海へ行こう その1
パラソルとシートを設置し、水着に着替え後にここで待機しているところだ。
「お待たせー! お兄ちゃん!」
「お待たせ……しました」
アリサとコハルが水着に着替え、こちらにやってきた。
「……っ!」
俺は思わず、その光景に目を奪われた。
アリサの綺麗な長い銀髪は、太陽の光を浴びてキラキラと輝き、潮風になびいている。
そして青白い彼女の水着は、持ち前の白い肌も相まって、より一層透明感を際立たせている。
そう、それはまるで浜辺に舞い降りた天使のようだ。
「…………」
本当に美しいものを見た時に、どうやら人は言葉がでないらしい。
「あのー、ミナト君。どうでしょうか? 似合って……ますか?」
モジモジと顔を赤らめ、こちらの反応をうかがうアリサ。
「うん、とっても似合ってるよ! アリサさん!」
心の底からの本音がポロリ。
「本当ですか! コハルちゃんと一緒に、デパートで悩んだかいがありました!」
パァと顔を明るくして、微笑むアリサ。その笑みは太陽よりもなお一層、眩しく感じた。
「ねーねー、お兄ちゃん、アタシの水着の感想はー?」
アリサに目を奪われて気が付かなかったが、コハルはコハルで、とんでもない格好をしていた。
「なんでスクール水着なんだよ!?」
コハルは
「えへへ! お兄ちゃんが喜ぶと思って!」
「!?」
腰に手を当て、胸を張り、満面の笑みでコハルはそう言った。
「ミナト君、私もスク水の方がよかったですかね……?」
アリサが不安そうに、こちらの顔をうかがっている。
「いや、俺スク水好きでもなんでもないから! 誤解するようなこと言うなよ、コハル!」
「え? 実家のお兄ちゃんのベッドの下に、スク水特集のえっちい本がたくさんあったのに!?」
「な!?」
そんなはずはない! ベッドの下に隠してあったのは洋モノだったハズだ!
「ミナト君……やっぱりスク水なんですね……。そう言ってくだされば、私もスク水を……」
「嘘つくなー!」
「あはは、冗談じゃーん!」
俺は逃げるコハルを追いかける。子供の頃にした鬼ごっこを思い出して、少し懐かしい気分になった。
♢
ひとしきりコハルを追い回した後、俺はトイレに行きたくなった。
「ちょっと、トイレ行ってくるね」
「あー、アタシも行くー!」
「はい、ではここでお待ちしています」
俺とコハルはトイレに行き、アリサの元に戻る。
「ヒュー、彼女1人ィ? よかったら俺っちと遊ばなーい?」
「いえ、1人ではありません」
「君みたいな娘、1人にする奴なんて放っておいて、俺と遊ばねー?」
「結構です」
見るからに軽薄そうな、サングラスをかけた色黒男にアリサが絡まれていた。
俺はその男とアリサの間に割って入る。
「ごめん、待たせたね。アリサさん」
「ミナト君! 待ってました!」
アリサは嬉しそうに俺と腕を組む。
「ちっ、男付きかよ……」
男は悪態をつき、その場を去って行った。
「よかった……。何事もなくて。ごめんね、目を離して悪かったよ」
「いえいえ、全然大丈夫ですよ? ふふっ、そんなに心配してくれるんですね? ミナト君」
アリサは少し意地悪そうに、こちらを見て笑っている。
「ああ、当たり前だって! 今日はもう、アリサさんから目を離さないから……」
「ふええ!?」
「(お兄ちゃん、そういうところだぞー)」
アリサは俺に真剣に返事をされて、顔が真っ赤になる。
「はい……では今日は……私から目を離さないで下さい……ね?」
頬を赤らめ、こちらを見つめる水着のアリサにドキリとする。
「(はよくっつきなよ……この2人)」
コハルがなにやら大袈裟なため息を吐いたのだった。
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