たこ焼きパーティーをしよう

 俺はたこ焼きプレートで、アツアツのたこ焼きをつまようじでくるりと回す。


 すると、香ばしいたこ焼きの匂いが辺り一面にジュワッと広がった。


「うわぁー、いい匂いですねー!」

「お兄ちゃん、早く早く!」


 アリサと妹のコハルは待ちきれないのか、ソワソワとしている。


 俺は皿に焼き上がったたこ焼きをのせ、ソースとマヨネーズかけ、最後に青のりとかつお節をまぶしていく。


「これで完成!」

「「おおー!」」

「熱いから2人とも気をつけてね」


 3人で手を合わせて、たこ焼きを頂く。


「ふーふー! はふはふ! ふんわりとした生地とタコが口の中でとろけますぅ……」

「たこ焼きソースとマヨネーズが絡み合い、青のりとかつお節と共に極上のハーモニーを奏でているね……。さすが、お兄ちゃん。腕は落ちてないと見た!」


 2人共、はふはふと夢中でたこ焼きを食べている。俺もひとくち。うん、悪くない。


「じゃんじゃん、焼くからじゃんじゃん食べてくれよー!」

「「はーい!」」


 3人でたこ焼きを思う存分に味わったのだった。





 食べ終わったところで、コハルが話を切り出した。


「改めまして、アタシはミナトお兄ちゃんの妹、如月コハル、中学2年生です。よろしくね、アリサさん!」


 コハルは人懐っこい笑みを浮かべて、アリサに挨拶をする。


「はい、こちらこそよろしくお願いします。私は早乙女アリサ。海外から転校してきました。ミナト君にはなにかとお世話になっています」


 アリサは丁寧にコハルにお辞儀をする。


「ふむふむ」


 コハルはアリサをジロジロと見回して


「いやー、お兄ちゃんもすみに置けないなー! こんな可愛い彼女さんを作ってるのなんて! 大事にしてあげなよ。このこのー!」


 ひじを軽く俺に当てながら、コハルはとんでもないことを言ってきた。


「か、彼女じゃないって!」

「ち、違いますよ!」


 2人で顔を真っ赤にして反論する。


「ほへ? 2人で一緒にご飯を毎日、食べる仲ってお兄ちゃんに聞いたけど?」


 コハルは、はてなと小首を傾げる。


「いえ、私が料理が下手なので、ミナト君にお世話になっているんです! 決して、彼女とかそういう訳では……」

「そ、そうだよ、コハル。アリサさんに失礼だぞ?」

「いえ、失礼ではないのですけれども……」

「え? あ、そう? あ、ありがとう」


 俺とアリサは2人で顔を見つめて、照れ合う。


「……うん、アタシが間違ってたよ。お兄ちゃん」

「わ、分かってくれたか」

「そ、そういうことですよ」


 2人でほっと胸を撫で下ろしたところで──


「2人はもう夫婦だったんだね!」


 そんな爆弾発言をするコハル。


「違ーう!」

「ち、違います!」


 コハルはうーんとアゴに人差し指を当てる。


「それならアリサお姉ちゃんって、呼んだ方がいいかなー? そうなるのは時間の問題だろーしねー?」

「ア、アリサお姉ちゃんですか!? アリサお姉ちゃん……アリサお姉ちゃん……」


 アリサはその言葉を反復し、


「いい響きですね……。私、一人っ子なので、可愛い妹とか欲しかったんですよ!」


 と嬉しそうに言った。


「わーい! アリサお姉ちゃーん!」

「はい、お姉ちゃんです!」


 2人は抱きつき、じゃれあっている。うん、なんだか打ち解けたようでよかった……のかな?





「お泊まり会をしまーす!」


 急にコハルがそんなことを言い出した。


「まぁ今日、コハルが泊まるならリビングに布団を敷いてあげるよ」

「チッチッチ」


 コハルは人差し指を横に振る。


「今日は〜アリサお姉ちゃんも一緒にお泊まりするよー! ねー、アリサお姉ちゃん?」

「え!?」


 き、聞いてないんだけど!?


「コハルちゃん、やっぱり迷惑ですよ……」


 アリサは頬を赤らめてモジモジしている。


「大丈夫だって。お兄ちゃんは押しに弱いからねー。アリサお姉ちゃんは覚えておいた方がいいかもよ?」

「そ、そうなんですか? では……」


 アリサはスマホになにやらメモをしている。


「お泊まりかぁ……。うーん」


 付き合ってもいない女の子を家に泊めてもいいものかどうか……。


「今日、コハルちゃんとお泊まりしても……いいですか?」

「お願い……お兄ちゃん!」


 2人とも上目遣いで、ジッーとこちらを見つめてくる。


「うーむ……」

「お兄ちゃんが昔、ホゲモンのバグ技で伝説ホゲモン捕まえてやるって言って、アタシのデータぶっ壊したの許してあげるから!」

「うっ……!」


 だってネットのワザッフに書いてあったんだもん……。


「俺は寝室で寝るから、2人はリビングで寝るという条件ならいい……かな」 

「「やったー!」」


 アリサとコハルは2人で嬉しそうにハイタッチしていた。


 まぁ、これなら変なことも起きないだろ……。たぶん。







 

 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る