第29話 砂浜
観光案内所でもらった「岩瀬まち歩きまっぷ」には、東岩瀬駅から岩瀬浜駅の間とその周辺しか載っていない。ガイドブックにも、岩瀬の詳細な地図は載っていない。だが、スマートフォンの地図がある。これを見ながら、海岸を目指した。ちゃんと海を見るには、海水浴場へ行くしかなさそうなので、岩瀬浜駅へ行くには遠回りだが、海水浴場を目指す事にした。何としても、富山湾をちゃんと見たい。
岩瀬運河を細い橋で渡った。「大漁橋」と言うらしい。運河を観光船が通った。富岩水上ラインだ。この運河までは「岩瀬まち歩きまっぷ」にも載っている。この先がないのだ。
大漁橋を渡って、更にその先へ行くと、それこそ人も車も通らない。海沿いの道なのだが、船は見えても海は見えないというもどかしさ。塀があるのだ。日差しが降り注ぎ、日傘を差していてもやはり暑い。人が全くいないので、さすがにマスクを外した。この旅行で初めてマスクを外して歩く。海風でやはり髪の毛がバリバリだ。今日はすがすがしくて、さっきまでは髪の毛もさほど酷くなかったのだが。
海が見えそうで見えない道を延々と歩いた。疲れが全身に襲ってきて、力が入らない。惰性で歩いている感じがする。暑い。でももう、歩く以外に選択肢は無い。
駐車場が見えた。これはもしかして、海水浴客の為の駐車場なのでは?そう思って、気がはやる。一生懸命に歩き、駐車場へのちょっとした坂を上がると、出た!海だー!
駐車場も砂地だった。このまま海まで砂浜が続いている。やっと海へ出られた。海水浴客もいる。しかし、水際までは相当な距離があった。砂浜は歩きにくい。今、私はロング丈のワイドパンツを履いていた。こんな格好で砂浜を長距離歩きたくはない。なので、写真を撮るだけにした。砂浜と海と空の写真。縦長の写真や横長の写真、パノラマ写真まで撮ってみた。雲はほとんどなく、空は限りなく青い。遠くには山が幾重にも連なり、山ぎりぎりの所に白い雲がたなびいている。とても美しい景色。だが、海はやっぱり遠いな。さて、これで満足して駅へ向かう事にした。
時間つぶしには良かったのだが、体が疲れ過ぎている。体に力が入らないのと、何故か腸が活発に動いているようで、ちょっとお腹が痛いような変な感じがする。これもみんな疲労のせい。歩き過ぎのせいだ。
なので、早く駅へ向かうべきだ。何しろ、この辺りには全く座れる所などないのだから。駅までは、地図で見るとさほど遠くない。GPSを使ってちょちょいのちょい、さささのさ、のはずだったのに……。
県道へ出た。1号線だ。ずっとGPSを見ているとパケットを使い過ぎてしまうので、もうすぐだから分かると思い、私はスマートフォンの地図を閉じて歩いていた。車がたくさん通る県道へ出たら左へ行けばいいと思っていたのだ。
どうしてそう思ったのか、忘れた。左へしばらく歩いて行ったが、一向に駅が出て来ない。すぐのはずなのに。仕方なく、またGPSに頼る。すると、何と県道を反対方向に歩いていたのだ。疲れているのに、私は何をやっているのだ。県道へ出てから、歩くべき道のりと同じ分だけ反対方面に歩いて行ってしまったので、またそれを戻り、更に駅まで行くのだから3倍もの距離を歩いてしまった。クタクタを通り越してヘナヘナである。
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