第30話 富山マルシェ
岩瀬浜駅に着いた。予定より1時間早いが、もう富山駅へ戻ろうと思う。時刻は午後3時過ぎ。それからライトレールに乗って、3時半過ぎに富山駅へ戻ってきた。これは上り電車のようで、けっこう電車内は混み合っていた。富山駅に到着する頃には、かなりぎゅうぎゅうだった。私は始発から乗ったので、座席に座っていたけれど。
富山駅でライトレールを降りた。私にはまだ一つ、買わなければならないお土産が残っていた。それは、義母に頼まれた「とろろ昆布」である。
頼まれたのとは、ちょっと違う。近くに住む義母は、私が一人旅に出ると知って、お餞別をくれた。そのお金を渡される時に、
「とろろ昆布でも買ってきて。」
と言われたのだ。
「とろろ昆布を買ってきて」ではなく「とろろ昆布でも」と「でも」が付いていた。日本語の難しい所。子供には分からない機微。この「でも」は何ですか?はい、私には分かります。「とろろ昆布でもいいし、無ければ他のものでもいい」という「でも」であり、高価な物ではなく、その程度の物でいい、というニュアンスも含むもの。はあ、難しい。
それでも、やっぱり「とろろ昆布」がいいと大方思っている事は確かである。お菓子や、使わないような物(置物とかアクセサリーとか)ではなく、普段使いできる物で、重くも高くもない物。そういう物が他にあればいいが、よく分からない。だから「とろろ昆布でも買ってきて」と言われた私は、愚直にとろろ昆布購入を必須事項として認識しているのである。
金沢では見かけなかったので、富山まで来てしまってもまだ買っていなかった。富山湾の方が、何となくそういう海産物がありそうだが、ガイドブックでも見かけなかったし、本当に富山がとろろ昆布の産地なのかどうか、分からない。とにかく、探してもなかったら仕方ないとしても、一応探さなければならない。嫁の勤めとして。いや、お餞別をもらった義理として。
富山駅には「きときと市場とやマルシェ」という、お土産がたくさん売っている場所がある。金沢の「百番街あんと」のような所だ。3年前、乗り換えに富山駅を使った時にも寄って、お昼を買ったからよく知っていた。そこへ、とろろ昆布を探しに行った。
前に来た時には、かまぼこやます寿司を買った。だから、今回それらは買わない事にした。海産物がたくさん売っている場所を見ていたら、とろろ昆布があった。良かった。これでミッションクリアーだ。
お店の人に、
「これをください。」
と、とろろ昆布を一袋手に取って渡そうとしたら、
「白いのもありますよ。」
と言われた。確かに「ととろ昆布・白とろろ昆布」と書いてある。だが、一種類しかなさそうだ。そうしたらお店の人が、
「日に当たると変色しちゃうから、後ろに置いてあるんですよ。」
と言って、一番後ろの方から一袋取り出して見せてくれた。せっかくなので、白い方のとろろ昆布を買ってみた。
それから、「ホタルイカの沖漬け干し」もついでに買った。何となく、日本酒のおつまみに良さそうだから。これは、後で食べたらすごく美味しかったのだ。噛み切りやすいし。もっとたくさん買えば良かったと、後で後悔するのだった。
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