神界特別企画! 異世界に飛ばしてみた!~テレビの企画みたいなノリで異世界転移させられたかと思ったら急にバラエティ企画が始まったんだが……~
第64話 神々からの緊急アンケート! でもなんかクソコメばっかりじゃん……!?
第64話 神々からの緊急アンケート! でもなんかクソコメばっかりじゃん……!?
「不完全な状態で転生させて、悲劇的な人生を歩ませている。これが、私がフィーネちゃんに感じてる負い目。正確には私の前任の
「でもそれは、できないんでしょ?」
「えぇ。だから翔くんにお願いしてるの」
「分かった。だったら引き受けるよ。まぁそんな話をされる前から助けるつもりだったけどな……」
「大丈夫? 私が言うのもなんだけど、ヘレナって淫魔将よ? 分かりやすく言えば魔王直属の幹部。翔くんの物語はそんな化け物を倒す英雄譚じゃないの。ただの異世界転移系のエンタメ企画よ?」
「やめて! 企画者に言われるとめちゃくちゃ不安になるから……というか早く教えて。なにか淫魔を倒す方法とかあるんでしょ?」
俺がそう言うと、ヒルデさんは表情を暗くした。
「ヘレナのように純粋な淫魔は、最強の生命体よ。奴らが使う淫力は万能の力で奇跡すら起こすわ。私たちが使うエネルギー装置や、アニメや漫画でよく聞く魔力よりもエネルギー効率がいいし、それによってもたらされる力は強大。でも弱点は必ずあるの」
「それって……」
「淫力を枯渇させればいいわ。奴ら身体は淫力でこの世に存在しているの。だからその力を枯渇させれば強制的に淫魔界に戻せる」
「で、どうやって枯渇させれるの?」
「方法は二つあるわ。一つは絶頂させること。これはそのままの意味で性的に責めるやり方よ。でもこの方法で撃退した場合、早ければ数日で撃退したはずの淫魔が復活するなんて事例もあるからあまり推奨されないわ」
まったくふざけた退治方法だな。まぁ淫魔が相手なわけだし、それっぽいけど。
「二つ目の方法は単純よ。死ぬような損傷を与えればいいわ。奴らは淫力で傷を癒すから、こっちが攻撃しているうちに淫力が枯渇して撃退できるの。この方法は一つ目の絶頂撃退よりも効率的で、上手くいけば奴を半永久的に淫魔界に封じ込められるわ」
「つまり殺しても死ななくて、淫魔界に送り返すしかないのか……面倒な化け物だな」
淫魔のしぶとさに俺が驚いたところで、ヒルデさんの目の前に光の枠が表示された。SF映画で見るような投影ウインドウだ。
「翔くん。アンケート結果がきたわ」
「え、なんの?」
「フィーネちゃんを救うかどうかっていうアンケートよ。えっと……『黙っていれば清楚なのに口を開けばちょっぴり下ネタも得意なギャップがたまらない』いやそんなのいいから次! 『小柄で金髪で悪戯っ子な笑顔でいつもニコニコニヤニヤ……見ているだけで彼女の笑顔に救われる。あぁ……だが俺に彼女を愛す資格があるだろうか? 何人も葬ってきたこの血塗られた手で彼女を抱きしめる資格が――』重いわよ誰よこれ! 絶対軍神でしょ次! えぇ『フィーネちゃんのくるぶししゃぶり隊の我々一同より――』って変な部隊作らないで!」
なんでこんなゴミみたいなコメントばかりなのよ……、と言いながら画面をスクロールするヒルデさん。数秒して目当てのコメントを見つけたのか、表情がぱっと明るくなった。
「あ、あった。えっと『もうフィーネ嬢は十分すぎるほどの悲劇を体験した……だから最後くらい喜劇で終わってほしい』それと『彼女は処女神のような気高さがある。神の祝福を受けるに値するだろう』あとは『このままヒロインが犯されては企画の名折れ。即刻あの淫魔を排除するべき』など他にもフィーネちゃんを擁護する多数のコメントがあるわ」
「すげぇ……神様たちにこんなに支持されて……というか皆、俺と同じ処女厨なのか」
「えぇ、だって処女神とか作る連中よ? きっと今頃、陵辱シーンにアレルギー起こしてると思うわ」
「わかるわー。生意気なメスガキなら因果応報だけど、悲劇のヒロインなら絶対許されねぇし、メス堕ちセッ〇ス中毒展開はこの場合マジで胸糞だから勘弁して欲しいよな」
「私もごめんよ。企画者としてこの企画をマニアックな作品にするわけにはいかないもの」
俺とヒルデさんはお互い苦い表情で見つめ合った。そして白い軍服の胸にそっと手を当てると、何かを決心するように頷いた。
「翔くん、フィーネちゃんを救って……これが次のお題よ」
「そんなの、最初からそのつもりだ」
企画のお題なんて正直どうでもいい。忘れた頃に告げてくるし、こっちの拒否権なんてどうせない。だがそれでも、フィーネを救うという言葉には全力で応えたかった。
そう決心した俺が強く頷くと、ヒルデさんが歩み始める。
「じゃあついてきなさい。戦いの段取りを決めるから」
戦いの段取りか……一体どうやってあの淫魔を倒すんだ? 俺だけだと殴ることしかできないから触手に捕まって秒で終わりだぞ……?
白い軍服の背を負いながら俺は不安を募らせていた。
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