神界特別企画! 異世界に飛ばしてみた!~テレビの企画みたいなノリで異世界転移させられたかと思ったら急にバラエティ企画が始まったんだが……~
第57話 異世界でラブレターをゲット! だが喜んだのも束の間だった……
五章 淫魔襲来
第57話 異世界でラブレターをゲット! だが喜んだのも束の間だった……
地下ダンジョンで淫魔化した学院生に襲われて数日後、だんだん学院での生活にも慣れてきた今日この頃。俺は緊張に固まっていた。
「なん、だと……これってまさか……」
帰りのホームルームで簡単な連絡事項を聞きながら、帰りの準備でもするかー、と思って机の中を漁っていた時のことだ。
指先に薄く滑らかな感触があった。気になって引っ張り出してみると、それは手紙だった。しかもファンタジーぽく赤い蝋で手紙をとじてあって、その蝋のマークをよく見てみるとハートマークだったんだ。
間違いない。ラブレターだ。
しかし用心深い俺は警戒した。裏も表もしっかり見て、匂いも嗅いでみた。
すんすん……おお、良い匂いだ! 発情したメスの匂いだぞこれ! ぷんぷんしやがるぜ……まぁ発情したメスの匂いなんて知らないけど、少なくともこんなに良い匂いがするんだから差出人は女子だ……!
そう心の中で推理すると、俺は自信たっぷりに頷いた。
間違いない。ラブレターだ。
そうと決まればすぐにでも開いて中身を確認したいところだが、あいにく今はホームルーム中だ。俺はうずうずした気持ちを抑えつつ、放課後になるのを待った。
「繰り返しになるが、行方不明になった学院生が淫魔化する事件があった。だから安全のため、寄り道せずに帰宅するように。あと日が落ちてからの外出も控えるんだぞ」
担任のケスキネン先生がすっかりお馴染みになった注意をしてきた。地下ダンジョンの件を話してから毎日こうして帰り際に警告してくるんだ。
ケスキネン先生は三十歳前後のはずだが、最近の淫魔騒動で忙しくて眠れていないのか疲れきった表情は実年齢よりずっと老けて見える。そんなケスキネン先生は、ぱさぱさした首までの髪を掻きながら注意事項を続けた。
「いいかお前ら。この植物人間を作り出しているのは、今までの調査から
その話は、俺にとってすごく身近なことだった。
思い出しただけでもぞっとする。あの村では酷い目にあった。植物人間が何百人も襲ってきて、フィーネが青臭い粘液だらけになって、しかもあろうことかマーキングでもするようにヌルヌル体液ぶっかけ美少女貴族が追いかけてきたのだから……いや~ホントに酷い目にあった。
「奴に遭遇したら逃げろ。とにかく逃げるんだ。無理でもなんでも逃げることだけを考えろ。お前らじゃ絶対に相手にならない。もっと言えば、ヘレナどころか配下の植物人間ですら危険だ。授業で戦っているモンスターどもとはわけが違うからな」
「はいはい、わかってますよ先生。そんなヤバい奴と誰も戦ったりしませんって」
「まあねぇ。でもさ、最近は学院生の失踪もないし、もう別のところに行ったんじゃね?」
「先生、話ながーい。さっさと終わって」
「ああ、そうだな……」
楽観的なクラスの面々に、ケスキネン先生はそう言うと彼らに訴えかけるように一瞥する。
「だが、これだけは言わせてもらう。捕まれば種を植え付けられて奴らの仲間入り。モンスター相手だと最悪殺されるだけだが、奴らは倒した相手を淫魔にするんだ。淫魔になったら人間だった頃とは比べ物にならない化け物に変容させる。しかもそいつらは、異性を求めてどこまでも貪欲に俺たちを襲ってくるんだ……ここまで言って分からない奴はいつか痛い目を見ることになるだろう」
暗い声音でそこまで言うと、ケスキネン先生は「では解散。さっさと帰るんだぞ」と念を押すように告げてから廊下に出ていった。
クラスメイトたちは帰り支度を済ませ、続々と廊下に出て行く。みんな口ではああ言っていても十分危機感があるようで学院に残ったりせず素直に下校していった。
だが俺は椅子に座ったまま動けないでいた。
いつ襲ってくるかわからない淫魔より、ラブレターの方が重要だ……よ、よし開けるぞ。
恐る恐る手紙の蝋を破り、中身を出した。
「ん……?」
そして脱力した。
「よ、読めねぇ……」
(次回に続く)
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