第21話 富山へ

 9時頃にホテルを出て、また金沢駅へ向かう。9時22分発の「はくたか」に乗るのだが、意外と遅くなってしまってちょっと焦る。やっとカラリと晴れて、日傘が必要な朝。スーツケースを引っ張る腕も日陰になるように頑張る。空気が乾いていてすがすがしい。日陰はとても涼しい。

 帰りは切符だ。後から思えば、帰りも全て「eチケ」にすれば楽だったのだが、金沢―富山間と富山―東京間とに分けて買うよりも、金沢―東京間の乗車券を買って富山で途中下車するようにして、特急券(指定席券)だけ別々に買おうと思ったら、eチケではダメだったのだ。でも、その複雑な買い方のせいで一度間違えてしまい、やり直したら払い戻し手数料220円を取られてしまった。後になってよくよく調べてみたら、分けずに一気に乗車券を買っても、分けて買うよりたったの110円しか安くなかったのだ。もっとずっと安くなると思っていたのに。便利なeチケが利用出来なくなってしまった上に、間違えたせいで却って損をしてしまったのだ。これは今後の教訓である。次は絶対に乗車券も分けて買う。交通系ICカードだけで済むように、eチケにする。

 というわけで、乗車券と特急券と合わせて2枚、重ねて改札に通す。そして、無事「はくたか」に乗れた。富山までは20分ほどだ。自由席だが、無事に座れた。後ろの席に小さい女の子とそのお父さんが乗っていて、会話を聞いていると微笑ましい。しかし、私はひたすらスマートフォンで新聞を読む。

 富山駅に着いた。ここには3年前に来ている。飛騨高山に家族で旅行をした際に、乗り換えただけの富山駅。帰りは黒部峡谷に寄ったので、富山のガイドブックも3年前に買ったのだった。だから、今回新しく買う事はしなかった。

 さて、ここでもまずスーツケースをコインロッカーに入れよう。引っ張り回すという手もあるにはあるが、やっぱり身軽に観光したい。ロッカーはすぐに見つかり、無事に入れる事が出来た。

 富山でも公共交通機関のフリー切符を買おうと思っている。「富山まちなか岩瀬ふりーきっぷ」という物を。ガイドブックで調べておいたので、買う場所も分かっている。そちらへ向かった。だが、無い。買えるはずのカウンターが、無い。3年経つとだいぶ変わるようで、調べておいた見取り図と、今現在の駅の様子は全く違っていた。調べておいた場所とは違うが、近くに切符が買えそうな窓口があったので、ここかなぁ、と思って聞いてみた。

「あのー、富山まちなか岩瀬フリーきっぷはこちらで買えますか?」

すると窓口のお姉さんは、

「それはJRではないですね。ライトレールでしたら、あちらですよ。」

と言って、JRの改札とは反対側の方を差した。すると、ここはまだJRの新幹線のエリアで、私が買いたいフリー切符はJRではない会社が販売しているという事なのか?それさえも分かっていなかった。

 とにかく、差された方、私鉄エリアへ行ってみる事にしよう。

 あの辺りから私鉄エリアなのだろう、と思って向かったが、改札口がなく、いきなり線路があった。線路の向こう側に、小さい観光案内所があった。あそこに行って聞いてみよう。

 観光案内所には二人の職員さんがいて、お客さんが一人いた。一人の職員さんがそのお客に何やら説明をしていた。もう一人の職員のおじさんに、

「あのー、富山まちなか岩瀬フリーきっぷはありますか?」

と聞いてみた。するとおじさんは、親切に色々と教えてくれた。にこやかに。

 私が買おうとしていた「富山まちなか岩瀬1日ふりーきっぷ」は名前を変え、「一日フリーきっぷ」になっていた。お値段も安くなっていて、820円から650円になっていた。バスや市内電車(路面電車)が一日乗り放題の切符である。

 おじさんは、市内の観光名所や岩瀬への行き方を教えてくれて、「富山市観光ガイドマップ」もくれた。「岩瀬まち歩きまっぷ」も。

「最初はどちらに行かれますか?」

おじさんが聞く。

「最初は富山城の方へ行こうと思います。」

と私が答えると、

「そうですか。それでしたら、ついでにギャルリ・ミレーとかガラス美術館なんかにも行かれるといいですよ。」

と教えてくれた。私も元よりそうするつもりだったが。そして、

「では、3番の乗り場からどうぞ。」

と言ってくれた。

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