第131話 皇居にて
ナギとレンジが次に現れた場所はシンメイがいる皇居の門の前だった。
「おい! 皇居じゃねえか」
レンジは驚き、そして嘆息しながら訊ねる。
「で、アポは?」
皇居など、来てすぐ入れる場所ではない。色々と段取りがいるのだ。
「取ってるように見えるか?」
「いいや」
レンジは肩眉を上げ笑う。
「まさかと思うが、俺にどうにかしろと言ってるか?」
「俺はただの学生です。軍のトップの特殊部隊の偉大な影山隊長なら、なんとかしてくれますよね?」
「ったく、心にもないこと言いやがって、クソガキが」
頭を掻きながら文句を言うと、レンジは門の警備員に身分証を見せて話す。しばらくすると、許可が出て中に入れた。
「さすが特殊部隊隊長だな」
「うるせい。特殊部隊というより皇族の方で入れた感じだ」
ナギとレンジはシンメイの部屋へと案内された。
「来たねナギ、レンジ」
「なんだ、知ってるのかよ」
「だから簡単に入れただろ?」
「確かにそうだが……」
そこでナギが言う。
「じゃあ陛下、分かってますね」
「わかってるよ。兄さんが力を解放したということは、非常事態だ。そしてその後忽然と妖力が消えたということは、あの場所に行ったってことだよね」
「はい」
二人のやり取りを聞いていたレンジが眉を潜め口を挟む。
「何の話だ?」
「レンジにはサクラを助けるために手伝ってもらう」
ナギはレンジに今からやろうとしていることを説明した。レンジは驚きながらも黙ってナギの話を最後まで聞いていた。
ナギが説明した内容は、
「そんなこと出来るのか?」
レンジは信じれないと声を上げる。
「ああ。理論的には出来る」
「そうじゃねえ。九條サクラは
「大丈夫だ」
「なぜ言い切れる」
「サクラが
「どういうことだい?」
シンメイもその理由は知らないため眉根を寄せ訊いてきた。
「あいつは
「なんだと!」
「本当かい?」
それにはシンメイは驚き声を張り上げる。なぜそんなに驚くのか分からないナギは戸惑いながら返事をする。
「は、はい。だからサクラは
「確かにそうだね。
「……え?」
今度はナギの方が目を瞠る。
――そんな説明聞いてないぞ。
「もし、拒否されたらどうなるんです?」
それにはレンジが応える。
「一度見たことあるが、付けたところが爛れ、相当な苦しみでのたうち周り意識を失ってたなー」
「……」
――なんちゅうもん渡すんだ、
「まあよかったな。何もなくて。でもお前でも女にプレゼントするんだなー」
レンジの少し揶揄が入った言葉にムッとして言う。
「ピアスだぞ。俺がすることはないからな。少し神力があったから魔除けにはなるかと思って渡しただけだ」
結果的にサクラの意識は消えなかったのだが――。
――まさかこうなることを知っててか?
その理由は分からない。だがどちらにせよ
そこへユウケイが瞬間移動でやって来た。それに驚いたのはレンジだ。
「え? なんで皇居で瞬間移動出来るんだ?」
皇居は厳重な結界が張っているのだ。瞬間移動は出来ないはずだった。
「皇族の血が流れていれば出来るじゃないか」
ユウケイの言葉にレンジは「え?」となる。
「教えてもらってないが?」
「あれ? 若様から聞いてない?」
「ええ。兄貴からもユウケイ様からも陛下からもヤマト様からも聞いてないけど」
目を細めて言えば、ユウケイもシンメイも、
「忘れたんだね」
と悪気もなく笑顔で応える。それを見たナギとレンジは、
――絶対わざとだ。
と確信するのだった。
「やはり乗っ取られたか……」
ユウケイは話を聞いて眉を寄せる。
「で、今若様が
「はい。あの場所はミカゲの神力がプラスに働く場所。そして
ナギの言葉にレンジが疑問を口にする。
「確かに
「俺もそれを期待してあの場所を選んだ。もしかしたら
やはり簡単に済むことなかったようだ。
「
ユウケイの言葉にシンメイが顎に手を当てて言う。
「それはないと思う。
そこで眉を潜めて口を噤むシンメイにナギは言う。
「それはどうでもいいです。早くしないとミカゲもずっとは持たない」
「そうだね。じゃあナギに渡さなくてはね」
シンメイが奥の部屋へと行き、ある物を持って戻って来た。
「じゃあこれ」
そう言って渡されたのは水晶だ。
「ありがとうございます」
ナギは受け取りお礼を言う。だがシンメイは眉を潜める。
「ナギ、わかってるね?」
「はい。必ずうまくいくわけではないということですよね?」
「うん。それだけは頭の片隅に置いておいて」
「はい」
ナギは笑顔を返す。
「今回は私が行けない」
「はい。大丈夫です。そのためにレンジに頼むので」
レンジは目を細める。
「嫌な予感しかしねえんだが……」
レンジはぐっと顔を歪ませる。
「俺の本能は絶対に
そう言って一歩後ろに下がろうとした時だ。
「レンジ、正解」
ユウケイが微笑みながらレンジの左腕を掴み、ナギも反対側の右腕を掴む。
「なんだよ?」
「逃げないようにしているだけだ」
「そういうこと。ナギ、よくレンジのこと分かってるね」
そう笑顔で言うユウケイにナギもにぃと笑う。
「レンジは単純なので」
「ナギ! てめえ!」
「じゃあ行ってきます」
ナギはシンメイに言うと、
「気をつけて」
とシンメイは笑顔で応えた。そしてその場から3人は消えた。
次に現れたのは
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