救世ユイカ登場 その3
食卓に揚げたての唐揚げが並んだ。
「美味しそうです!」
「見た目は合格ね……」
「それじゃあ」
「「「頂きます」」」
ユイカは唐揚げをパクりと一口。そのままモムモムとしっかり
「どう……かな?」
「どうですかー? ユイカ」
俺は恐る恐るユイカの顔色を
「…………まい」
「まい?」
「めちゃくちゃ美味いじゃないのよぉ! これぇ!」
ユイカはたちどころに目を輝かせる。よかった。どうやら合格かな?
「サクサクっとした衣を噛むと、中からジューシーなもも肉から肉汁が溢れ出すわ! 食欲をそそるスパイシーな味付けも相まって、白いご飯が止まらないわ!」
ユイカの箸が進み、みるみる唐揚げとご飯が減っていく。
「唐揚げ用特製マヨネーズも試してみて欲しい」
俺がそういうと、皿の端にちょんと置いておるマヨネーズに唐揚げをディップし、パクりと一口。
「っ! なるほど……スパイシー一辺倒にならないようにマヨネーズでクリーミーさを……。ただこれはダメよ……。油ものに油の塊のマヨネーズなんて……。あぁ、なんて罪深いの……。ああ、でも脳がこの唐揚げを求めるの……。止まらないのぉ……。しゅきぃ、これしゅきぃ……。ミナト、おかわりぃ……」
「あいよ」
大変満足してくれたようで、こちらも嬉しい。クラスの男子に試食を手伝ってもらって、改良に改良を重ねた自信作だ。
「ね! ミナト君の料理、美味しいでしょ!」
アリサがパクパクと唐揚げを平らげながら、ユイカに声をかけた。
「うますぎるぅ……。脳がとろけりゅう……」
「ん〜、レモンをかけた唐揚げもたまりませんね〜!」
「まだまだあるから、たくさん食べてくれよ!」
「止まらないのぉ……」
「はい!」
♢
「美味しかったわ。これならアリサを任せておけるわ。ていうか唐揚げに変なもん混ぜてないでしょうね!? 中毒性半端ないんですけど!?」
「混ぜてねーよ……」
皿洗いを手伝ってくれたユイカは、帰宅の準備を始める。
「もう暗いし、送ってくよ」
「悪いわよ」
「気にすんなよ。俺も腹ごなしに散歩したかったし」
「ユイカ、帰るんですか? 気をつけて帰って下さいね……。けっぷ。私も送っていきたいんですが、食べすぎました。けっぷ」
「アリサさんは留守番お願いね」
「はい! けっぷ」
♢
俺達は暗い夜道を歩いていく。物静かで、カツカツと俺たちの足跡だけが
「まったく、女の子への気遣いはアリサだけにしときなさいよ?」
「アリサの友人になにかあったら、俺も困る。それにクラスメイトだしな。気にすんなよ」
「ふーん、優しいのね(さりげなく車道側歩いてくれてるわね……)」
ふとユイカが立ち止まった。
「ユイカさん?」
「ユイカでいいわよ。私も呼び捨てだし」
「立ち止まってどうしたんだ? ユイカ」
「アンタに聞いておかなきゃならないことを忘れてたわ」
「なに?」
「アンタは本当に“アリサが好き”なの?」
それは有無を言わさぬ迫力を秘めた眼差しだった。俺はその眼差しに真っ向から向かい合う。
「ああ、好きだよ」
「ならそれを伝えないの?」
「…………怖いんだ」
「…………」
「今の関係が心地よくてさ。俺が告白したら、それまでの関係が壊れてしまうんじゃないかって。どうしようもなく怖い。臆病者だって分かってる。でもその一歩がどうしても踏み出せないんだ……」
「まぁ、普段からアリサは男を振りまくってるから、気持ちは分かるわ。自分なんかが付き合える訳ないって、心のどこかで思ってるんでしょ?」
「ああ……」
「…………」
少しの間、場を沈黙が支配する。するとユイカはふぅと息を吐いた。
「(ここは、アタシが背中を押してあげますかね……)」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます