アリサの誕生日を祝おう その1
「そう言えばアリサちゃんの誕生日っていつだったっけ?」
「誕生日はですね──」
「えー、そうなんだ! 今週末じゃん!」
「何かプレゼントしなきゃ!」
クラスの女子達とアリサが話をしている。
アリサの誕生日は今週末なのか。何かプレゼントをした方がいいのだろうか。
いや、その前に女の子の誕生日に何をプレゼントしたらいいのかなんて、分からないな。
「なぁ、たかし」
俺は目の前にいる
「ククッ、なんだ我が宿敵よ」
「相談したい事があるんだけどさ、昼は屋上で飯食わないか?」
「よかろう。今日は一段と風が騒がしい。ククッ、シルフの奴めが荒ぶっておるわ」
♢
俺達は屋上で昼食をとる。
「なぁ、女の子へのプレゼントって何をあげればいいんだ?」
「ククッ、この俺に恋愛の相談か? 魔界ですら手に負えずに追い出されたこの俺にか? ありえんな。“人選ミス”という言葉を貴様に贈ってやろう!」
「そう言うなよ。タコさんウィンナーやるから。ほれ」
俺はたかしの弁当に、タコさんウィンナーを乗せてやる。
「わーい! タコさんウィンナーだー!」
たかしは美味しそうにタコさんウィンナーを味わっている。
「キャラ忘れてんぞ?」
「き、貴様、この俺を
「ねーよ」
「それは残念……」
たかしはよほど美味しかったのか、おかわりがないことを知ってシュンとする。
「しかしタコさんウィンナーの借りは返さねばなるまいよ」
「あぁ、頼りにしてるよ」
「まずはモノをプレゼントすると言う認識から改めるべきだな」
「と、いいますと?」
「プレゼントだけではない。その人にとっての新鮮な“体験”も、心に響くモノとなろう。アレはそう、俺が初めて魔界に行った時のことだ──」
たかしが何やら長々と語り出したのをスルーして、考える。
体験……か。例えばまだアリサが行ったことのない場所に一緒に行って、楽しむ。これだけでも十分に思い出に残る誕生日になるかもしれない。
まぁ、彼女がその日に付き合ってくれるという前提にはなるが。
「ありがとう、たかし。おかげで参考になった」
「礼なぞいらん。そんなのもの冥界のケルベロスにでも食わせてしまえ」
「やっぱり、たかしは頼りになるな」
「フ、フン。
たかしは頬を赤らめて、そっぽを向く。たかしは根は本当にいい奴なんだよな……。
♢
「ア、アリサさん、今度の誕生日の日は空いてる?」
俺はアリサは夕食をとりながら、勇気を出して質問をする。こ、断られたらどうしよう……。
「あれ? ミナト君に誕生日、教えた事ありましたっけ?」
アリサは小首を傾げて、こちらを見つめる。
「今日、クラスの人と話しているのを小耳に挟んじゃって……」
「そうなんですね。はい、誕生日の日は空いていますよ」
「よ、よかったら、その、俺とその日に遊びに行かない?」
女の子を遊びに誘うのがこんなにもドキドキするものだなんて……。いつも食事は一緒に取っている仲ではあるのに……。
すると彼女はパァと顔を明るくさせて
「はい、ぜひそうしましょう! 楽しみですね、ミナト君!」
と喜んでくれた。俺は胸を撫で下ろす。よ、よかったぁ……。断られたら三日は
「ふふっ、デート、ですね?」
「で、デート……なのかな?」
「さて、どうなんでしょうね?」
クスクスとアリサは可愛らしく笑っている。
俺は彼女にとって、心に残る楽しい誕生日にしてあげたいと強く思った。
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