神界特別企画! 異世界に飛ばしてみた!~テレビの企画みたいなノリで異世界転移させられたかと思ったら急にバラエティ企画が始まったんだが……~
第48話 美少女貴族のもみもみは需要がるけど、キ〇タマ係は需要ないよ……
第48話 美少女貴族のもみもみは需要がるけど、キ〇タマ係は需要ないよ……
「くそっ……なんで俺だけ……」
薄暗い地下室に俺の声が虚しく溶け消えた。
報告会から一日経った今日。昼休みを知らせるベルが鳴ったところで俺はフィーネに捕まって礼拝堂地下に連行されていた。
ちなみに他のメンバーはというと、ヒルデさんはクラスの連中に連れられて食堂へ、拓美先輩は食堂でコックの仕事中、正平にいたっては危険を察知したように気づいたら消えていた。おそらく今頃セイラちゃん抱き枕と一緒に購買で買ったパンでも食べているんだろう。
だから今ここにいるのは、俺を除けばフィーネとユーリさんだけだ。
俺は壁際に背を預けると、ほどよく空腹になったお腹をさすった。
「なぁフィーネ。先にご飯にしない? 俺腹減ってきたんだけど……」
「すぐに済みますから我慢してください。それよりちゃんと見ててくださいよ。私今無防備なんで」
古びた石の床に四つん這いになってもみもみを継続中のフィーネ。探索系の魔法を使っているらしく、フィーネの小さな両手は淡く光っていて、床についたか細い線のような汚れに向かってマッサージでもするみたいにもみもみしている。
なんという滑稽な光景だろうか。魔法ならもっとソナーでもうつように目に見えない波動的なものを飛ばして探すのをイメージしていたが、現実はもっと地味らしい。子供が珍しい石を見つけようと夢中になっている。そんな感じの探索魔法だった。
とはいえあらためて地下室を見回すと、結構広い。四方を石の壁に囲まれた長方形の広間。じめじめした空間には隅の方にいくつか木箱が置かれているだけで、それ以外にあるモノといえば壁にかけられたランタンと奥の部屋に続く扉くらい。礼拝堂地下と聞いて漠然と物置のような場所をイメージしていたが、実際に来て見ると何かの待合室といった方がしっくりくる。
「ここって何に使う場所なんだ? ほとんど何もないけど……」
俺がそう言うと、木箱を調べる片手間にユーリさんが口を開く。
「訓練用ダンジョンの待合室です。この先は墳墓をモデルにした造りで、夏になると実技授業で使われます。まぁ、今はオフシーズンなので滅多に使われませんが」
「夏に、墳墓って……墓場だよな? なんか肝試しみたいじゃん。いいなー」
俺はウキウキした笑みを返した。墓場ダンジョンで夏の暑さを吹き飛ばそうって企画は想像するだけで楽しそうだ。しかもそれが学校の授業とか、こんな粋な計らいはそうそうない。ファンタジーならではのイベントだ。
「ちょっと先輩。ちゃんと見張ってくれてます?」
「おう、バッチリ見えてるぞー。お前が床に向かってJKリフレしてるところがなー」
「そんないかがわしいことしてないですよ。普通にマッサージって言ってくれません?」
「JKリフレはいかがわしくないぞ。若い女の子とお話したり、軽くもみもみしてもらったりする健全な非抜き風俗店で――つーかお前、その反応……なんでいかがわしく思ったんだ?」
「あれ? なんでだろう……」
「なにしらばっくれてんだよ。あるんだろ? この世界にも似たような店が。今度紹介してくれよ。俺も若い子に癒されたいぃー」
四つん這いのまま何かを思い出そうとするみたいに古びた天井を仰ぐフィーネに、俺はささやかな欲望をはきつけた。
「癒しですか……先輩はわりと自由に生きてるように見えるのに、ストレスとか溜まるんだー」
「当然だろ。人間、誰でもストレスを抱えて生きているものだ。ストレスと向き合い、趣味とか遊びとか、異性との触れ合いとかで癒されてストレスを発散する。それが健康的に生きていく上で必要な行為だろ」
「へー」
「こいつ、全然関心がないな。まぁストレスフリーって言うならお前の方がそれらしいけどな」
完全に聞き流す構えのフィーネは、再び視線を床に落としてもみもみし始めた。気になったら積極的に食いついてきて、飽きたらぽいっと捨てる勝手気ままな猫みたいな少女。そんなフィーネを見ていると、つい羨ましく思ってしまう。
「いいよなフィーネは。ヒルデさんみたいなおっぱい係がいて。俺も手軽に揉めるおっぱいの一つや二つ欲しいな……いや、俺じゃなくても欲しいだろ。これは全世界の男たちの望み、願望、そして夢の結晶なのだから……!」
「もう、ぎゃーぎゃーうるさいなぁ。そんなに揉みたかったら自分のタマタマでも揉んでてください。サイズは小ぶりでもおっぱいと同じで二つあるし、ちょうどいいでしょ」
「キン〇マ係りは需要ないよ……」
しょぼくれた声で言いながら、俺はぐったりと肩を落とした。
それにしても妙な響きだ。キン〇マ係って。自分で言って笑えてくる。いやそれだけじゃないか、下ネタに下ネタをかぶせてくるようなフィーネの気さくさがあるから余計に面白いのか……生意気でわがままで、妹とそう変らない歳だから軽く扱ってしまうけど、この下ネタもいける後輩感。正直悪くない。
俺はそう思うと、黙ってキン〇マ握ってろ発言も優しい気持ちで聞き流せた。
(次回に続く)
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