神界特別企画! 異世界に飛ばしてみた!~テレビの企画みたいなノリで異世界転移させられたかと思ったら急にバラエティ企画が始まったんだが……~
第63話 神界に飛ばされる翔(かける)。そこで異世界人モニタリング企画について聞かせられる
第63話 神界に飛ばされる翔(かける)。そこで異世界人モニタリング企画について聞かせられる
「ここは、え? 何? 俺今、礼拝堂にいたのにどうして……?」
外だった。
温かい陽光をいっぱいに浴び、青々と輝く綺麗な芝生。その周りは宮殿のような建物に囲まれていて、古代ギリシャや古代ローマ風の白い服を纏った人々が中庭に面した渡り廊下にちらほらと見える。
「いや、それよりフィーネだ……ッ! こんなわけの分からない場所なんていられるか!」
「落ち着きなさい」
うおぉぉぉっと叫びながら身体中に巻きついた触手をむしり取っていると、背後で澄んだ声が聞こえてきた。
思わず振り向くと、厳しい顔をした銀髪の美女が立っていた。その久しぶりに見る白い軍服に思わず駆け寄った。
「ヒルデさん! 早く戻らないとフィーネが危ないッ!」
「大丈夫よ。あそことここの時間はズレているから、向こうではまだ何も起きてないわ」
慌てふためく俺に、ヒルデさんは落ち着いた調子で答えた。
「え? なにその時間が止まってるから大丈夫的なヤツは……」
「その大丈夫的なヤツで彼女は守られてるのよ」
ヒルデさんが周りを示すように手を振るった。
「ここは神界。翔くんを助けて、落下してる時に私があなたに触れて
なんか凄いことをさらっと言っているが、訳が分からない。こんな回りくどいことをしなくてもいいだろ。
そう思うと、眉間に皺が寄った。
「なんでわざわざそんなことを……ヒルデさんは強いんでしょ? あんな淫魔なんてさくっとやっつけてくれよ……!」
「それが出来るなら苦労しないわ……でも私が戦ったら企画の趣旨が変わってくるんですもの。主役はあくまで翔くんたち。進行役の私たち
「こんな時にも企画って……フィーネが犯されようとしてるんだぞッ!? あんたには人の心がねェのかよ……!?」
「そんなの、あるに決まってるでしょ。私が冷血だったらあのまま見捨てていたわ。でもそれをしなかったのは、個人的にあの子に負い目があったから……」
俺が思わず語気を強めて非難すると、ヒルデさんは沈痛な面持ちで苦々しく口を開いた。それから綺麗な瞳で見つめ返し、きりっと視線を鋭くした。
「翔くん、この『異世界に飛ばしてみた』って企画が今でも酷い企画だと思ってる?」
「当然でしょ。俺たちの同意もなしに異世界に飛ばすし……その上、俺の場合は裸で転移。救済カードを貰っても使い方がお粗末で笑いもの。フィーネが危ないってのに助けてもくれない。こんなのクソ企画だ」
「うん、もっともな意見ね……でもね。その酷くてクソみたいな企画よりもさらにたちが悪い企画があったのよ。それが『異世界に転生させてみた』……あなたが参加している企画の前にあったものよ」
「何でそんな話を……愚痴ならあとにしてくれ。こっちは、フィーネを助ける方法を考えるので頭がいっぱいなんだ……」
神様たちが何もしてくれないのなら自分でなんとかしなくちゃならない。だがどうやって? 今戻ったところで何ができる? 思いつかない……都合よくアイデアが閃いたりしない。これじゃあ戻ってもまたヘレナに捕まって、泣きじゃくるフィーネをただ見ていることしかできないだろう。
そんな結末を想像して俺がぎりっと歯を食いしばっていると、ヒルデさんが「とりあえず聞きなさい」と言って話を続けた。
「異世界転生の企画は始まって早々に問題が生じたわ。それは転生者の記憶が引き継げなかったこと……不慮の事故や病気で亡くなった人にチャンスを与え、第二の人生を歩ませるはずだったのにこれじゃあただの異世界人モニタリング企画よ。でも記憶は定着しなくても身体は覚えていた。バグのように残って被験者を苦しめ、違和感があるのに思い出せない。そんな後遺症みたいな状態の彼らは、多くの場合なぜか悲劇に見舞われたわ。フィーネちゃんもその一人。彼女、ちょっと言動が異世界人にしてはおかしかったでしょ?」
「うん……」
確かにフィーネの言動はおかしなところがあった。
ラブホとかJKリフレとかいう異世界にはなさそうな言葉を使ったりしていたし、振る舞いも貴族というよりは気さくな後輩JKぽい感じだった……記憶のない少女と言われればすごくしっくりくる。
ヒルデさんにあらためて彼女は転生者だと教えられて、俺は自分でもビックリするほどすんなりと納得していた。
(次回に続く)
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