第34話  ヒロインが触手責めに!?(全年齢バージョン)

「ッ……!?」


 フィーネが息を呑んだ瞬間、彼女の足元に数本の触手が突き出し、一瞬で伸びてきて手足の自由を奪った。ばっと小柄な身体を持ち上げられ、中空に固定される金髪美少女貴族。


「これは思わぬアクシデントです! 植物人間の触手が地面を潜って炎の壁をかわし、フィーネちゃんを襲ったァァァ!」

「嫌……ッ! これ、振りほどけないッ!」


 フィーネがもがけばもがくほど深く食い込み、黒いマントを引きちぎって緑色の触手が軍服ワンピースの上を這い回る。赤い布越しにそこそこある胸の輪郭をなぞるように動き、服の隙間からもぐりこんで胸の谷間の中をうねうねする。足を縛り付けていた触手が白磁のようにすべらかな脛を舐め、さらにもう一本が太ももへと伸びた。そして精一杯抵抗するように閉じていた股が、ぐぎぎっと開かれる。

 ついにフィーネを守るものは、薄いショーツと申し訳程度に股間を隠した赤いスカートだけになった。


「うぅ……ッ! そんなにっ、動いちゃ、ダメ……!」

「さすが淫魔! 追い詰められてなお触手プレイを忘れないスケベ生物! これには神々も固唾をのんで見守っているのではないでしょうか」


 触手に責められているフィーネからヒルデさんは目をそらし、虚空に目をやる。そこにはドローンが飛んでいるのか、男たちの声が聞こえてきた。


『戦いの中で不意に現れるエロ……くふふっ、ぞくぞくしますなぁ』

『分かりますぞ、その気持ち。さっきまで一緒に戦っていた少女が突然犯される。それによりもたらされる驚きと不快感と性的欲求が一気に駆け巡るこの感覚! まさに麻薬的な快楽ですぞ!』

『いや~分かってないですね、二人とも』

『なんだと!?』

『ほう、そこまで言うのなら我々を納得させられるだけの根拠があるのだろうな?』

『考えてもみてください。普段生意気な美少女貴族が触手で【わからせ】られているんですよ? その付加価値も追加して楽しまないと損じゃないですか』

『『確かに……ッ!』』

「いや、アンタら鬼畜すぎるだろ……ッ!」


 俺が神々のコメントにツッコんでいる間も、触手は身体を這い回って「嫌……ッ! 放して……ッ!」と首を振るフィーネの股に慈悲もなく突っ込まれていく。


「ひィッ、ううッ!」


 しかしここで不思議なことが起こった。あれだけ美少女貴族の身体を堪能し、股間のメインディッシュをいただこうとしていた触手が、少女の割れ目を目前としてその猛るイチモツを引いた。


「はっ! 残念でした! 貞操帯をつけてるに決まってるでしょうがッ!」


 なんと勇ましいことだろうか。身体の自由を奪われ、触手に犯されるという状況で食ってかかるフィーネ。そりゃ確かに淫らな魔の者と戦うには必須アイテムだろうが、そこでふと俺の脳裏に触手の声が届いた。


 下の口がダメなら、上の口があるじゃない。


 その言葉を肯定するように触手の先端がフィーネの形の良い唇に狙いを定め、しゅっと放たれる。


「ガシュ……ッ!」


 迷いなく噛みついた。怒りに燃える表情でフィーネが牙をむいている。


「ここで反撃です! フィーネちゃんの噛みつき攻撃でさすがの触手も一時退却! どろどろした体液を撒き散らしながら逃げ出しました」


 実況を聞きながら体液が軍服ワンピースにかかるのを目にすると、俺は唇をわなわなと震わせた。


「うわっ! こいつ先っぽから白いのビュービュー出すタイプの触手だ……!」

「ヤられてたまるか! 私は、ビフレスト伯爵! 誇り高き女王陛下の番犬! よく聞け淫魔ども、迫り来る触手はすべてこの牙のもとに断罪される! 食い千切られたい者からかかって来い!」

「勇ましく吠える女王の番犬! その勇猛な態度はとても触手に襲われているものではありません! ですが、噛み付いた際に撒き散らされた白い液体が顔や髪にクリーンヒット! なんというぶっかけ祭りでしょうか!」


 完全に顔面ぶっかけ状態だ。実況も相まって完全に犯されている最中にしか見えない。


 は、早くフィーネを助けてやらないと……!


 そう思って拓美先輩にばっと向き直った。だが俺が何か言う前に、機関銃の激しい銃声が言葉を遮った。


「左側面から敵集団ッ! 俺がおさえる! 君たちはフィーネ嬢を!」


 炎の壁を迂回して家屋脇の小さな通路から兵士たちが流れ込んでいた。それを短連射で押しとどめ、拓美先輩が時間を稼いでくれる。

 だが一分も持たないだろう。すぐに弾が切れる。またリロードのタイミングで敵が一気に押し寄せてくる未来が容易に想像できた。

 拓美先輩には頼れない。ヒルデさんも「触手をすべて噛み切れるのか、それともフィーネちゃんは触手に負けてしまうのか、緊迫した状況が続いています!」と実況を継続中。


 だったら俺が行くしかない!


 風霊銃の銃口。そこについた銃剣を構え、俺は突撃した。


「うぉおおおおおおおおおお――ひィぎッ!」

「あっさり触手に叩かれ、地面に転がる! 翔くんなすすべなし!」


 叩かれた肩の痛みに「うぅ……っ」と渋面を作った。

 無理だ。勝てない。助けられない。

 的も小さいし、動きも素早い。不規則にうねる植物の鞭。まるで切れる気がしない。



(次回に続く)

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