第78話 ソラと黒銀(1年前)①
1年前のファルコ軍事学校の入学式の日。
体育館で行われるため整列した時だ。ソラの体が反応した。
「!」
初めて感じる憎悪と恐怖が入り交じる感覚。父親から小さい頃から教えられてきた感覚だ。
「いいかソラ。
「でも
「それは大丈夫だ。俺達三條家の者は、
「そうなの?」
「ああ。必ず分かる。俺も1度経験したことがあるが、全身に衝撃が走り体が反応するんだ」
そう言われ続けていたが、どうしてもピンとこなかった。
三條家は大昔から
それは皇帝が解除しない限り三條家は代々その任務を続けるということだ。一種の呪いのようなものだろう。そのため、
だから入学式に感じたこの感覚を疑った。だがそれは紛れもなく父親から教わっていた感覚そのものだった。
――この新入生の中にいる。
ソラはその日から
「あれは……九條サクラ」
サクラとは中学までは学区が違ったため頻繁に会うことはなかったが、十家門の集まりがあると顔を合わせ話すことは度々あった。最後に会ったのは中学3年生の年末だ。だがその時は何も感じなかった。だとすればそれ以後ということになる。
――確認しなくては。
ソラはサクラが1人になった時を見計らって話しかけた。
「サクラ久しぶり」
「あ、ソラー! 久しぶりー!」
顔は笑顔だが、内心は気が気ではない。憎悪と恐怖が自分の意思とは関係なく全身を駆け巡り、今まで感じたことがない嫌悪感がソラの意識を支配していく感覚に陥る。それは先祖の
――これが
刹那、サクラから膨大な妖力が放出された。咄嗟にソラは周りに気付かれないようにサクラとソラを囲むように結界を張る。すると、ソラの妖気を見てサクラ――
「お前、
サクラから発せられた声にソラは驚き目を見開く。それは、サクラの声ではなく、男性の低い声音だったからだ。
そしてサクラの目は銀色に光り耀いていた。
「
「ああ、そうだ。俺がこの娘の中にいることによく気付いたな」
「当たり前だ。俺は
「そうだったな」
――くそ! なんて妖気だ。
間近で感じる
「想像はつくが、その子孫が俺に何の用だ?」
「サクラから出ろ」
ソラの言葉にやはりそうかと
「それは無理というものだ。やっと見つけた
「やること?」
「ああ。聞きたいか?」
嬉しそうに言う
「別に聞かなくていい」
ソラの予想外の返事に
「普通知りたいだろ?」
「いや。興味がない。それにだいたい理由はわかっている」
「はあ。つまらねえなー。いいから言わせろ」
ソラは目を細めて「……言いたいだけだろ」と呟く。
「まあそう言うな。久々に対面でしゃべれるんだ。しゃべらせろ」
「――」
「今度こそ皇帝を抹殺してやるんだよ」
やはりそうかとソラは大げさに嘆息する。
「まだそんなことをしようとしているのか? お前が殺したかった皇帝はもうこの世にはいない。そんなことしても意味がないだろ」
もう800年以上前の話なのだ。今の皇帝は
「それがあるんだよ」
「え?」
ソラは眉根を寄せる。予想外だというような反応を見せるソラに
「どうだ? 興味が沸いたか? これはほとんどのやつが知らないことだからな」
「ほとんどが知らない?」
「ああそうだ。知りたくなっただろ?」
「……」
「じゃあ聞いてやるよ」
そう言うと、
「そうこなくっちゃ」
「いいから早く言え」
「そう焦るな」
すると、笑顔だった
「皇帝は俺に【罪人の刻印】をしやがったからだ」
「罪人の刻印だと?」
「ああ、そうだ」
そして
初めて
それを聞いたソラは、目を見開く。
【罪人の刻印】とは、皇帝が危険人物だと認識した者に刻む能力だ。その刻印は魂に刻まれ、皇帝に近づけば瞬時に気付くことができ、刻印を押された者は皇帝に近づけば、体に激痛が走り、近づくにつれてそれは酷くなるというもので皇帝の身を守るためのものだと言われている。
だがそれは、現代では使うことが禁止された能力だと書物には書かれていた。
「【罪人の刻印】のせいで、それ以来俺は他のやつの中に入ると、その後何日かでその者の体が腐敗し始め、居続けることが出来なくなった」
ソラは
――【罪人の刻印】は皇帝の膨大な妖力によって成り立っているはずだ。普通の者がその妖力を体に入れれば、拒否反応を起こし肉体が堪えられなくなり腐敗したということか。
「だから転々と乗り移って生きてきた。そして
そう言って空に神でもいるかのように両手を空に向け天を仰ぐ。
「そして俺はすぐにまた皇帝を襲った。だがまたしても失敗し、あっけなく捕まった。そして俺を殺すために
――
「だが俺は、後日、後処理に来たやつに乗り換え無事だったってわけだ」
そこでソラは訊く。
「その言い方だとお前は死体でも生きていられるということか?」
「……まあそうだな」
少し間があった後に笑顔で応えた
――なんだ? 今の間は。
心を読もうとするが出来ない。
――やはり身内は無理か。
三條家は皆この能力を持っているが、身内同士は読めなかった。
――ということは、
そんなソラの考えに気付かず、
「その後、なかなか
――国は
「長い年月が過ぎ、半分諦めかけていた時だ。九條サクラを見つけた! 分かるか? その時の感動を! 俺は初めて神に礼を言ったね」
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