ウィスキーボンボンの悲劇 その1
チュンチュンとスズメが鳴き、朝の到来を告げる。羊数えが功を奏したのか、どうやら眠ることはできたようだ。
「…………」
隣にはピンク色のパジャマを着た、可愛らしい少女が横たわっている。
この状況を世間では“朝チュン”と呼ぶらしい。あいにく、そういう色っぽい事はしていない。そう、決して。
「すやーすやーzzz」
可愛らしい寝息を立てて、熟睡しているアリサだったが、もう朝の7時だ。もう少し彼女の寝顔を見ていたい欲に駆られるが、意を決してカーテンを全開にする。
「ううーん?」
昨日の雷雨が嘘のような、爽やかな朝の光が窓から差し込む。目覚めの到来を告げる光に、アリサが目を覚ましたようだ。
「おはよう、アリサさん」
「おはようございます……。ミナト君。ってアレ?」
いつもの寝室との違和感に気がついたのか、はて?と首を傾げる。
そして状況が飲み込めたのか、顔から火が出るような真っ赤な顔になった。
「き、きききき昨日は申し訳ありませんでした! たたたたたた大変ご迷惑をお掛けしました!」
「気にしないでいいよ、アリサさん。それより朝食にしよう。自分の部屋で着替えて来たらどうかな?」
「は、はい! ありがとうございます!」
トテテテと自分の部屋へと向かって行くアリサ。そんな状況に俺はひとりごちる。
「もう少しだけ、夜が長かったらよかったのにな……」
♢
昼食後、アリサが小箱を取り出した。
「アリサさん、これは?」
「は、はい……昨日のお詫び……です。ウィスキーボンボンです」
ウィスキーボンボンとは、チョコレートの中にお酒が入ったお菓子である。ちなみにこの場合は、未成年が食べても法的には問題ない。
「ありがとう、アリサさん。ちょうど、甘いものが食べたかったんだ」
「お酒が入ってますけど、大丈夫ですか?」
「うん、昔食べたことあるよ。アリサさんも一緒に食べよう」
「はい!では、今から開けてもよろしいでしょうか?」
「うん、お願いするね」
アリサは箱からチョコレートを取り出し、包装紙を
「はい、あ〜ん……です」
照れているのかアリサの頬は、朱色に染まっている。
「ちょっ! それは恥ずかしいよ、アリサさん!」
「き、昨日のお詫びですので!」
アリサに押し切られる形で、俺はあ〜んと口を開ける。こんなの他の人に見られたら、余裕で死ねるぞ……。
パクリ。もぐもぐ。
ウィスキーボンボンを噛み砕くと、ジュワッと中から
カカオの上品な甘さと、アルコールの風味が口の中でとろけ合い、混ざり合う。まるで夢のような極上の味わいである。
「うん! 美味しい!」
「よかった! まだまだありますからね! あ〜ん!」
パクパクとチョコレートを食べる。美味し過ぎて、やめられない、止まらない。
「ふにゃ?」
身体がほてる。意識がぼんやりとする。なんだか楽しく、なって、きた?
「み、ミナト君? た、食べ過ぎ……ました?」
アリサが少し心配そうに、こちらを見ている。
「フフッ、そんな事ないよ。“アリサ”」
「よ、呼び捨てですか!?」
アリサの顔が紅潮する。不思議だ。今なら、普段なら恥ずかしいことでも、なんでも出来る気がする。
「ミナト君、酔ってますよね?」
「そんな事ないよ。よしよし」
俺はアリサの頭を優しくなでる。
「もぉ〜! 完全に酔ってるじゃないですか!(でも少し
俺はアリサをじっと見つめる。
「な、何でしょう?」
「アリサは本当に可愛いな」
「ッ〜〜!」
アリサの顔の赤色は、既に限界突破しそうになっている。まるでゆでだこのようだ。
「抱きしめていいか?」
「!?!?!?」
「嫌か?」
「嫌ではないですけど……きゃ!」
その瞬間に、俺はアリサを思い切り抱きしめる。
「アリサとずっとこうしていたい……」
「み、ミナト君/// (きゃー! きゃー! 積極的なのイイですよ! コレェ!)」
「アリサの髪は本当に綺麗だね……」
「(普段なら、絶対そんな事言ってくれないのに/// あっ、優しく髪を撫ででくれてる♡)」
俺はそのままアリサをお姫様抱っこして、ベッドへ連れて行く。
「ふぇええええええ!?」
「昨夜、一緒に寝たろ? 1度も2度も変わらないさ」
「ううっ/// そんなぁ……」
俺はアリサをベッドの上で抱きしめる。
「あっ……ミナト君……」
「アリサ……」
2人の顔が近づき合う。アリサが目を閉じる。俺たちはそのまま──
「ぐぅーzzz」
「み、ミナト君/// ……ってアレ!? 寝てる!?」
♢
目を覚ました。頭がボッーとしてる。リビングに行くとアリサがピコピコとゲームをしていた。
「あれ? アリサ“さん”、俺何してたんだけ? 確か、チョコを食べてそれから──」
「それから、眠くなったって言って、ベッドに行っちゃいましたよ?」
「そっか」
何かアリサとイチャイチャする夢を見た気がする。夢だったのが少し惜しいな。
「じゃあ、一緒にゲームしようか」
俺はアリサの横にすると、アリサはスススと距離をとる。
「?」
アレ? もしかして俺、汗でもかいて臭う? シャワーでも浴びてこようかな……。
「(あんな事があったら、意識しちゃうじゃないですかー!/// でもたまには強引なのも、イイ……かもです)」
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