第77話 皇帝が家に来た②
「一度は聞いたことないかい? 『
「昔話の『白と黒の
大昔、容姿も性格も正反対の双子、
「あの話には1つ間違いがある。実際は
ナギとミカゲは目を見開く。
「どういうことだ?」
「
「!」
「実際は
それにはナギもミカゲも驚く。
「切り離しただと? そんなこと出来たのか?」
「
「だがすぐに
ミカゲが訊く。だがシンメイは首を横に振る。
「
「!」
「どうして分かったのかは、その時の皇帝を狙って来たからだ。だがその時の皇帝と
「ちょっと待て。それって
ミカゲが言う。
「そうなるね」
ナギもミカゲも息を呑む。
「そして
シンメイのそこまでの説明で、ナギもミカゲもある最悪の結論に達する。
「もしかして、稀人を国がすべて把握する理由は……」
「そう。
「!」
そこで今まで黙っていたナギが口を開く。
「陛下、1つ訊くが」
もうナギが言いたいことはミカゲも分かっていた。苦渋の顔をし目を閉じる。
「もしサクラが『
「……」
シンメイは最初の『
「応えられないということは、そうとらえていいってことだよな?」
いつの間にかナギは敬語を忘れ話す。だがそれに対してミカゲもシンメイも何も言わない。
ナギも分かっている。だがどうしても敬語を使う気になれない。
横で寝ているサクラを見る。
たまたま入れ替わったユウリの許嫁だった存在。たまたま入れ替わった瞬間に居合わせた存在。なぜか記憶が残っている唯一の存在。それだけの存在だ。
だがなぜか無性に腹が立つ。
もうユウリの許嫁というだけではない。一応自分の許嫁だ。2ヶ月経ち、ほとんど毎日のように顔を合わせ、色々な話をし過ごしてきた。はいそうですかという存在ではない。これを情というものなのだろう。
今確実に言えることは、殺されることが分かっている場所に、サクラを渡すことだけは許さないということだ。
「悪いがサクラを渡す気はない。もしサクラを連れていくのなら、陛下といえども俺は断固抵抗する」
ミカゲは葛藤するようにただ苦渋の表情をし歯噛みする。
シンメイはふっと笑う。
「ナギはそう言うと思ったよ」
「?」
「心配しなくていい。このことは私だけに留めておく」
「だがシンメイ! それはお前を危険にさらすことになる!」
そこでどうしてミカゲが苦しそうにしていたのかが分かった。サクラを生かせば、シンメイの命が狙われるからだ。
「大丈夫だよ。今はこの子の中にいる
「どういうことだ?」
それにはナギもミカゲも驚く。
「たぶん三條家の息子さんが強力な封印を施している」
「え?」
三條の息子と言えば、ソラだ。
「ソラが?」
「うん。凄いねその子。1人で
そこでミカゲははっとする。
「だからサクラの能力が分からなかったのか」
「だろうね。私でもこの子の能力を見るのに一苦労したからね。たぶん見つからないように能力ごと封印をしたんだと思うよ」
「でもあいつ、いつ気付いたんだ?」
ミカゲは疑問を口にする。
「それは分からないけど、でも三條家の息子さんがいてよかった。もし封印していなかったら、私の服従の言霊でも
「そうなのか?」
「うん。
「じゃあもう大丈夫なのか?」
「いや……。でも今のままならある程度は大丈夫だね」
シンメイは寝ているサクラの前にしゃがむと、手をサクラの額に置く。すると金色にサクラを包む。そして眉を潜める。
――やはりこの子には無理か……。
「陛下」
「ん?」
「なぜサクラのことをこのままにしておく。陛下からしたらサクラは驚異な存在だろ?」
「このことは皇帝とその側近と軍の上の者、そして三條家当主と次期当主のみしか知らないことだ」
「じゃあ俺の父親も知っていると?」
「ああ。だからこの子の能力を隠し、君の許嫁にしたんだろうね。そして三條家も知っているんだろう」
確かに三條家が知っていなければこうはならなかったことだ。
サクラを国に報告をしなかったのは、ただ監禁されるのを恐れてではなく、サクラを殺されないようにするためだったのだ。
「となると、ソラにも訊かないと行けねえな」
ミカゲが言うと、
「それなら大丈夫だよ」
「?」
「ここに来るだろうから」
すると、応接室の扉が叩かれ、マサキが顔を出した。
「申し訳ございません。今三條家のソラ様が見え、ナギ様に急ぎでお会いしたいと」
そう言いながら、マサキはシンメイへ了承を取るように見る。シンメイは笑顔を見せて応える。
「ここに通して構わない。私も話したかったからね」
そして案の定ソラはシンメイを見てフリーズする。あのソラでもやはり皇帝を前にするとフリーズするのだとナギは内心笑う。ソラは、はっとし膝を突く。
「大変失礼いたしました。三條ソラと申します。まさか陛下がお見えになるとは知らなかったとはいえ、申し訳ございません」
「久しぶりだね。いいよ。君が来るのはわかっていたから」
「え?」
ソラは顔を上げる。
「すまない。私がこの子の封印を一瞬緩めたんだ。でもすぐに抑えたから心配ないよ」
「あ、はい」
「ちょうど君の説明を聞きたかったんだ。お願いできるかい」
「あ、はい」
ソラはソファーに座り、目の前の皇帝をマジマジ見る。どうもこの状況が理解出来ないようだ。
――なぜナギの家に、陛下と西園寺先生がいるんだ?
「ナギ、なぜ陛下がここに?」
「あ、ああ。お忍びで遊びに来たんだとよ」
「――」
余計に分からないソラだ。皇帝だけは心を読むことが出来ないだけに、ソラの中で不安が過る。だがこのまま黙っているわけには行かない。シンメイから説明をするように言われているのだ。するとミカゲがまず切り出した。
「ソラ、説明してもらおうか」
「……」
ソラはどう説明すればいいのか逡巡する。その葛藤を知りシンメイが言う。
「隠さなくていいよ。みんな知ってるから」
「え?」
「すべて話してある。だから封印に至った経緯を話してくれないかい?」
「わかりました」
ソラは1度深呼吸をし意を決する。
「僕がサクラの中に
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