第2話 妹に妹の推し活がバレた件
//SE 部屋のドアをノックする音
//ドア越しに
「わ、私だよ」
「お兄ちゃん、まだ……起きてる?」
「あの……さ。部屋、入っても……いいかな?」
「……ほんとにっ? ふふっ、じゃあ」
//SE ドアが開く音
//SE 部屋の中に入ってくるスリッパの足音
「……お邪魔しまーす」
「わー、お兄ちゃんの部屋久しぶりかも」
「思ったより綺麗にしてるんだね。男の人の部屋って、もっと散らかってると思ってた」
「……え、何の用かって?」
「むー……、何その質問。私がお兄ちゃんの部屋に来ちゃ駄目なの?」
「……ふふっ、嘘うそ」
「私がお兄ちゃんの部屋に来ることなんて、無いもんね。急に来てびっくりした?」
「実を言うと、特別な用は無いんだ」
「……さっきさ。久しぶりに一緒にテレビ見たりしたじゃん」
「しかも、私がアイドルをしてる番組をお兄ちゃんと一緒に見るのなんて初めてだったし」
「それが……その……」
「……楽しかったから、今日はもう少しお兄ちゃんとお話してたいなー……なんて、思ってたり……」
「あと、最近お兄ちゃんも色々忙しそうだし、私もアイドルのお仕事忙しくてあんまり話せてなかったから……」
「今日はもうちょっとお兄ちゃんと一緒にいちゃ、駄目……かな?」
「……ほんとっ? 嬉しい!」
//SE 近づいてくるスリッパの音
//SE 隣に座る音
//SE 腕を絡ませてくる音
「ふふっ、お兄ちゃんならそう言ってくれると思ってた」
「あれ? お兄ちゃん、また赤くなってる?」
「腕ならさっきだって組んでたじゃん」
「え? なんか良い匂いがするって?」
「私、今お風呂あがったばっかりなんだから当然じゃん」
「そうだ。最近新しいシャンプーに変えたんだー。どう? いい匂いでしょ?」
//頭を近づけてくる
「ほーら、良い匂いでしょ? って何で顔背けるの?」
「お兄ちゃん」
「お兄ちゃんってば。こっち向いてよ」
「むー……、こうなったら」
「こちょこちょこちょー」
//SE 髪の毛で耳をくすぐる音
「ん? 何って、私の髪の毛でお兄ちゃんの耳をくすぐってるの」
「くすぐったいでしょ? ちゃんとシャンプーの感想言ってくれるまで、やめないもんねー」
「こちょこちょこちょー」
//SE 引き続き髪の毛で耳をくすぐる音
「ふっふっふ。お兄ちゃんが耳が弱いのは知ってるんだからね」
「必死で我慢しちゃって。お兄ちゃんかわいいー」
「早く観念して、シャンプーの感想を言うのだー……なんちゃって」
「……えっ……ふえっ!? 凄い色っぽい匂い!?」
「甘い系の匂いだけど、キツ過ぎなくて大人っぽいところが私とのギャップになってて、かなり好み? 正直、好きな匂い過ぎて辛い……?」
「待って! お兄ちゃん待って! さっきのパンツの時もだけど、何でお兄ちゃんの感想ってそんなに丁寧なの!?」
「え、この前シャンプーを変えてから、家の中ですれ違う度に、この匂いにドキドキしてた!?」
「……ストップ! ごめん、もうそれ以上は私が保たないから! やめる! お耳くすぐるのはやめるから、お兄ちゃんもストップー!」
「……」//呼吸を整える
「……ふ、ふーん。そうなんだ。お兄ちゃん、私の匂い好きだったんだ」
「そっか……うん、そうなんだ……」
「け、けどね。私もお兄ちゃんの匂い好きなんだよ」
「……」//耳元で匂いを嗅いでくる
//以降、しばらく耳元で
「うん、これこれ。昔から変わらなくて安心する匂い……」
「え、今日まだお風呂に入ってないから、匂い嗅ぐの駄目だって?」
「いいじゃん。私がお兄ちゃんの匂いが好きだって言ってるんだから」
「……」//耳元で匂いを嗅いでくる
「こーら、抵抗しないで。お兄ちゃんは私に匂いを嗅がせてればいいの」
「あ、こら、ちょっと! 暴れちゃ駄目だって……っきゃ!」
// 二人ともベッドに倒れる音
// ドサドサッと本が落ちる音
「……あいたたた」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「そっか、良かった。けど、お兄ちゃんが暴れるからいけないんだからね」
「ほら、今の衝撃で何か色々落ちてきたよ……本……かな?」
「ん? 何をそんなに焦ってるの?」
「ははーん、さては今落ちてきたの、お兄ちゃんが隠してたエッチな本でしょ?」
「お兄ちゃんがどんなエッチな本を読んでるのか、チェックしちゃおーっと」
「だーめっ、待たないよーっだ」
「えっと……女の子が表紙の写真集……みたいだけど、何か見覚えが……」
「なになに『国民的アイドルグループ 虹色クリームの凛奈、1st写真集』……って、えええ!? これ、私の写真集じゃん!」
「なんで、私の写真集、お兄ちゃんが持ってるの!?」
「ほ、他の本は……わ、私が表紙をやったファッション誌に、私のグループの特集がされてるアイドル情報誌……他も、全部、私が載ってる本ばっかり!?」
「お兄ちゃん、もしかして……、私の……ファン?」
「……ということは、他の場所にも何かが」
//SE ゴソゴソと家探しをする音
//少し間を空けて
「ベッドの下には、今まで私が出した全CDと全DVD……。クローゼットの中には、凛奈推しのオリジナル法被や団扇、その他ライブグッズ……」
「っていうか、デビュー直後の全然売れてなかった頃のライブの半券や私のグッズまで全部揃ってる……」
「お兄ちゃん、興味ないって言いながら、こんなに私の推し活してたの?」
「……」//涙ぐむ
「……」//鼻をすする
「……え、違うちがう! 全然嫌じゃない!」
「えっと……その……お兄ちゃんが、ずっと応援してくれてたんだって思うと、嬉しくて……」//鼻をすすりながら
「……お兄ちゃん、覚えてるかな? 私が初めてお父さんとお母さんにアイドルになりたいって話した時のこと」
「お父さんもお母さんも私にアイドルなんて絶対無理だって猛反対だったけど、お兄ちゃんだけは味方してくれたの」
「私、すっごい嬉しかったんだ」
「けど、実際のアイドル活動始めたら、お兄ちゃん『頑張れよ』って言ったりして応援はしてくれるけど、アイドルの私には全然興味ないみたいで……」
「メジャーデビューしたよって言っても、素っ気なく『おめでとう』って言うだけで。今度テレビに出るよって言っても『良かったね』って言うだけで」
「……お兄ちゃん、私に興味ないのかなって、寂しかったんだからね?」
「え? 妹の推し活をしてるのが照れ臭かった? あと、私の人気が出過ぎて言い出し辛かった?」
「……ふふっ、そういうところ、お兄ちゃんらしい」
「けど、そうやって隠しながらだけど、ずっと私のこと、応援してくれてたんだね」
「……ほんとに、すごくすごく嬉しい」
//SE 抱きついてくる音
「ありがとう、お兄ちゃん」
「えへへ、抱きついちゃった……あれあれ? もしかして……お兄ちゃん、照れてる?」
「……ふーんっ、そっかー。よく考えたら、部屋に二人きりで、推しのアイドルに抱きつかれるなんて、お兄ちゃんには刺激が強かったかな?」
「ね、お兄ちゃん」//耳元で
「今日は、このままお兄ちゃんと一緒に寝ても……いいかな?」
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