海へ行こう その3

 一通り泳ぎを楽しんだ後に、昼食を取ることになった俺たちは、揃って海の家に向かう。


 焼きそばを3人前注文し、席につく。


「おおー! これが“焼きそば”ですか!」

 

 アリサは見慣れない食べ物に、興味津々で見入っている。


「やっぱ海の家と言えば、焼きそばだよねー! いただきまーす!」


 コハルは待ちきれないとばかりに、焼きそばを割り箸で食べ始めた。


「うんまぁーい!」

「じゃあ、俺たちもいただこうか。アリサさん!」

「はい、いただきます!」


 炒められた焼きそばの香りが食欲を刺激する。


 俺たちは焼きそばをパクりと一口。


「麺にソースがよく絡み合っていますね。そして、香ばしく炒められた野菜と豚肉がさらに美味しさを引き立てています……」


 アリサがうっとりと、いつもの食レポを開始する。


「うん、うまい!」


 海の家で食べる焼きそばは、家で作る焼きそばとは、また違った良さがある。


 見ればコハルはもう既に完食していた。口の端についたソースをペロリと舐め、コハルは


「よーし! 食後のデザートだー! みんな食べ終わったら、ソフトクリーム食べよーよ!」


 と言い出した。


「ソフトクリームいいですねー!」

「うん、じゃあ食後にみんなで食べようか!」


 食後にソフトクリームを注文する。俺はバニラ、コハルはチョコレート、アリサは抹茶を選ぶ。


 みんなで仲良くペロペロとソフトクリームを味わう。


「アリサお姉ちゃんの抹茶味、ちょっと味見させてー!」

「いいですよ、はい、どうぞ!」

「わーい!」


 コハルは抹茶ソフトクリームの端の方をペロリといただく。


「それじゃあ、アリサお姉ちゃんも私のチョコレート味、どーぞ!」

「では遠慮なく……。うーん! チョコレートも美味しいですねー!」


 仲良く食べさせ合いっこをしている様は、見ていて微笑ましい。


「ミナト君もどうですか?」

「へ?」


 アリサが自分の抹茶味のソフトクリームを俺の方に向けた。


「た、食べてもいいの?」

「はい、よかったらどうぞ」


 これって関節キスなのでは……? いいのか……? あっ、コハルがこっちを見てニヤついている……。


 あの顔は、間接キスくらいでうろたえる俺をからかおうとする顔だ。ええい、からかわれてたまるか!


 俺はアリサのソフトクリームを、少しだけペロリといただく。


「どうですか?」

「う、うん、抹茶も美味しいね」

「ふふっ、美味しいですよね」

「あー、間接キスだ!」


 なんてことをコハルは言いやがった。その事に気づいてなかったのか、アリサはみるみる顔が赤くなっていく。


「えっ……いやっ……、別にそういう意図はなくてですね! ただ抹茶味の美味しさを皆さんと共有したかっただけでして!」


 しどろもどろなアリサを見て、コハルは満足気な顔をしている。悪魔かコイツ……。


「だ、大丈夫だよ、アリサさん。そんなの全く気にしないから!」


 俺は慌てて、助け舟を出す。


「そう……ですか? でも……少しは気にして欲しかったような……」

「え!? あっ、ごめん!」


 フォローしたつもりが逆効果だったようだ。な、なんで!?


「(アリサお姉ちゃん、乙女ー! お兄ちゃんにこの乙女心分かるのかなぁ……)」


 俺は焦って、なんとかフォローしようとする。それがいけなかったのだろう。


「ほ、本当は興奮したよ! アリサさん!」

「ふぇ!?」

 

 なんてとんでもない事を、俺は口走ってしまう。俺はテンパるのに弱くと、たまにとんでもないことを言ってしまうのだ……。


 コハルがテーブルに突っ伏して、笑いをこらえている。あーもー! どうすりゃいいんだー!


「こ、興奮したんですか?」

「いや、その……興奮は言い過ぎた。ちょっとドキッとした。そ、それだけ!」


 俺はプイッと顔を逸らす。


「ふふっ、そうなんですね!」


 アリサはなんだか少し嬉しそうだった。


「(うぷぷぷ、このカップル、イジリがいがあり過ぎる困るよー!)」


 俺の顔は真っ赤になったが、これはきっと夏の暑さのせいだ。そうに違いない。うん……。



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