アリサの誕生日を祝おう その2

 アリサの誕生日当日、俺達は共に朝食をとる。  


「今日は楽しみですね、ミナト君!」

「うん、今日はどこに遊びに行こうか?」

「この前、オープンしたクレーンゲーム専門店なんてどうでしょうか? 動画で見ましたが、いろんな景品があって、楽しそうでしたよ」

「それは楽しそうだね。そこから行ってみようか?」

「はい!」


 今朝のアリサは、淡いスカートとブラウスを着ている。髪型のちょっとした変化やアクセサリーなども相まって、いつもより大人びて見えた。


「ミナト君?」

「はっ……!」


 いかん、アリサに見惚みとれていた。


「ふふっ、どうしたんですか?」

「今日のアリサさん服装、気合い入ってるね」

「あっ、バレちゃいました? えへへ、今朝、早起きして、あーでもない、こーでもないとコーディネート頑張ったんですよ? ど、どうでしょうか?」

「うん、とっても似合ってる」


 心からの本心だった。


「あ、ありがとうございます……」

「う、うん……」


 2人して頬を赤く染めて、照れてしまう。なんだこれ電話。なんだか付き合いたてのカップルみたいだな……。


「よ、よし、そろそろ出発しようか?」

「は、はい」





「うわぁー! すごい数のクレーンゲームと人ですね!」

「おぉ……これは」


 店中に広がるクレーンゲームコーナーに圧倒される。店内はオープン開始、間もないということもあって、お客さんでごった返していた。


「ミナト君、あれ見てください! 可愛いワンちゃんのぬいぐるみですよ!」


 俺はアリサに手を引っ張られ、巨大な犬のぬいぐるみが景品のクレーンゲームへと連れてこられた。


「犬、でっか!」

「早速、プレイしましょう!」


 アリサはうきうきで100円玉を機械に投入し、アームを動かす。そのアームは、見事に犬の首をとらえるが──


「あー! 全然持ち上げられません!」


 アームのチカラが弱いのか、少し浮いた直後に、ぬいぐるみはその場に落ちる。


「なるほどね……」

「もう一回やります!」


 その後、何回か挑戦したアリサだったが、結局その場から少しも動かせず、諦めてしまった。


「うぅ……。ワンちゃん欲しかったですぅ……」


 アリサはよほど欲しかったのか、かなり落ち込んでいるようだ。


「なら次は、俺がプレイしようかな」

「私の仇をとって下さいね……」


 俺は100円玉を投入し、首を狙ってアームを降下させる。


「あっ、ミスったな……」


 首より少し手前にアームを降下させてしまっが──


「ん?」

「おおっ!」


 なんと上手い具合に、犬の丸まったシッポの間にアームの片方が挟まり、見事にGETした。


「よっしゃ!」

「すごいです、ミナトさん!」


 そして俺はそれをアリサに渡す。


「え?」

「今日の誕生日プレゼント」

「いいんですか?」

「うん、よかったら可愛がってあげてね」

「ありがとうございます!」


 アリサは巨大な犬のぬいぐるみを大切そうに、胸の前でぎゅっと抱えている。


「えへへ、すごく可愛いプレゼントをもらっちゃいました! 今日から一緒にベッドで寝ますね!」


 本当に嬉しそうな笑顔をするもんだから、こっちまでつられて笑顔になってしまう。





 アリサが一度、行ってみたかったそうなので、お昼は回転寿司を選んだ。


「おぉ、本当にお寿司が回っていますね……」


 興味津々に流れるお寿司を眺めるアリサ。マグロ、サーモン、イカ、タコ、貝、どれも新鮮で美味しそうだ。


「欲しい皿があったら、取ってね。タッチパネルでも注文できるよ」

「ふむふむ。いやー、いろんなお寿司に目移りして、選びきれないですね!」


 アリサはまず、恐る恐るマグロの皿を取った。そして、醤油を少し垂らして、箸でパクッと一口。


「おいしいですぅ!」


 アリサは頬に手を当てて、目を閉じ、もぐもぐとマグロの寿司を味わっている。


「ふぅ……、鮮度抜群で、脂の乗りもよし。口に入れた瞬間に、上品な甘さが口いっぱいに広がりますね……。これが一皿100円とは恐るべしJapan……」

「そうだね〜これで一皿100円はすごいよね〜」


 その後もアリサは、もぐもぐとお寿司を平らげ、皿の山を築き上げるのだった。


「あ、あと一皿で、ガチャが回せます……。け、けぷ」

「アリサさん、無理しないでね!?」


 10皿で一回ガチャが回せるので、頑張るアリサさんなのでした。



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