第25話 富山ガラス美術館

 次は、歩いてすぐの所にある「ガラス美術館」へ行くことにした。大通りを歩いて行くと、角の所にものすごく大きい建物がバーンとそびえ立っていた。ピカピカした縦長の素材を組み合わせた、6階建てか7階建てくらいの建物だ。ぱっと見、青みがかった銀色だ。

 大きい建物なので、どれだけ大きな展示物があるのか、どれほどたくさんの美しい物があるのかと、期待して近づいて行った。入り口を探して行くと、見つけたのだが……なんと入り口は銀行だった!これにも驚きだった。中に入ると1階はほぼ銀行のスペースで、入り口正面にガラス美術館の受付だけがあった。「総合案内」と書いてある。ガラス美術館の特別展のチケットを1000円で買うと、3階と4階と6階が展示室だと言われた。それは、一体どういう事か?

 エスカレーターで上がっていくと、上の方は半分が図書館だった。音楽や映像の貸し出しもあるようで、けっこう大きな図書館のようだ。エスカレーターはさながらデパートのよう。けれども、図書館と美術館、なんだよな。不思議な感じ。

 3階でチケットを切ってもらうと、最初に特別展へ行くようにと言われた。特別展は最上階でやっているらしい。また更にエスカレーターに乗って最上階の6階へ行く。6階には図書館はなく、静かな感じだった。6階の展示室は「グラス・アート・ガーデン」というらしく、特別展は「チフーリ・エクスペリエンス」というのかな。デイル・チフーリというアーティストの作品が展示されているそうだ。

 中に入っていくと、大きなガラスアート作品に出迎えられた。かなり大きな作品だった。それは見た事もないような雰囲気で、ヨーヨーのでっかいのとか、花を表現したものとか、私の想像していた縦に大きい作品ではなく、横に広がる大きな作品だった。暗い室内でライトアップされていて、赤や黄色が色鮮やかに輝き、とても素敵だった。とはいえ、思ったよりも展示数が少なかった。全部で7つだった。SNSに載せなければ、写真撮影がOKだったので、何枚か撮った。大きさが伝わるように、自分も入れて撮ってみたりもした。

 次に常設展へと向かった。4階、そして3階へと進んだが、思った以上に展示品は少なかった。デパートの食器売り場と変わらないというか……おっと、そんな事を言ったら失礼か。でも実際、工芸品は生活の一部になってこそ完成するものだと思うので、食器として売っているガラス工芸品も、大変素晴らしいものがあるのだ。そういう意味でも、何か買いたいなぁと思い、2階にあるミュージアムショップも覗きに行ったが、特に買おうと思う物はなかった。

 そして、私の体が悲鳴を上げ始める。体の疲れが半端ない。もう歩き回る元気がない。カフェで休むか。

 ミュージアムショップとミュージアムカフェは同じ階にあった。その2階にはイベントスペースもあり、今ちょうど、フルートの四重奏をやっていた。時刻はちょうどお昼時。12時過ぎだ。カフェはそれほど混んでいない。だが、メニューを見て迷ってしまった。何を注文するか全然決められない。お昼を食べるのは、今じゃない気がした。旅程時間には余裕があるのだから、フルートの演奏を聴いていくのもありだ。その辺にたくさんの人が座って聴いている。だが、椅子がもう空いていない。端っこで、小さい女の子とお母さんが二人、しゃがんで演奏を聴いていた。私には、そのしゃがむスタイルは無理だ。それならば、カフェに入って何か飲み物だけでも頼めばいいのに、どうもそういう事が出来ない性分で。それに、カフェインレスの飲み物がジュースくらいしかなかったから。

 疲れていると、何故か先を急ぐ気持ちになってしまう。居ても立ってもいられない。動けなくなる前に、やる事をやってしまおうと思ってしまうのかな。

 さあ、私は岩瀬へ行くのだ。早く電車に乗らなければ。フルートの四重奏が流れる中、美術館を後にした。出口ではちらっと後ろ髪を引かれたが。なかなか無料でフルート演奏を聴ける事なんてないから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る