嫉妬
近所のユイカの家まで送って行く途中、ユイカが「気がついた?」と言ってきた。
「アリサさんのことだろ? 少し元気がなかった」
「ん。分かってるならいいわ。理由は分かってる?」
俺は頭を振る。
「鈍感ねぇ……。まぁ、いいわ。帰ったらアリサとゆっくり話しなさい。恋人(仮)でしょ?」
「ああ、分かった。ありがとう、ユイカ」
「ええ、見送りありがとう。じゃあ、また明日ね」
♢
帰宅するとアリサはソファでぼんやりと座っていた。
「ただいま」
「……あっ、おかえりなさい」
やはりどこか変だ。いつもと違って顔に生気がない。
俺はソファの横に座り、アリサに話しかける。
「アリサさん、どうかした?」
「……やっぱりばれてましたか」
「うん、元気がなかったから。嫌でなかったら、理由を話して欲しい。俺でよかったら、力になりたい」
「うう……言うのが恥ずかしいです……」
アリサの顔がほんのりと赤くなる。
「アリサさんが心配なんだよ」
「うううっ……“嫉妬”……です」
「嫉妬?」
「他の女の子にモテててる聞いて、モヤモヤしちゃったんです! うっ……言っちゃいました……。恥ずかしい……」
アリサは手で顔を
「なんだ、そんなことか。よかった……」
俺は胸を撫で下ろす。もっと深刻な事態を想定していたから。
「ううっ……結構、悩んだんですよ? 私、嫉妬深いのかなぁなんて……」
「それだけ俺のこと気にかけてくれてるってことだから、俺は……嬉しいよ」
「あ、ありがとうございます………」
お互い顔がカァーと赤く染まる。
「てかさ、前にコハルに何か教えられてなかっっけ? NTR《寝取られ》の極意だかなんだか」
「あっ、あれは忘れて下さい!(少しだけ興奮したのは内緒にしときましょう……)」
「う、うん」
「そ、それじゃあ……」
アリサは急に俺に抱きついた。
「ちょっ!?」
「嫉妬がかき消えちゃうくらい、今日はミナトに甘えちゃってもいい……ですか?」
う、上目遣いでおねだりする、アリサさん可愛い……。
「う、うん。分かった。今日は存分にアリサさんを甘やかすよ。アリサさんの不安がなくなるくらい」
「えへへ。わーい! ひざ枕して、そのままなでなでしてください!」
「わ、わかった!」
アリサの頭を膝の上にのせ、そのまま頭をなでる。アリサの目線はじっとこちらを見たままだ。
「じっー」
「っ!」
恥ずかしくて、つい目を逸らす。
「あっ、顔そらさないでください! ずっとミナト君の顔見ながら、撫で撫でされたいんです!」
「う、うん……」
ペットをあやすかのように、アリサをひたすらなでる。
しばらくすると「交代です」と言ってアリサが自分の膝をポンポンと叩く。
「は、恥ずかしいよ……」
「遠慮せずに〜!」
半ば強引に頭を膝に乗せられる。ポフっとした柔らかい太ももにドキリとする。
「なでなでしますね〜」
「は、恥ずかしい……」
「恥ずかしがるミナト君可愛いです……」
「やめてください……」
「あっ、こっちの顔ずっと見ててくださいね?」
「な、なんで?」
「えへへ。ミナト君の目には、もう私しか映らないようにしちゃいます。なーんて……」
ジョークを飛ばすアリサさんに俺は、
「それならもう、俺にはアリサさんしか映ってないから大丈夫だよ? とっくの昔にね」
なんて冗談で返してみる。
「〜〜〜っ!///」
アリサの顔が真っ赤に染まる。
「何て恥ずかしいことを真顔で言うんですか! ミナト君!」
「アリサさんにだけは、言われたくないんだけど!?」
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