映画を観にいこう
「今日はカレーね! でかしたわ!」
「ユイカ、普通にウチに馴染んでるね……」
ユイカはあれ以来、ちょくちょくウチに来るようになった。
「アリサにも会えるし、美味しい食事は取れるしで一石二鳥よね〜。食費は払ってるんだから、文句はないでしょ?」
「まぁ、文句はないよ。アリサさんも楽しそうにしてるし」
「はい、ユイカがいると賑やかですよね!」
「ねー!」
2人は顔を合わせる。本当に2人は仲がいいんだな。俺としては食費を払ってくれるなら、問題ない。食器洗いも手伝ってくれるそうだし。
「…………」
食事をとりながら、改めてこの状況を振り返る。目の前には、クラスのNo1美少女とNo2美少女が俺の部屋にいる。
アリサは言うまでもなく、ユイカも負けず劣らずの可愛いさでクラスの男子から、人気を得ている。
「(クラスの男子に知られたら、
「ん〜、このカレー甘口で美味しいわ〜!」
「はい、お野菜もホックホクです♪」
♢
「映画を観に行きませんか?」
食事をとったユイカが帰った後、アリサは突然そんなことを言い出した。
「ユイカが話題の恋愛映画がやってるから、観てみたら?って、おすすめされたんです。なので、よかったらどうですか?」
「そうだったんだ。うん、夏休み最後の思い出に映画もいいかもしれないね」
「はい!」
♢
「お待たせしました」
「……」
おめかしをして、ワンピースを着ているアリサを見た瞬間、俺は目を奪われてしまった。
「ミナト君?」
「あ、ああその服似合ってるね」
「ふふっ、頑張って選んだかいがありました。ありがとうございます」
そう言って、アリサは華やかに微笑んだ。
「さて、それじゃあ行こうか」
「はい」
並んで歩いていると、アリサはそっと腕を組んできた。
「あ、アリサさん?」
「恋人(仮)だから、このくらいは……いいですよね?」
上目遣いで照れながら、俺を見つめるアリサ。そんなの返事は一つしかなかった。
俺たちは手を組んで、映画館を目指すのであった。
♢
2人で映画を観終わり、自宅へと帰宅する。
「…………」
「…………」
その間は2人とも顔を真っ赤にして終始無言だった。理由は明白。Rー15ということもあって、恋愛映画の内容がかなり“過激”だったのだ。
序盤こそ、ほのぼのとした恋愛だったが、終盤は
俺たちは部屋に戻り、ソファで一息。
「ちょっ、ちょっと過激だったね……」
「はい、私達には少し刺激が強すぎたかもしれません……。でも最後は素敵でしたね?」
アリサが身体を俺に傾ける。鼓動が高鳴る。
「うん……。そうだね……」
「はい……」
2人の手が重なり合う。温もりを感じる。
「最後のキスシーン……」
「素敵だったね……」
お互い顔が向き合う。目と目が合う。
「キスって……どうなんでしょう?」
「さぁ……どうなんだろう?」
お互いの顔が近づく。澄んだ瞳に俺が映っている。
「ミナト君……」
「アリサさん……」
互いに目を閉じる。互いの唇が──
「ピンポーン!」
「ピンポーン?」
『宅配便でーす!』
俺たちはバッと離れる。そうだ、アマゾーンで商品を注文していたんだった。
「はーい!」
俺は玄関のドアを開けて、荷物を受け取る。
「たっ、宅急便ですか」
「そ、そうそう!」
「な、なるほど!」
「う、うん」
お互いぎこちない態度になり、距離が離れる。
ふぅ……。と肩の力が抜ける。ちょっと恋愛映画パワーで頭がピンク色になっていたようだ。これでよかったの……かな?
「(ううっ……恋人(仮)なのに、映画の雰囲気に流されてキスしてしまうところでした……。恋愛映画を危険ですね……)」
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