第100話 天神郷⑥
『今より神に願ひ奉る。清き我が偉大なる神よ。この地に眠る不浄の魂を浄化したく、神の力使ふことまげて許したまはらむ。願はくは我等の願ひ聞き給へ。この地の穢れを祓い給へ。玉を移せしこと許し給へ。偉大なる神の力我等にたび給へ。我等その穢れを払ひ、清き地へと導く。偉大なる神よ、いかでか我等の願ひを聞き給へと恐み恐み白す』
すると、まずユウケイが立つ地面からユウケイを囲むように黄金の光の柱が地上から空へと伸びた。
「くっ!」
ユウケイが声を上げ顔を歪ませる。
――これはきつい。少しでも気を許すと意識を持って行かれる。
ユウケイの体を媒体とし強力な神力が駆け抜け重力も半端なく押し寄せるため、神力と同じ質量の妖力を体に流し意識をしっかり保っていないと魂ごと神力に飲まれて消える、いわゆる死を意味していることを瞬時に悟る。
――陛下達より皇族の血が薄い私には相当応える。久々に解放しないと死ぬな。
ユウケイは抑えていた力を解放する。
「!」
「!」
「!」
そこで他の3人は悟る。
――ユウケイが力を解放した? これは相当きつそうだな。やだねー。
――ユウケイさんが力を解放したということは、僕も相当覚悟がいるか。
――ユウケイの力の解放、初めてみたな。ということは、兄さんもヤマトも解放するということか。
みな、それぞれ覚悟を決める。
そして時計回りにヤマト、ミカゲ、シンメイへと黄金の光の柱が順番にユウケイのように天へと昇る。そして1本の線が4人を囲むように時計回りにグルグルと横に走り始めた。
やはり3人も顔を歪め力を解放する。
――これは思ったよりきつい。
みな倒れそうになるのをギュッと踏ん張り堪える。その間も黄金の光の線は何重にも4人を囲むようにぐるぐると周り続け、ドンドンとミルフィーユのように線が下からどんどんと積み上げ四角柱を作っていく。
――この光が収まるまでどれだけ時間がかかるのか。この感じだと10分ほどか。
ミカゲは眉間に皺を寄せながらナギを見る。
――せいぜい10分として、ナギがこの短時間で
その頃、ナギは
――火、水、雷、氷、すべての属性を試したがダメか。
「!」
刹那、ナギのシールドに凄まじい衝撃音と衝撃破があり、シールドにヒビが入る。そして衝撃破で後ろに押し弾かれた。
「ったく。まともに食らったら即死だな」
ナギはシールドを張り直し強化する。
「さあどうする……」
ナギはミカゲ達を一瞥する。4人共が力を解放し、神力の柱と結界の練り上げなのだろう四角い黄金の光の線が幾重にも連なり強度を増して半分ほど完成している感じだ。
――すごい力だ。ここまでビンビン来る。神聖とういよりあれは恐怖の場所だな。あの中には俺は1分も持たない。神力が強すぎて魂ごと消されちまう。
そして脳内で完成までの時間を計算する。
――あの感じだと、あと10分か。
ナギは
――さあどうする。あと10分であいつを弱らすことが出来るか……。
初めて冷や汗というものがナギの額を流れる。
――考えられるすべての魔法を試したが効果なしときた。お手上げだな。
その間も
――俺1点集中攻撃か。だがなぜあの4人を狙わない。
どう考えても
――なぜだ? さっきまでは攻撃していたのに、あの儀式が始まってからは1度も攻撃をしていない。
その時だ。思考に重点を置いていたため、一瞬の隙を突かれた。
バアーン!
――ちっ! 煙で視界が閉ざされた。それに妖力も感じない。まずいな。
バリーン!
シールドが破られた音とともに
「!」
――いつの間に!
刹那、
――くっ! 間に合わん!
当たるのを覚悟した瞬間、一筋の閃光がナギと
「!」
その閃光が放たれた先、ミカゲが右手を挙げていた。
――ミカゲか! 助かった。
「ナギ! 見極めろ!」
そう叫んだミカゲだが、その矢先、4人を囲っている光の線が歪む。それを4人は苦痛の上々をして修復するように妖力をあげた。
――ミカゲが俺を援護したから均衡が崩れたのか。俺のせいだな。
ナギは申し訳ない気持ちで心の中で詫びる。
すると、またしても
――あえてあっちには攻撃をしないということか。
その理由はなにか? そこで気付く。
――こいつも俺と一緒ということだな。
――ってことは、後は俺だけだな。
――200年前もこのようにして
それは1つしか浮かばない。200年前ここに入れたのは、皇族系の者のみだったということ。
――ミカゲの攻撃が効いたということは、やはりあの神力の力が影響しているということか。
だがナギはあの力を使うことが出来ない。
――俺がここに入れたということは、
そこでミカゲの言葉を思い出す。
――見極めろ……か。
だとすれば、先ほどミカゲが放った閃光のことだ。
――俺が出来る魔法で似たものか。
そこで小さい時のある出来事を思い出す。
――そう言えば、あの時母はなんて言ってた?
小さい頃、まだ母親が生きていた時だ。母が見せてくれた魔法を思い出す。それはとても光輝いた白い色をした魔法だった。
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