映画を観にいこう

「今日はカレーね! でかしたわ!」

「ユイカ、普通にウチに馴染んでるね……」


 ユイカはあれ以来、ちょくちょくウチに来るようになった。


「アリサにも会えるし、美味しい食事は取れるしで一石二鳥よね〜。食費は払ってるんだから、文句はないでしょ?」

「まぁ、文句はないよ。アリサさんも楽しそうにしてるし」

「はい、ユイカがいると賑やかですよね!」

「ねー!」


 2人は顔を合わせる。本当に2人は仲がいいんだな。俺としては食費を払ってくれるなら、問題ない。食器洗いも手伝ってくれるそうだし。


「…………」


 食事をとりながら、改めてこの状況を振り返る。目の前には、クラスのNo1美少女とNo2美少女が俺の部屋にいる。


 アリサは言うまでもなく、ユイカも負けず劣らずの可愛いさでクラスの男子から、人気を得ている。


「(クラスの男子に知られたら、嫉妬しっとの炎で焼かれてしまいそうだな……)」


「ん〜、このカレー甘口で美味しいわ〜!」

「はい、お野菜もホックホクです♪」





「映画を観に行きませんか?」


 食事をとったユイカが帰った後、アリサは突然そんなことを言い出した。


「ユイカが話題の恋愛映画がやってるから、観てみたら?って、おすすめされたんです。なので、よかったらどうですか?」

「そうだったんだ。うん、夏休み最後の思い出に映画もいいかもしれないね」

「はい!」





「お待たせしました」

「……」


 おめかしをして、ワンピースを着ているアリサを見た瞬間、俺は目を奪われてしまった。


「ミナト君?」

「あ、ああその服似合ってるね」

「ふふっ、頑張って選んだかいがありました。ありがとうございます」


 そう言って、アリサは華やかに微笑んだ。


「さて、それじゃあ行こうか」

「はい」


 並んで歩いていると、アリサはそっと腕を組んできた。


「あ、アリサさん?」

「恋人(仮)だから、このくらいは……いいですよね?」


 上目遣いで照れながら、俺を見つめるアリサ。そんなの返事は一つしかなかった。


 俺たちは手を組んで、映画館を目指すのであった。





 2人で映画を観終わり、自宅へと帰宅する。


「…………」

「…………」


 その間は2人とも顔を真っ赤にして終始無言だった。理由は明白。Rー15ということもあって、恋愛映画の内容がかなり“過激”だったのだ。


 序盤こそ、ほのぼのとした恋愛だったが、終盤は怒涛どとうの激しい展開。まぁ、ベッドシーンもありました。はい。


 俺たちは部屋に戻り、ソファで一息。


「ちょっ、ちょっと過激だったね……」

「はい、私達には少し刺激が強すぎたかもしれません……。でも最後は素敵でしたね?」


 アリサが身体を俺に傾ける。鼓動が高鳴る。


「うん……。そうだね……」

「はい……」


 2人の手が重なり合う。温もりを感じる。


「最後のキスシーン……」

「素敵だったね……」


 お互い顔が向き合う。目と目が合う。


「キスって……どうなんでしょう?」

「さぁ……どうなんだろう?」


 お互いの顔が近づく。澄んだ瞳に俺が映っている。


「ミナト君……」

「アリサさん……」


 互いに目を閉じる。互いの唇が──


「ピンポーン!」

「ピンポーン?」


『宅配便でーす!』


 俺たちはバッと離れる。そうだ、アマゾーンで商品を注文していたんだった。


「はーい!」


 俺は玄関のドアを開けて、荷物を受け取る。


「たっ、宅急便ですか」

「そ、そうそう!」

「な、なるほど!」

「う、うん」


 お互いぎこちない態度になり、距離が離れる。


 ふぅ……。と肩の力が抜ける。ちょっと恋愛映画パワーで頭がピンク色になっていたようだ。これでよかったの……かな?


「(ううっ……恋人(仮)なのに、映画の雰囲気に流されてキスしてしまうところでした……。恋愛映画を危険ですね……)」




 



 


 



 


 

 

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