アリサの誕生日を祝おう その1

「そう言えばアリサちゃんの誕生日っていつだったっけ?」

「誕生日はですね──」

「えー、そうなんだ! 今週末じゃん!」

「何かプレゼントしなきゃ!」


 クラスの女子達とアリサが話をしている。


 アリサの誕生日は今週末なのか。何かプレゼントをした方がいいのだろうか。


 いや、その前に女の子の誕生日に何をプレゼントしたらいいのかなんて、分からないな。


「なぁ、たかし」


 俺は目の前にいる中二病たかしに話しかける。


「ククッ、なんだ我が宿敵よ」

「相談したい事があるんだけどさ、昼は屋上で飯食わないか?」

「よかろう。今日は一段と風が騒がしい。ククッ、シルフの奴めが荒ぶっておるわ」





 俺達は屋上で昼食をとる。


「なぁ、女の子へのプレゼントって何をあげればいいんだ?」

「ククッ、この俺に恋愛の相談か? 魔界ですら手に負えずに追い出されたこの俺にか? ありえんな。“人選ミス”という言葉を貴様に贈ってやろう!」

「そう言うなよ。タコさんウィンナーやるから。ほれ」


 俺はたかしの弁当に、タコさんウィンナーを乗せてやる。


「わーい! タコさんウィンナーだー!」


 たかしは美味しそうにタコさんウィンナーを味わっている。


「キャラ忘れてんぞ?」

「き、貴様、この俺をたばかったな? フハハハハ! いいだろう、それでこそ我が宿敵よ。あとタコさんウィンナーのおかわり下さい!」

「ねーよ」

「それは残念……」


 たかしはよほど美味しかったのか、おかわりがないことを知ってシュンとする。


「しかしタコさんウィンナーの借りは返さねばなるまいよ」

「あぁ、頼りにしてるよ」

「まずはモノをプレゼントすると言う認識から改めるべきだな」

「と、いいますと?」

「プレゼントだけではない。その人にとっての新鮮な“体験”も、心に響くモノとなろう。アレはそう、俺が初めて魔界に行った時のことだ──」


 たかしが何やら長々と語り出したのをスルーして、考える。


 体験……か。例えばまだアリサが行ったことのない場所に一緒に行って、楽しむ。これだけでも十分に思い出に残る誕生日になるかもしれない。


 まぁ、彼女がその日に付き合ってくれるという前提にはなるが。


「ありがとう、たかし。おかげで参考になった」

「礼なぞいらん。そんなのもの冥界のケルベロスにでも食わせてしまえ」

「やっぱり、たかしは頼りになるな」

「フ、フン。おだてても何も出んぞ……」


 たかしは頬を赤らめて、そっぽを向く。たかしは根は本当にいい奴なんだよな……。





「ア、アリサさん、今度の誕生日の日は空いてる?」


 俺はアリサは夕食をとりながら、勇気を出して質問をする。こ、断られたらどうしよう……。


「あれ? ミナト君に誕生日、教えた事ありましたっけ?」


 アリサは小首を傾げて、こちらを見つめる。


「今日、クラスの人と話しているのを小耳に挟んじゃって……」

「そうなんですね。はい、誕生日の日は空いていますよ」

「よ、よかったら、その、俺とその日に遊びに行かない?」


 女の子を遊びに誘うのがこんなにもドキドキするものだなんて……。いつも食事は一緒に取っている仲ではあるのに……。


 すると彼女はパァと顔を明るくさせて


「はい、ぜひそうしましょう! 楽しみですね、ミナト君!」


 と喜んでくれた。俺は胸を撫で下ろす。よ、よかったぁ……。断られたら三日はへこんでいたかも……。


「ふふっ、デート、ですね?」

「で、デート……なのかな?」

「さて、どうなんでしょうね?」


 クスクスとアリサは可愛らしく笑っている。


 俺は彼女にとって、心に残る楽しい誕生日にしてあげたいと強く思った。






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