第6話 ついに始まる合コン! ヤバい可愛い子しかいない!?
翌日の午後七時前。繁華街のレストランの個室で俺たちは肩を寄せ合い、合コンでの注意事項を確認していた。
「いいかい? 相手がかぶらないように狙った女の子にはテーブルに置いた箸を向けて俺たちに知らせるんだぞ」
そう忠告してきたのは、俺のひとつ上の先輩だった。テーブルに肘を突き、ゆったり構えた姿は慣れた感じの余裕がある。
暖色の照明で映える金髪のゆるいパーマ。整った顔立ちにすらりとした長身はモデル体型というハイスペックな容姿。それにカジュアルなジャケットにネイビーなズボンをあわせた装いは、彼の見た目の派手さと相まってチャラさと誠実さをちょうどいい塩梅でまとめていた。
このイケメンは
「それと、どうしてもかぶった場合は、それとなく勝敗をつけて穏便にすませるように。喧嘩して合コンを台無しにするんじゃないぞ」
紳士協定の補足をしたところで、拓美先輩は仏頂面の俺たちを見てやれやれと首を振った。
「おいおい、今からそんな緊張してたら持たないぞ」
「緊張しないなんて無理ですよ。これから知らない女子とエンカウントするんだから……」
「敵に遭遇するみたいに言うなよ……」
ガチガチに固まった俺に苦笑すると、拓美先輩は壁際の席にいるもう一人を見やった。
「ほら君も、肩の力抜けって。そんな顔だと女の子たちが気まずくなるだろ」
「勘違いしないでくださいよ先輩。俺は
「いやむしろその方が、質が悪いじゃないか。せっかくなんだし楽しもうよ」
「別に楽しむためにきたわけじゃありませんよ」
拓美先輩を軽くあしらったこいつは、
ボタンを三つ開けたシャツの胸元。そこから覗くピンク色の頭は、大きなお友達に人気の『魔法少女セイラちゃん』のプリントTシャツだ。
普段クールぶってるが、合コンでもアニメTシャツを着てくるようなガチっぷり。まさにリアルを捨てた戦士だ。
というか本当に、合コンでそのTシャツはない。女子ウケ最悪だ。
本日、俺をふくめた男三人に女三人での合コン。女性陣はまだ来ていないが、それにしてもなんで正平がいるんだ? 全然乗り気じゃないのに。
そこのところを訊くと、拓美先輩は得意げに笑った。
「佐久間くんって顔だけなら凄いイケメンだろ。だから彼の写真見せたら女の子たちの食いつきがいいわけ。いや~ホントに彼が来てくれてよかった」
「でもよくOKしましたね。リアルなんてクソゲーだとか言って絶対来そうにないのに」
「魔法少女セイラちゃんの限定タペストリーで釣ったんだよ」
「あーなるほど……」
「ふっ……笑いたくば笑うがいい。俺は報酬さえ貰えれば文句ないからな」
笑ってるのはお前だろうに。拓美先輩がまいた餌に食いついたにしてはキザったらしくて態度も上からだが、自分が好きなモノと引き換えに来たくもない合コンにくる姿勢は賞賛に値する。
嫌々ながらも、彼女が欲しいってだけで来た俺とは大違いだ。
彼女は欲しい。でも合コンは嫌。そんなワガママ自分と正平の格差にそっと落胆していると、ドアが開かれた。
「お待たせしました。今日はよろしくお願いします」
モダンな造りの個室に落ち着いた感じの声が響いた。
「な……!?」
開いた口が塞がらなかった。
目を見張ったまま固まった俺の視線の先には、ドア前で微笑む美女の姿があった。
半袖のブラウスに落ち着いた色合いのスカート。豊満な谷間をわけるように掛けた小さなショルダーバッグという全体的に清楚な出で立ち。そんな彼女は、腰までの長い銀髪に綺麗な顔は全体的に色素が薄い。明らかに外国人だ。北欧系だろうか?
いや、それより拓美先輩、アンタとんでもない美人連れてきましたね……!?
ちょっとはこっちのスペックを考えてほしい。どっからどう見ても釣り合わない。このままじゃ、例えるなら……えっと、ブランド物の高級タオルに恋するぞうきんになっちまうだろう。身のほどを知れって話だ。
そう思って拓美先輩を見やるが、
「えっと……んん?」
なぜか拓美先輩も動揺していた。
(次回に続く)
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