お泊まり会
「お邪魔しま〜す」
アリサはいったん自分の部屋に帰って、お風呂に入って、パジャマに着替えてきたようだ。
上気した顔がなんだか色っぽくて、ドキリとする。
夜中にパジャマ姿の女の子を自宅に招くのは、なんだか気恥ずかしく感じた。
「ど、どうですかね? パジャマ姿。変じゃないですか?」
「う、うん! とっても似合ってるよ!」
「ありがとうございます……!」
それを聞いてパァとほころぶアリサ。
「こういうのワクワクしますね〜!」
「いらっしゃい、アリサお姉ちゃん。一緒にゲームしよー!」
コハルも風呂に入り、パジャマ姿に着替えている。パジャマパーティーだなこれは。
「いいですね〜。ミナト君も一緒にプレイしましょう!」
「それじゃあ3人でゲームしよっか。あんまり遅くまでしないようにほどほどにね」
「お兄ちゃんには負けないよー?」
3人で乱闘ゲームをプレイするが──
「また勝ちましたー、ブイ!」
「アリサお姉ちゃん強すぎー!」
「いつのまにこんなに強く……」
俺とコハルはアリサのキャラに
聞けば、ネット対戦で最上位クラスに昇格しているのだとかなんとか。
「他のゲームもしよー!」
「はい!」
結局、3人で夜遅くまで、ゲームに熱中したのだった。
♢
《アリサ視点》
私とコハルちゃんは、リビングに布団を2つ敷いて、眠りにつこうとしている。ミナト君は、自室のベッドで眠っているようだ。
「アリサお姉ちゃん?」
コハルちゃんが小声で、私に話しかけてきた。
「はい、なんでしょう? コハルちゃん」
「恋バナしよー!」
コハルちゃんは目を輝かせて、そんなことを言ってきた。どうやら、まだ眠る気はゼロのようだ。
「こ、恋バナですか?」
「うん! やっぱりまずは、お兄ちゃんとアリサお姉ちゃんの話だよねー! 本当に2人は付き合ってないの?」
「はい、お付き合いはしていませんよ」
「
「!?」
私はいきなりのことで戸惑ったが、正直に告白する。
「はい……好き……です」
「告白しないのー?」
「ゆ、勇気が出なくて……ですね……」
「ふーむ、なるほど(お兄ちゃんも奥手だからなー。これはくっつくのに時間かかるかもね)」
コハルちゃんは顎に手を乗せて、考え込む。
「それじゃあ、私をお兄ちゃんの彼女だと勘違いした時は、辛かったんじゃない?」
「そう……ですね。クラクラして、涙が出て、胸が張り裂けそうでした。あと、頭が破壊された様な痛みを訴えました」
「なるほど……。アリサお姉ちゃん……、才能あるね」
「? なんの才能ですか?」
「それはね“NTR(寝取られ)だよ!」
「寝取られ?」
私は小首を傾げる。
「好きな人を他の人に取られると、普通は気分が落ち込むんだけどね。その道を極めた者は、それすらも興奮に変えることができるんだよ!」
「へ、変態じゃないですか!」
私は頬を赤くする。そんな才能が私にあってたまるか!
「何を隠そう、アタシもお兄ちゃんに恋人が出来たことを妄想して、ハァハァしてるんだよね……」
「なにやってるんですかー!?」
私は思わずツッコミを入れる。普段、ツッコまれる方が圧倒的に多いので、新鮮ではあった。
「でもさー私、アリサお姉ちゃんがお兄ちゃんと一緒にいても、全く興奮しなかったんだよねー」
「なんでです?」
「うん、心の底からお似合いだって思っちゃったから! だから、アリサお姉ちゃんとお兄ちゃんが、いつかくっ付いたらいいなーと、本気で思ってるんだ! えへへ」
「コハルちゃん……」
私は思わず、コハルちゃんを抱きしめたくなった。本当に私達のことを想ってくれている、かわいい妹だと思って。
「そうだ、アリサお姉ちゃん! 試しにNTRの練習してみよーよー!」
「わ、私は別に……」
「これを習得するとね……好きな人に恋人が出来てもダメージ無くなるからお得だよ!」
「た、確かに一理ありますね……」
私はゴクリと唾を飲み込む。
「でしょー? 試しにお兄ちゃんが、仲のいい親友と付き合ったところを想像してみて?」
「では少しだけ……」
私はミナト君と親友のユイカが、付き合ってイチャイチャしているのを、遠目で眺めているところを想像した。
途端にズキンと脳が痛むと共に、心の奥底から何か得体の知れない興奮が湧き出てきた気がする。
「どうやら“
「これがNTR……」
「ようこそNTRの世界へ……」
「これで無敵です……」
♢
私たちが今朝の朝食をとっている時のことだった。
「あのー、ミナト君?」
「うん?」
「今度、他の女の子とイチャイチャする予定はありますか?」
「ええ!?」
見ればコハルちゃんがクククと笑いを堪えている。
「コハル?」
「なーに? お兄ちゃん♡」
「ちょっと、後で話があるから俺の部屋に来なさい」
「やだー、こわーい♡」
「それとアリサさん」
「はい?」
「俺が他の女の子とイチャイチャするなんてありないよ」
恥ずかしそうだけど、優しい瞳でミナト君がそう言った。胸がキュンとする。
ごめんコハルちゃん。やっぱり私はNTRより純愛派……かも?
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