第33話 旅の疲れと反省

 在来線に乗り換え、家に帰り着いたのは午後9時頃だった。酔って足がだるかった時には、今日中に片付けなんて絶対に出来ない、無理、と思っていたのに、最寄り駅に着く頃には酔いも覚め、そうしたらやる気が出た。「やる気」と言うより「やれる気」と言った方が正しいかもしれないが。

 自宅に着くや否や、スーツケースの中をパッパと片付け、空にした。とにかく何でもすぐに片付けてしまいたい。これも主婦の性だろうか。部屋の中が散らかっているのを見ると、それだけでストレスになるのかもしれない。

 家族はみんな元気だったが、洗濯物が変な風に干してあって、夏だというのに乾いていなかった。

 出かける時に、家事を頼んだりはしなかった。好きなようにしてくれればいいと思った。だが、夫が洗濯だけはしなければならない、と思ったらしい。夫が朝、洗濯機を回し、長男が干し、次男が畳む、という役割分担をしたという。取り込むべき時間に次男がいないので、部屋干しになっていたのだろう。だが、干し方がイマイチで乾きが悪い。もっと広げて干さないと。私が干し方を変えていたら、次男が、

「流石プロだね。」

と言った。家事のプロ、かなぁ。微妙だな。


 それにしても、やっぱり腸の調子が悪い。下るという程でもないのだが、頻繁に催すというか。ちょっと腹痛もあって落ち着かない。体を動かし過ぎたのか、飲み過ぎ食べ過ぎのせいなのか。いやいや、あまり食べてはいない気がするぞ。やはり歩き過ぎて疲れたのだろう。

 お腹の不調は翌日も、その翌日も続いた。正露丸を飲んでゆっくりしていたら、3日後には元に戻ったが。そして、朝起きると肩こり頭痛が酷く、昼間も動けないくらいに疲れを感じるというのも2,3日続いたのだった。

 また、ペディキュアを取ってみたら、右足の親指の爪の、根元の辺りが青くなっていた。押すとすごく痛い状態がしばらく続いた。1ヶ月くらいだろうか。そのうち赤黒い跡になり、徐々につま先の方へ移動して行ったが、半年経ってもまだある。

 それから、旅行の翌日にパソコンでメールのチェックをしたら、えきねっとから、旅行出発日の朝にメールが来ていた。新幹線の列車名(かがやき521号)や発着時間、座席番号などが書いてあった。これ、“これは便利!”となるはずだった。行きはeチケットだったから、ICカードに情報が入っていたので、切符のように座席番号などを目で見ることが出来ない。それで、私はスマートフォンのカレンダーアプリの備考欄に、それらを書いておいたのだ。でも、このメールがスマートフォンの方に直接来たならば、メモを取っていなかったとしても大丈夫だ。需要が分かっているなぁ。感心してしまった。

 だが、自宅にあるパソコンの方にメールが来ても意味がない。つまり、メールはパソコンではなく、スマートフォンに来るようにしておかないと、意味がないという事だ。惜しい。もちろん、帰りは切符だったので、最終日にはメールは来ていなかった。


 それから、今回の旅で一番印象に残っている場所はどこかと聞かれたら、それは富山県の岩瀬だったと答えるだろう。最初にお目当てにしていたのは金沢の兼六園だったし、富山県についでに寄ろうと思ったのは、ギャルリ・ミレーに行きたいと思ったからだった。しかし、案外一番印象に残ったのは、元々は知らなかった、それこそ「時間があるからついでに行ってみた」程度の岩瀬だったのだ。旅はそういう所がいい。知っていた、有名な場所を訪れただけでは勿体ない。ちょっと足を伸ばして行ってみた所に、意外な面白さや感動が待っていたりする。それが、テレビや動画で見るのとは違った、実際に行ってみる価値というものではないだろうか。


 一人旅は楽しかったかと聞かれたら、けっこう楽しかったと答えるだろう。不安や寂しさも多少あったけれど、けっこう面白かった。一人で飲食店に入る事さえ苦手だった私が、よく頑張ったと思う。その、挑戦したという事実が嬉しかった。

 次はどこへ向かう、何をする、という事で頭がいっぱいで、家の事や家族の事を心配している余裕はなかった。普段、毎日毎日家事をやって、夕飯のメニューや洗濯ものの事などを考える日々に、間違いなくリフレッシュを与えただろう。

 だが、体が疲れ過ぎる。こういう旅行は3年ぶりだから、3年で歳を取って体力が衰えたのだろうか。それとも、一人だから余計に疲れるのだろうか。まあ、元々旅行をすると足がすごく疲れるものだが。いや、やっぱり道に迷うせいで、異常に歩き過ぎたのだろう。

 とにもかくにも、これからはもっと余裕のある旅をした方がいいだろう。観光する場所を減らすか、移動にタクシーを使うか。そもそも2泊ではなく1泊にした方がいいのか。だが、せっかく初めての土地に行ったのなら、すぐに帰ったら勿体ない。あちこち見て回りたい。自分の体力と折り合いを付けるのは難しい。

 一人だから、ゆっくりマイペースで、疲れたら休もうと決めていたのに、実際には出来なかった。今お店に入りたいと思っても、そこにお店がなかったりする。

 予定をはっきり決めずに行く方がいいのか、休む場所まできっちり決めておいた方がいいのか。悩ましいところだ。でも、また一人旅がしたくなる。こんな所に行くのか、と嫌がられたりする事もなく、マニアックに自分の行きたい所に行ける一人旅。日程を人と合わせたりしなくてもいい。急遽その場で予定を勝手に変更してもいい。食事の時間でも、今食べたくなかったら後にしてもいい。で、結局ほとんど食べなかったりするのだが、でもそれも自由だ。


 最近、寝て起きた時に頭痛、という事が増えてきて、やっぱり枕が高いのでは、と思い始めた。数年前、ちゃんと自分に合う高さの枕を買ってきたはずだが、今回の旅行で、あの低めの枕で寝てみて、実はもっと低い枕の方が自分に合っているという事が分かったのだ。それで、その後低い枕を新しく買った。しかも、ただの四角い形ではなく、金沢の2泊目に使ったのと同じ、首側の方が高くなっている、あれと同じ形の物を。もしかしたら、これが今回の旅の一番大きな収穫だったりして。


 最後に、今回の一人旅を総括する。

 一人旅はけっこう楽しい。だが、私は道に迷うから歩き過ぎる傾向がある。よって、もっと余裕を持ったスケジュールにすべし。それから、枕は低めの方がいい。新幹線の切符は「eチケ」が便利。だが、えきねっとからのメールはスマートフォンで受信すべし。

 以上。

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初めての一人旅in金沢~富山 夏目碧央 @Akiko-Katsuura

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