第142話 帰還への道



 次の日からナギは、消耗した体力と魔力の回復、そしてディークとエリックから何か不便はないか、何かやり残したことはないかなどを話し合った。


「ほとんどなさそうだな」


 ナギの言葉に2人は頷く。


「ですね。ナギ様よりぜんぜん頼りにならないユウリ様ですが、こう見るとまったく問題なくやれてますね」

「反対に、坊ちゃんよりも国の改革はうまくやってくれてますしね」


 エーリックは笑う。


「じゃあこっちの問題はないな。問題は魔法陣だけか」


 それにはディークとエーリックが首を傾げる。


「どういうことですか?」

「まず転移魔法には縛りが必須だ。その縛り――向こうの世界の者と入れ替わることで転移魔法が出来た。だが今回は違う。俺はもうあちらの世界の人間だ。同じ転移魔法をしようとすると、あちらの世界にいる違う世界の者と入れ替わらなくてはならない」


 そこでディークが気付く。


「向こうの世界にいる違う世界の者じゃないとだめだということですか?」

「ああ」


 そうなると無理な話だ。


「じゃあナギ様は向こうの世界に帰れないということですか?」


 ナギは考える。


「今のままだとそうなるが、天陽大神そらのひなたのおおかみがそんな中途半端な方法をやれと言うとは思えない。なにかしら方法があるはずだ」


 現時点での異世界への移動は、前回入れ替わるという条件での転移魔法しか方法がなかった。今回その方法が無理のため、違う方法――異世界への移動魔法になるのだが、それには問題があった。


「移動魔法陣しか方法がないが、それだとあちら側に魔法陣が展開できない」


 移動魔法は、展開者が出入り口に魔法陣を展開して移動する。しかし今回は、もう作られた魔法陣が向こうの世界の場所に魔法陣を作ることになる。異世界の狭間にナギの一部の玉を通して向こうの世界へは魔力は届くが――。


「届いたとしてもむこうの世界で魔法陣を展開するのは難しいだろう」

「それは魔力が足りないということですか?」

「ああ。あっちは魔力がない世界だ。そしてこちらが魔法陣に貯めれる魔力も限られている。今の魔法技術では出来ない」


 前回は天陽大神そらのひなたのおおかみが力を貸してくれて異世界の狭間に飛ばしてくれた。黒銀くろがねを剥がすためでもあるが、こちらの世界までは異世界の狭間のせいで天陽大神そらのひなたのおおかみの力も異世界の狭間までが限度だったのだろう。


「どちらにせよ、あっちの世界に帰るにはあの魔法陣しかない。まずあの魔法陣を移動魔法陣に書き換え完成させる」

「はい」



 それから3日後、ナギも魔力が回復したため、ユウリと一緒に魔力を魔法陣に注ぎ続けた。


 そして1週間後、魔法陣が完成した。


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