第103話 天神郷⑨
その後、
ミカゲは外で神力を使ったため、その反動でその日は1日ぶっ倒れていた。
「そういうお前も寝込んで今日で3日目だな」
ミカゲが笑いながら寝ているナギに向かって言う。
「ほんと最悪だ。まだ起きれない。こんなふうになったのは産まれて初めてだ」
ナギは、
「仕方ないね。耐性がない体であれだけの神力を使ったから反動が来たんだね」
そう言ってその横で笑うのはシンメイだ。
あの日、
そして少し体が動くようになった3日目にシンメイがミカゲとお忍びでやって来たのだ。
案の定サクラやマサキ達従者は驚いていたのは言うまでもない。
「でも1度耐性が出来ただろうから、今度からはここまで酷く倒れることはないと思うよ」
「2度とごめんです。まだ体を起こすのが辛い」
ナギはさも嫌そうな顔をして横を向いた。
「今日で3連休は終わりだが、明日も学校休んでいいぞ。体調不良で学校には言っといてやる。だからゆっくり休め」
「あ、ユウケイもね」
ミカゲに続いて笑顔で言うシンメイに、同じくナギの部屋にいたユウケイはムッとした顔を向けて抗議する。
「ほんと、こんなくだらないことに言霊を使わないでください。私はもう大丈夫なのにここから動けないじゃないですか」
「だってユウケイ、こうしないと休まないでしょ? それにナギがこの状態だ。今狙われたら誰がここを守るんだい?」
シンメイがユウケイをこの家に留めたのは、サクラやナギを守るためだったようだ。
「まあ確かにここまでナギが酷いとは思いませんでしたが」
ユウケイはナギが寝込むとは思わなかったようだ。
「神力は人外の力だ。私達皇族は子孫だからね。耐性がある程度ある。でもナギは違う。まったくない体だからね。普通はあんな神力は使えないはずなんだよ」
「それなのにあれだけの神力を使ったんだ。そりゃあ反動も半端ないわな」
ミカゲが笑う。どうみても楽しんでいる。
「よし。ナギの元気な姿も見たし、シンメイ帰るぞ。そろそろばれる頃だ」
そこで、またこの2人は周りに伝えず、内緒で抜け出してきたのだとナギとユウケイは目を細め呆れる。そんな2人を見てシンメイは、「親子そっくりだね」と笑顔で言うもんだから、余計に2人は機嫌を損ねた顔を向けた。
「さあ、帰ろうか。じゃあユウケイ、ナギ、またね」
挨拶するシンメイに、ユウケイとナギが同時に口を揃えて言う。
「もう来なくていいです」
「もう来ないでください」
そんな親子に、
「ほんと、君達似た者親子だね」
とシンメイは嬉しそうに応えるのだった。
「あ、忘れるところだった。ユウケイ、サクラさんに最後に挨拶して帰るよ」
するとナギとユウケイの顔が真顔になり警戒する。そんな2人にシンメイは苦笑する。
「何もしないよ。強化するだけだよ」
「なら、いいですが」
「ですね」
「君達親子は、私を何か問題を起こす人物だと思ってないかい?」
口を尖らして言うシンメイに、ナギは顔を背け、ユウケイは無視しサクラを呼びに行った。
「兄さん、この親子、面白いね」
「喜ぶところじゃないぞシンメイ」
そしてシンメイとミカゲがナギの部屋を出て行くと、廊下でサクラが待っていた。サクラはシンメイを見ると深々と頭を下げる。
「そんなに改まらなくてもいいよ」
「あ、はい」
だが緊張するのはしょうがない。天下の皇帝なのだから。
シンメイはそんなサクラの前に来ると笑顔で言う。
「サクラさんにご加護を」
「え?」
シンメイはサクラの額に手を当てると、封印を強化するように妖気を流す。
「!」
やはりサクラはそのまま意識は失わなかったが、膝から崩れ落ちる。それをシンメイが抱き止め支えた。皇帝に倒れかかる形になってしまったことにサクラは慌てる。
「す、すみません。陛下にこのような失礼なこを……」
「いいよ。私の気が原因なんだから。だから気にしないで」
「はい。ありがとうございます」
「陛下」
すぐにユウケイが手を差し伸べ、サクラを支えるとシンメイから離す。
「大丈夫?」
「はい。すいません、ユウケイおじさま」
「じゃあ失礼する」
シンメイとミカゲが去って行くのをユウケイとサクラ、マサキが頭を下げ送った。
車に乗り込み走りだすと、ミカゲはあえてずっと口にしなかったことを訊ねる。
「シンメイ、サクラだが……。本当のところどうするんだ? もし完全に
「……うん」
皇族のみが見れる過去の
「言えねえよな」
「……言えないよ」
「三條家は知っているのか?」
「たぶん知っているね。でもそのことを三條家は口外することはないと思うよ」
知っていることを言えば、
「正しい判断だな」
そしてミカゲが確認するようにシンメイに訊く。
「もうどうしようもできないんだよな?」
「こちらからはね。1度入られたら
過去の文献でもそう書かれていた。だがそれを知るのは皇族と三條家のみ。
「どうしても私からは伝えることは出来ない。私が言えば言霊になるから」
「前も聞いたが、お前が
「うん。
「そうか」
シンメイは外を見て、そして目を伏せる。
「さくらさん、そしてユウケイとナギのことを考えると、いたたまれなくなる……」
「ああ」
「どうしようも出来ないことが分かっていても、最後まであがきたくなる……」
「だな」
その頃、サクラはナギの部屋にいた。
「もうどうしよう。陛下に額を触れてもらって浮かれていたら、いきなり力が抜けて倒れそうになったのを陛下に支えてもらっちゃったのー! もう私すごい失礼なことをしたよね? でもすごく満たされた気分になったのー。あれが皇帝の力なのかなー」
両手を頬にあて顔を赤くしながら嬉しそうに話すサクラを見て、ナギはベッドに横になりながら目を細める。
「よかったな……」
「なによ、その反応! 陛下よ! ほんと美しい顔に声、そして高貴な妖気! そしてあの振る舞い。もう完璧だわ!」
「そうか?」
おちゃらけた陽気なシンメイしか思い浮かばないナギとしては、外面のシンメイを言われてもまったく心に響かない。
「もう! なんでわからないかなー。まあナギは男性だからかな」
「いや、関係ないと思う」
ナギは小さな声で突っ込む。
「ねえ。それよりなんで陛下っていつも西園寺先生と一緒に来るのかなー」
サクラは首を傾げながら言う。サクラはミカゲがシンメイの双子の兄だと知らないため不思議でしょうがないようだ。
「友達みたいだぞ」
「そうなんだ。西園寺先生、確かに顔広そうだもんね」
サクラはまったく疑わずナギの言うことを信じた。
「あ、そうだ。サクラ、これやる。手を出せ」
ナギはポケットに入れてあった物を取り出すと、サクラの手に乗せる。そこには木で出来たピアスだった。
「ピアス?」
「たぶん。この前の仕事のお礼にもらったが、俺はいらないからお前にやる」
「ありがとう」
サクラは嬉しそうにピアスを覗き込む。
「針ついてないね。何もしなくてもくっつくタイプなのかな」
そう言いながら左の耳にピアスを付けてみる。するとピタっとくっついた。
「あ、やっぱりそうだ。妖力に反応してくっつくんだー」
もう片方を右に付けようとするが付かない。
「あれ? 片方しかつかない」
「壊れてるんじゃないのか?」
「どうだろう。片方だけなのかな。ナギの耳見せて」
サクラはナギの髪をどけ左耳を出すとピアスを乗せてみる。するとすっと付いた。
「やっぱり片方でペアなんだね」
「ペア? なんだそれ」
「おそろって意味だよ」
そう言ってサクラははっとし顔を赤くする。
「どうした?」
ナギが怪訝な顔を向けるが、サクラは手をバタバタ振り、
「なんでもない! じゃあ私帰るね。ありがとう。ゆっくり休んでね」
そう言うと部屋を出て行った。
「なんだ? あいつ。急にどうしたんだ?」
ナギはまったく意味が分からずに眉を潜めるのだった。
部屋を出たサクラはピアスを触るが、どうやっても取れない。
「あれ? 取れない。まあいいか」
そして微笑む。
「初めてプレゼントもらっちゃった……。それにおそろだ」
クスクスと笑い、そしてスキップしながら自室に行くのだった。
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こんにちは! 碧心☆あおしん☆ です。
こちらを見つけてくださりありがとうございます。
そして、こんな拙い私の小説をここまで読んでいただきありがとうございます。
第八章が終わりました~。パチパチ! (今回も早いぞw)
今回は皇族チームのお話でございました。
結構私の好きなキャラさん達の回でした~(≧∀≦)きゃは
ちなみにこの時点でまだ下書きはゴールに到着しておりません💦
でもゴールは見えてますw
だから完結までがんばるぞー!
あと2章ほど、お付き合いくださると嬉しいです。
よろしくお願いします(_ _)
ではまた~!
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