第143話 呼び出し
休みの日、サクラはミカゲに呼び出され、門の前でミカゲが迎えに来るのを待っていた。
「そう言えば、最近ユウリ、元気だろうか」
あれ以来何かある以外は3日に一度連絡を取ることにしていた。だがここ2週間ほど連絡がない。通信するには、基本ユウリから話しかけてくれなければ話せない。ナギ専用のため通信をするのに魔力が必要らしく、サクラからでは通信が出来ないでいたのだ。
「ユウリ忙しいんだろうな」
ユウリの仕事とナギの探索をしているため多忙なんだろう。
そこへミカゲの車がやって来た。サクラは車の助手席に乗り込む。
「悪いな」
「いいえ。どこに行くのですか?」
「まあ来れば分かる。それに何をするかは着いてからだ」
そして車が向かった先は皇居だった。
「先生、皇居……ですか?」
どういうことかとサクラは不安な顔を見せるが、ミカゲはただ微笑むだけだ。
車を玄関に止め、そのまま中へと入っていく。車はそのままでいいのかと気になりサクラは振り向くが、そこにいた者達はみなミカゲに頭を下げているだけだった。
どういうことかと思うがミカゲに急かされサクラはそのまま着いていく。
そして奥まで来ると、扉があり、軍服を着た警備員がミカゲに頭を下げると扉を開ける。中に入ると迷路のような長い廊下をサクラは周りをキョロキョロしながら道に迷わず前を歩くミカゲに付いて行く。そして疑問を口にする。
「先生、なんかここのこと知ってるみたい。それにぜんぜん人がいないですね」
扉を通った時から誰1人とすれ違わないのだ。
そう言いながらたまにいるやはり軍服を着た警備の者が敬礼姿勢をミカゲにしていることに首を傾げる。
「ここはプライベートな場所だ。このエリアは皇族と一部の者しか入れないからな」
「え?」
じゃあなぜミカゲと自分は入れているのか? そんな疑問を浮かべていると、ミカゲが唐突に止まり振り向く。
「あーそうか。サクラは知らないか。俺、皇族だから」
「はあ⁉」
サクラは立ち止まり素っ頓狂な声を上げた。
「俺はシンメイの兄だ」
サクラの目が点になる。
――今、凄いこと、さらっと言いましたよね?
「ナギもソラもお前の親父もフジもアヤメも知ってるぞ」
「ええええ!」
寝耳に水だ。あまりの驚きに放心状態になっていると、いつの間にか奥へと廊下を歩いて行っていたミカゲが振り向きサクラを呼ぶ。
「サクラ! 早く来い! おいてくぞ!」
「あ、は、はい!」
慌ててミカゲの後を追う。
「先生、めちゃくちゃ偉い人ですね」
「俺は影だ。聞いたことあるだろ。双子の皇帝の1人は影だと」
「はい」
「だから偉くねえよ」
――いやいや、この場所に普通に入れるし、それに会う人全員先生に深々と頭下げてたから偉いでしょ。
すると一番奥の豪華な扉が見えてきた。ミカゲはその前に来ると、扉をノックし、「俺だ、入るぞ」と言って扉を開ける。中に入るとシンメイとユウケイ、ヤマト、レンジがいた。あまりの豪華なメンバーにサクラは尻込みしていると、シンメイが笑顔で言う。
「いらっしゃいサクラさん」
そこではっとしてサクラも頭を下げる。
「おひさしぶりです。陛下」
するとレンジが驚き言う。
「陛下、九條サクラを名前で呼ぶんだな」
皇帝は基本皇族以外は名前で呼ばないのが普通だ。
「サクラさんには私の言霊は効かないからね」
「ああ、そういうことね」
「全員揃ったね」
シンメイが言うとヤマトが訊ねる。
「陛下、何をするの?」
実はミカゲ以外の者には、内容を聞かされずに皇帝命令で今この場所に強制的に集められていた。
「本当に。私は会議の途中で呼び出されたんですよ。今日の日程すべてキャンセルです。それにサクラちゃんまで呼び出して何をなさるおつもりですか?」
ユウケイも文句を言う。皇帝に文句を言えるのは十家門ではユウケイだけだろう。
「ナギがいないからって慰め会とかじゃないですよね?」
胡乱な目を向けるユウケイ達に、シンメイは「違う違う」と手をパタパタ左右に振りながら否定する。
「今からみんなで『
「はあ?」
ユウケイ、ヤマト、レンジは素っ頓狂な声を上げ、ミカゲは苦笑し、サクラは首を傾げた。
「なんで?」
「また
ユウケイが言う。
「違うよ。迎えに行くんだ。ナギを」
「!」
みな目を見開き驚く。
「ナギ?」
サクラの声にシンメイは笑顔で頷く。
「そうだよ。今日夢で
「夢かよ。信憑性にかけるなー。 夢でしょ。もしかしたらただの夢じゃないんすか?」
レンジが半信半疑で言う。
「普通そう思うよな。だが俺も見たんだよな」
そう言ったのはミカゲだ。
「兄貴も?」
「ああ」
「それは大いに信憑性がありますね」
ヤマトが笑顔で言う。だがそこである問題が浮かぶ。
「サクラちゃんも連れて行く気ですか?」
ユウケイが怪訝な顔をして訊く。
「うん。どうもサクラさんのピアスが必要だそうだ」
するとサクラはハッとし左耳を見せる。
「これですか?」
すると皆サクラのピアスを覗き込む。サクラと言えば、皇族達が顔を近づけてきたため緊張で固まってしまい動けず硬直する。
「へえ。凄い神気だね」
「ほんとだ。こんな小さいのに凄い神気を感じる」
「でも近くで感じるのに離れるとまったく感じなくなるな。不思議だな」
ミカゲが言うとみな頷く。
「サクラ、これどうしたんだ?」
ミカゲの問いにサクラは、
「ナギにもらいました。なんか仕事のお礼にもらったって言ってました」
「片方だけか?」
するとサクラは顔を赤らめ、小さな声で言う。
「いえ……もう片方は、ナギの耳に……」
耳まで赤くして下を向いて言うサクラに、ミカゲ達は片方の口角を上げる。
「なるほど」
「ナギもやるねー」
「あいつも男だったか」
とよからぬ事を考えている表情をする大人達にサクラは慌てて言う。
「ち、違うんです。最初ナギは何かわからないと言っていて、両方くれたんですが、片方しか着かなくて。で、壊れているのかわからなかったので、ナギにつけてみたら着いたので」
それを聞いたミカゲ達は笑顔を消す。
「ってことは、
「そのようだね」
ミカゲの言葉にヤマトも同感だと頷く。
そこでユウケイが訊く。
「で、陛下。ナギを迎えに行くのはわかりました。でもなぜ私達が必要なんですか? このメンバー、嫌な予感がするんですが?」
するとシンメイは満面な笑顔で言う。
「さすが察しがいいねユウケイ」
「もしかしてまたか?」
レンジも嫌そうな顔を向ける。
「そう。まただ」
ミカゲが嘆息しながら言い、シンメイが言葉を繋ぐ。
「でも今回は少し違うよ。その説明するからサクラさんもよく聞いてね」
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