第20話 冒険の始まり、そして高度な技術力をもつ神々の存在。彼らは一体なに者なのか……?

「くぅぅぅ……マジでこれから冒険が始まるのか」


 長い銀髪がなびく背を追いながら、俺はこれから待ち受けているファンタジーな展開を思って、期待と不安の入り混じった息をふっと吐いていた。

 装備は腰蓑に大きめのブランケット。武器は先端を尖らせただけの頼りない槍に石ナイフ。アイテムはペンに変化するカードと発動するとなぜか殴られるフックのカード。それと最後に白紙の救済カードがあるのみ。


 なかなか異色の装いじゃないか? 初期装備としてはあまりに頼りないが、定番の旅人の服に兵士の剣であっても困る。剣なんて使ったどころか持ったことすらないし、それで素人の俺に戦えって言われてもね……いや、それでももちろん服はありがたいが……。

 腰蓑の隙間からスースーと入ってくる風に股間を冷やしつつそんなことを考えていると、ふと思うことがあった。


「そういえば、俺があそこでキャンプしてるってよく分かったよな。俺、結構がむしゃらに走ってたのに。しかも夜の森で」

「あなたの行動はすべてドローンで把握しているわ」


 ヒルデさんが森の一角に視線を向ける。そこはやはり草木があるだけで変わりない風景。だが次の瞬間、空気が歪み、ラグビーボール型のドローンが姿を現した。


「熱探知に音響探知、それに生命探知と動体探知を合わせたセンサーとレーダーで対象を捕捉し、心拍も脳波もリアルタイムでモニタリングしているわ。これによってたとえ翔くんが地の果てまで逃げても余裕で追跡できるの」

「無駄にハイテク……!?」


 SF映画に出てきそうなスペックだった。

 ヒルデさんの格好も白いジャケットで軍服っぽいデザインだし、さっきのスタジオもそうだがこのドローンもファンタジーな雰囲気をぶち壊している。

 まるでVRゲームのような設定感もりもりな感じ。けれど臨場感溢れる鳥の鳴き声も、身体を撫でる風も、苔や土を踏みしめる感覚も現実そのもの。


 明らかにこれは現実。だとすると、空間を開く技術やハイテクドローンを持つ彼ら、神々は一体何者なのだろうか? 高度なテクノロジーを備えたエイリアンなんていうSFチックな存在なのか? だがモザイクの妖精とかいうふざけた魔法みたいな技術(?)も開発しているくらいだ。きっと暇を持て余した愉快な種族なのだろう。

 そういったことを歩きながら聞いてみると、ヒルデさんはちょっと得意げな感じで口を開いた。


「ハイテクで当然。私たちは高次元に住む観測者よ。人類が生まれる前から存在し、これまであなたたちを見守ってきた。とても高貴な存在」

「はぁ……高貴な存在ねぇ。さぞ長生きでプライドが高そうな連中なんだろうな」

「ええそう。でも同時に暇だから神々も人間も怪物も巻き込んだ全種族で終末戦争を始めようとするようなヤバい奴らよ。退屈で退屈で仕方ない老害の集まり。それが神々の本質」


 なんとなくだがヤバい連中なのは伝わった。

 ヒルデさんは戦争を起こさせないように奮闘する、いわば人間の味方なのだろうが、そんなぶっ飛んだ奴らが娯楽として見ているんだ。これは失敗できない。グダグダと異世界サバイバルなんてしている場合じゃなかった。



(次回に続く)

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