第140話 ナギ、魔法世界に帰還
「くるよ!」
魔法陣が凄い光りを放つ。そして人の姿が形が徐々に形成された。それを見たディークは目を見開き、そして涙が流れる。
「……ナギ様……」
ユウリも笑顔で言う。
「ナギ」
そして呼ばれたナギは笑顔で言った。
「遅いぞユウリ」
するとドアが凄い勢いで開かれた。そこにはエーリックがいた。ナギの魔力を感知してきたようだ。そしてナギを見て笑顔を見せる。
「ナギ殿下。いや、坊ちゃん、酷いじゃないですか。置いていくなんて」
「悪いな、エーリック」
そう言ってからナギはユウリの前まで来ると、手を出して言う。
「会うのは初めてか。初めましてユウリ。あ、でも夢で会ってるか」
ユウリもナギの手を握り笑う。
「うん。そうだね。初めましてナギ。やはり僕よりぜんぜん背が高いや」
見あげながら苦笑する。ナギとユウリでは背が15センチ違っていた。ナギはふっと笑うと、ディークとエーリックの前に行く。すると2人はその場に跪く。
「ナギ様、お久しぶりです」
「9ヶ月ぶりかディーク」
「はい。お元気そうでなによりです」
「ああ。ユウリをありがとう」
「いえ」
ディークはそれ以上言えなかった。やはり文句を言っていたが、ディークにとってナギは一生使える主君であり、唯一無二の存在なのだとユウリは改めて思い微笑む。
――よかったねディーク。
「エーリックもすまなかったな」
「いいえ、坊ちゃん」
それにはナギは目を細める。
「なんでまた『坊ちゃん』なんだ?」
ナギが剣を習うと言ってからはずっと『殿下』と呼んでいたのだ。
「そりゃあそうですよ。今の殿下はユウリ様だ。坊ちゃんはもう殿下じゃねえ」
そう言いながらエーリックは笑う。
「確かにそうだが、坊ちゃんと呼ばれるのもなー」
「いいや。坊ちゃんは坊ちゃんだ。私が坊ちゃんと呼べるただ1人の人物なんでね」
「そうか。確かにそうだな」
ナギも笑顔を見せる。
「2人とも立ってくれ。もう俺はここの主じゃない」
2人は立ち上がる。
「そうですが、そんなこと言わないでくだせい。私にとってもディークにとっても坊ちゃんは唯一無二の存在なんですから。なあディークさんよ」
エーリックはディークにふると、ディークはいつのまにか涙を吹き、いつものディークに戻っていた。
「いいえ。もうナギ様は元主です! ですから元主に言わさせてもらいます!」
ディークはナギの目の前まで足を進めると、ナギの顔に指を指し言う。
「あなたはどうしていつもこうなんですか!」
「え?」
「いつもいつもそうです! こっちの都合も何も考えずに行動なさる! ユウリ殿下もそうだ! なんですか! この出来損ないのヘタレは!」
そう言ってナギを指していた人差し指をユウリに向けて叫ぶ。
「え? ぼ、僕? ってか出来損ないのヘタレって……」
「最初どれだけ大変だったか知ってますか! この人は1人じゃ何もできないダメ人間だったんですよ!」
「うー……。そうだけど、そんなにはっきり言わなくても……」
ユウリは涙をにじませながら項垂れると、エーリックが寄ってきてユウリの肩を抱き「まあまあ」と慰める。
「ここまで来るのにどれだけ大変だったか!」
「あ、ああ……すまない。だがユウリが来ることまでは俺ではどうしようもなくてだな……」
ナギはタジタジになりながら言い訳をする。
「そうです! わかってます! 本当にユウリ様は大変だったんです!」
それにはユウリは「え? 僕?」と声を上げる。
「ナギ様と違ってユウリ様はいきなり知らない世界にこられ、ヘタレで出来損ないの性格で、体力、体感も何もダメだったため、一般の人よりも大変苦労されたんです!」
ユウリは目を細めて呟く。
「なんかぜんぜん援護しているようにはまったく見えないんだけど……。反対にとても落ち込むんだけど……」
「まあまあ。ディークさんはあれでも殿下を褒めてるんですよ」
エーリックは苦笑しながらユウリを宥める。
「確かにユウリは出来損ないの引き籠もりヘタレ人間だったからなー。俺も驚いた」
「ナギまで……」
ナギの止めの一発でユウリはがくっと肩を落とし落ち込む。
「殿下、ご愁傷様ですな」
もうエーリックでもどうしようも出来ずに諦めた。
「ですが、ここまで立派に成長されました」
「ああ。驚いた」
そう言って2人はユウリを見る。
「え? あ、そう?」
いきなり自分に注目するナギとディークに、ユウリはどうすればいいか分からずに戸惑う。
「今回もユウリのおかげで俺は助かったしな」
そう言ってナギは笑顔を見せるが、すぐにムッとして言う。
「それにしても遅いぞユウリ。いつまでかかってたんだ」
それに応えたのはディークだ。
「3ヶ月です」
「どれだけ待たせるんだ」
今度はユウリに矛先が向き驚きながら文句を言う。
「しょうがないだろ。神気だとは思わなかったんだからさ。こういうことは先に教えておいてくれよ」
するとナギは困った表情を見せて笑う。
「いや、するつもりはなかったんだ。急遽そうなったというか、強制的にそうさせられたんだよ」
ナギは
「
「でもそれだと肉体は消えることもわかっていましたよね?」
ディークが訊ねる。
「ああ。通信するために俺は転移する時にあることをして、そうなることを経験済みだった」
ユウリとの通信手段を有効にするため、ナギは向こうの世界に転移する時に、一緒にナギの髪の毛と爪の一部をガラス玉に入れ、1つは元いた世界に置き、もう1つはナギが持ち、そして最後の1つはナギの魔法で通信に使われる魔力を感知し相手のガラス玉へと流すようにし異空間の狭間に残るようにした。
案の定異空間の狭間に残ったガラス玉は形を無くし、魔力の効力だけがその場に留まった。
そして通信する度に魔力が異世界の狭間を通り、ガラス玉の魔力に吸い寄せられ、相手の世界のガラス玉へと行き、通信が出来るようになったのだった。
「効力が効いたままだということは通信で実証済み。だとすれば、実体は消えるが、ただ消えているだけでその場にずっとあるとな。転移魔法陣と一緒だともな。だから相手側に出れば体は元に構築されると確信した」
「でもなぜ、その
ナギの中にいるのだ。ならば一緒に
「それには理由が2つあってな。1つは俺が魔法で異空間の狭間に移動したんじゃないんだ」
「え? どういうことですか?」
話からナギが魔法でやったのだと思っていたユウリ達は驚く。
「これだ」
そう言ってナギは髪をかき上げ左耳を出す。そこにはピアスがあった。
「ピアス?」
ユウリが言う。
「ああ。これは
「え?
ユウリが驚き声を荒げる。
「ああ」
「ユウリ様、
ディークが訊ねる。
「僕がいた国を作った神様で、皇帝の始祖なんだ。まさかその神様からプレゼントをもらったなんて信じられない」
ユウリは驚きが隠せない。
「
ナギはその時のことを話し始めた。
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