母親登場 その2
「あなたたちを見てると昔を思い出すわぁ。私がパンを
頬に手を当て、うっとりと語る母。
「嫌な馴れ初め……」
「あの時は死ぬほどの衝撃を受けたわ……」
「物理的にじゃない……?」
ふむふむとアリサが母の言葉を聞き入っている。
「素敵な出会いですねー!」
「どこが!?」
「あらあら、ありがとう。アリサちゃん」
「小さい頃のミナト君の話とかも聞きたいです!」
「あの子の小さい時はねー! それはもう可愛かったんだからー!」
キャッキャッと話し合う2人。どうやら意気投合したようだ。よかった……のかな?
♢
「でもよかったわ。ミナトちゃんにもこんな可愛い彼女ができて」
母は、改めて俺たちを見ながらそう言った。
「だから違うんだって!」
「そ、そうですよ!」
俺たちは慌てて反論する。
「あらあら、それじゃあ付き合ってもいないのに、部屋で一緒に料理を食べたりする仲ってコト? 年頃だし、何か間違いがあったらいけないから、アリサさんの親御さんにも、ご連絡差し上げたほうがいいかしら?」
「!? (それは非常にまずいです!)」
アリサは俺と腕を組む。
「!?」
「(合わせ下さい! お願いします!)」
し、仕方ない……。
「やだなー、母さん! 冗談だよー! 俺はアリサさんはラブラブカップル……だよー! ちょっと照れ臭くてさー!」
「そうですよー! 私達はラブラブカップル……です!」
「あらあら、それなら何の問題もないじゃない。私の
俺たちは、ほっと胸を撫で下ろす。
「んー? でもなんか距離感が遠いような? なんかお互い遠慮がちって言うか?」
母は顎に人差し指を当て、うーんと
「!?(まずいです!)」
アリサは俺に抱きついてきた。
「!?(いきなり何するの、アリサさん!?」
「(ミナト君、合わせて下さい!)」
「(わ、分かった!)」
俺もアリサをとっさに抱きしめる。アリサの柔らかい肌の感触が伝わり、胸がドキンと跳ね上がる。
「あらあら、お熱いのねー! これは間違いなくカップルだわぁ!」
母がキャッキャッと喜んでいる。
「だ、だろ?」
「ミナト君……大好きです! ちゅちゅ♡」
アリサは俺の頬に軽くキスをする。
「!? お、俺も愛してるよ、アリサさん!(演技とは言えやり過ぎなのでは!?)」
「うんうん、若いカップルはこうじゃないとね!」
母は満足げに頷いた。よかった……なんとか
♢
「それじゃあ、私は帰るわねー」
納得したのか母は、玄関から帰ろうとしていた。
「気をつけてな、母さん」
「きょ、今日はありがとうございました」
くるりと母が振り返る。
「お盆には実家に顔出すのよ?」
「……考えとくよ」
「あと……」
母は俺に耳打ちをする。
「避妊はちゃんとするのよ?」
「するかぁ!」
「しないの!?」
「そういう意味じゃなくて……。まぁ、いいや、早く帰って……」
俺はげっそりし、しっしっと手を振る。
「はいはい、またね、アリサちゃん」
「はい!」
母は去っていった。まるで嵐が過ぎ去ったよで、クタクタになる。
「そう言えば、最後になんて言われたんです?」
「っ!?」
俺は母に最後に言われたことを思い出して、顔が赤くなる。
「ひ、秘密!」
「え〜! 教えて下さいよ〜!」
「い、言えない! 後、演技とは言えキスはやり過ぎなのでは!?」
「い、嫌……でしたか?」
「いや、嫌じゃないけど……」
「そう……ですか?」
「う、うん……」
お互いに頬が赤くなる。
なんだか気まずいような甘いような雰囲気が流れたのだった。
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