まさかの夜中に訪問
今日の晩ご飯は、アリサと2人で話し合った結果、すき焼きとなった。
俺は昼からスーパーへ買い出しに行き、すき焼きの食材を購入した。
「7時か。すき焼きの準備はしたし、そろそろアリサさんを呼ぼうかな」
俺がスマホで連絡をすると、すぐにインターホンが鳴る。
「アリサです」
「はい、どーぞ」
鍵を開け扉を開けると、アリサは白い箱を手にしていた。
「今日、ケーキ買ってきたんですよ。駅前の人気のケーキ屋さんです。いちごショートケーキとチョコレートケーキを一つずつ。看病と掃除のほんのお礼です」
「ありがとうアリサさん。ありがたくいただくよ。そうだ、食後に2人で一緒に食べない?」
「いいんですか? ありがとうございます!」
俺はケーキの箱をいったん冷蔵庫にしまう。
「そうだ。忘れてた。合鍵を返しとくね」
俺は彼女に合鍵を渡す。
「はい。そう……でしたね」
心なしか、受け取った彼女の顔はほんの少しだけ寂しそうだった。
「ああ、そうそう。それとこれも」
俺は“自分の部屋”の合鍵を渡す。
「……これは?」
「俺の部屋の合鍵。食事のたびに、外で待ってるの面倒でしょ?」
「セキュリティー上、大丈夫なんですか?」
「うん、信頼してるよ」
しばらく彼女は考え込んでいたが、
「はい。ふふっ、ではお預かりしますね」
柔らかな笑みを浮かべて、合鍵を大事にそうに胸の前で握りしめていた。
♢
グツグツとすき焼きの鍋が煮えだした。
「そろそろ食べられそうだね〜」
「はい、すき焼き楽しみです!」
俺は茶碗に生卵を割り、かき混ぜる。
「なぜ卵を?」
アリサは小首を傾げている。
「日本では
「いえ、日本の生卵は安全と聞いています。ぜひ、挑戦させてください!」
俺はアリサに溶き卵の入った茶碗を渡す。
「「いただきます」」
2人で手を合わせ、食事を始める。
アリサは牛肉を箸でつかみ、溶き卵にしっかりとディップさせる。
「では、行きますね……」
アリサは恐る恐る口の中に、牛肉を運ぶ。
「!?」
アリサの顔が衝撃を受けたような顔になる。
「ア、アリサさん、大丈夫?」
俺はそっーと彼女の顔色をうかがう。すると──
「お、おいしいですぅ……」
アリサは
「ふぅ、よかった……」
俺はほっと胸を撫で下ろす。
「柔らかな牛肉とまろやかな溶き卵が、甘さを
アリサは目を閉じて、牛肉の味をかみしめている。
こんなにいいリアクションをしてくれると、作ったこっちも嬉しくなるな。
「う〜ん、ご飯が進みますね!」
「まだまだあるから、どんどん食べてよ、アリサさん」
「はい! あっ……それとあの……」
アリサが少し恥ずかしそうに言う。
「ご、ご飯のおかわりもらってもいいですか?」
「もちろん!」
それから2人で仲良く鍋をつついたのであった。
♢
アリサが帰った後、俺は風呂に入り、リビングでまったりとしていた。
スマホの通知音が鳴る。そしてその相手はアリサだった。
『今からお邪魔してもよろしいでしょうか?』
「!?」
よ、夜中の今から? 忘れ物でもしたのかな? とりあえず俺はOKと返事をした。
ガチャリと音がして、合鍵を使ってアリサが入ってきた。
「お、お邪魔します……」
「っ……」
風呂上がりなのだろう。少しほてった顔が妙に色っぽくて、ドキリとした。
「よ、夜中にどうしたの? アリサさん」
「いえ、その、もう少しミナト君と一緒にいたいなぁって……。め、迷惑ですよね?」
頬を赤らめ、上目遣いでアリサはとんでもない発言をする。か、勘違いするってこんなの!
「そ、そっか。じゃあ、ゆっくりしていってよ」
「はい、お邪魔しますね!」
アリサは嬉しそうにリビングに上がっていったのだった。
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