少女漫画を読んだ日に
《アリサ視点》
私は少女漫画を読んだことがなかった。ただ漫画自体はよく読む方である。
母国で日本のことを勉強をする際に、言語や文化面など、大変参考にしたものだ。
七つの玉を集める
どれもこれも私の
「アリサ、アンタ“どすこい花太郎”って知ってる?」
ユイカが唐突に話を振ってきた。
「どすこい花太郎? 力士の方ですか?」
「違う、違う。最近、ドラマ化して、話題にもなってる少女漫画」
「へぇ〜。面白いんですか?」
「面白いなんてもんじゃないわよ! 主人公がこれまたかっこいいの!」
ユイカはジェスチャーを交え、力説する。
「なるほど。世の女性を
「でしょ? 今度、漫画貸してあげるから、読んで見なさいよ。10代の乙女なら必修科目よ!」
「ありがとうございます! 暇な時に、読んでみますね」
♢
自宅に帰って、一息をつく。ミナト君との夕食まではまだ少し時間もある。
そうだ。この前貸してもらった少女漫画を読んでみよう。
私の好みは特定の少年誌に偏っている為、少女漫画を読むのは初めてで、新鮮だった。
「ふむふむ」
まず思ったのは、少年漫画とは明らかに違う絵のタッチ。
バトル漫画の迫力のある荒々しい線とは違い、線の細い繊細で綺麗な絵だった。
「なるほど。少年漫画に比べると、心理描写も多く、人間関係に重きを置いているようです」
ペラペラとページをめくる。
「ふむ? 一向に、鬼や死神のような異形が出てきませんね。いずれは、ヒロインを巡って、能力者バトルトーナメントが開催されるですかね?」
──当時の私の漫画の知識は、かなり偏っていたのだった。
♢
『おいどん、アンタに惚れちまったよ』
『おいどんさん……』
『ちゃんこ鍋とアンタ、どっちも食っちまうぜ?』
『おいどんさん……。せめて、白米も一緒に……らめぇ!』
『おいどん、もう我慢できねぇ!』
『うふ、決まり手は“押し倒し”……ね?』
「ほえ〜……。す、すごいです……」
少年漫画とは違い、恋愛描写が“過激”である。私は興味津々で少女漫画を読み進めた。
ヒロインが、力士を目指している少年に、押し倒されてしまった時はドキドキした。
「ううっ、これはちょっと……///」
その後、ヒロインが重さに耐えかねて「グエー」とカエルのような鳴き声を出したところには、涙を禁じ得なかった。
「かわいそうに……。重かったでしょうに……ぐすっ」
『すまんでごわす!』
『この重さ、癖になりそう……』
「えええ!? これに興奮しちゃうんですか!?」
理解が追いつかなかった。でも世の中ではこの話が支持されているらしい。つまり共感されているということだ。
もしいつか、ミナト君に押し倒されたら「グエー」ってカエルの声を出す練習をしようかな? その時はミナト君、喜んでくれるかな?
『ごわすさん……。お尻を叩いて下さる?』
『はっけようい……のこったァ!』
『ああああああああああ! たまらないわぁ!』
「ど、どういうことですか!? お尻を叩かれると世の男性、女性は興奮するのですか!?」
試しに自分のお尻を軽くペチンと叩いてみる。
「ヒリヒリします……」
後でミナト君に、お尻を叩くと興奮しますか?と聞いてみようかな?
スマホの通知音が鳴る。あっ、ミナト君だ。
「今日のご飯も楽しみです♪」
私は合鍵を持って、ウキウキでスキップでミナト君の部屋に向かう。
♢
「ミナト君って、私のお尻を叩くと興奮しますか?」
「ーーーッ!?!?」
ミナト君は固まった。
「ごめん、なんか聞き間違えたかも……。もっかい、言って?」
「ミナト君って、私のお尻を叩くと興奮しますか?」
「聞き間違えじゃなーい! いきなりどうしたの!? アリサさん!?」
「え? でもこれが普通なんじゃ?」
「ごめん、ちょっと頭が追いつかない……。休憩させて?」
うーんとうなり、ミナト君はソファに横になった。
スマホの通知音が鳴る。ユイカからだった。
『ごめん! 似てたから間違えて“夜の大相撲〜秋場所〜”っていう、アダルトな漫画を間違えて貸しちゃった! 読んでもいいけどエロいよ?』
「え? つまり?」
私はえっちい漫画が人気の漫画だと信じ、プレイもこれが普通だと思ってしまったってこと!?
「み、ミナト君、ごめんなさーい! 勘違いです! 私、
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