざわとギャラリーが集まってくる。
「はいはい、みんな席に戻って、自分たちの🍛食べなさーい!」
先生の掛け声で、みなゾロゾロと席に着く。
「うまくできたな!」
「完璧ですね!」
「うん! どんなもんよ!」
ユイカは満足そうに、素敵な満面の笑みを浮かべていた。
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