第20話 三日目の朝
三日目の朝。目が覚めると、目覚まし時計が鳴る一分前。6時29分であった。夕べの頭痛薬が効いたのか、頭痛はすっかり治っていた。いや、この低い枕が良かったのかもしれない。これは重要な発見だ。普段家で使っている枕では、もしかしたら高すぎるのかもしれないのだから。
それから、昨日すごく痛くなってしまった右足の親指の爪も、痛くなくなっていた。夕べはちょっと触っただけでも痛かったのに、今はすっかり治っている。睡眠の力はすごいな。
足に貼ったシートを剥がした。少しは効いただろうか。そしてまたお風呂に行った。せっかくの温泉だから、なるべく入ろうではないか。このお風呂も入り収めだ。ちょっとぬるめの温泉だったな。
部屋に戻ってきて、髪を乾かし、お化粧をした。部屋と洗面所とを行ったり来たりしている時に、変に冷やっとした、ベタっとした物が一瞬足に着いてびっくりした。何かと思って手探りで探し出してみると、それは例の、ふくらはぎに貼ったシートだった。昨日行方不明になったあれだ。掛け布団に掛けられたシーツの端っこに貼りついていて、床すれすれの所にあった。なんでこんな所に着いたのか。ちょっと笑える。
支度を終え、朝食のビュッフェ会場へ行った。部屋のモニターでチェックした時には「混雑している」と出ていたが、行ってみると、一人席ならばちらほら空いていた。やっぱりこういう時には、お一人様は便利だ。場合によっては強がりに聞こえるが。
さあ、ここでの最後のビュッフェだ。悔いの無いように食べよう。美味しい焼きたてパンは5~6種類あって、昨日は食べられなかったパンを今日こそ食べようと思った。だが、パンを取りに行ったら、今日はそのパンはなかった。その代わり、別の種類のパンがあった。もうこれは、美味しいパンをたくさん食べるしかない、と根拠なく思ってしまい、昨日は3個取ったパンを、今日は4個取ってきた。昨日も食べたけれど、やっぱりクロワッサンは外せない。サクサクで美味しいのなんのって。
昨日の郷土料理は治部煮だったが、今日は「とり野菜味噌」だった。以前、パウチに入った鍋のつゆ「とり野菜味噌味」を買って鍋を作った事があったが、これが金沢の郷土料理だとは知らなかった。それから、魚とかごま和えとか、和総菜を取ってきた。だから洋風のサラダは要らないと思ったのに、ポテトサラダを発見したら欲しくなった。通り過ぎようとして、二度見してしまった。私はポテトサラダが好きなんだ、と改めて知った。そういえば、たまにコンビニでご飯を買おうとすると、かなりの確率でポテトサラダを買っている気がする。ほら、昨日も買ったし。そうだったのか、私の好きな食べ物はポテトサラダだったか。あと、ヨーグルトとジュースも取ってきて、これで終わりにしようかと思ったら、また金沢カレーが気になってしまった。パンを一個多く取ったのだからご飯を食べるのはちょっと気が引ける。そこで、ポテトサラダの隣にカレーを添えてきた。
さあ、今日もいただきます。昨日と同じ、8時少し前に朝食にありつけた。パンはやっぱり美味しくて、夫や子供達にもこのパンを食べさせてあげたかったな、と思ってしまった。アップルパイなんて、最高に美味しかった。でも、卵サラダパイだけは、イマイチだった。同じパイなのに。それと、ポテトサラダにカレーはしょっぱ過ぎた。やはりご飯を取るか、カレーを諦めるべきだった。下手なことをするもんじゃない。
因みに、2回目なので一人朝食ビュッフェは、もう寂しくなかった。寂しいとか、そういう問題ではなかったのだろう。人からどう見られているかが気になるだけなのだ。慣れると大丈夫だ。考えないようになるから。
部屋に戻り、お化粧直しをした。例の、一回分には多すぎる試供品の日焼け止めを、顔や首、腕などに塗った。が、その日焼け止めは水のようにサラサラしていて、顔に勢いよく付けた時に、胸の辺りに垂れてしまった。濃い紫色のTシャツを着ていたので、そこに白いシミが!まあ、長い木製のペンダントをするから、そんなに目立たないとは思うが。それにしても、腕も顔も真っ白。不自然だ。この日焼け止め、絶対に買わない。
すっかり荷物をスーツケースに入れ、最後に一応確認しようと枕をひっくり返したら、下から目薬が出て来てビックリ。これは市販品ではなく処方された物なので、忘れて帰ったら悲しいところだった。最後の確認は大事だ。
部屋を出た。忘れ物はないはず。時間があったらアンケートを書こうと思っていたが、時間が無くなってきたので書けなかった。新幹線の時間が決まっているのだ。指定席ではないが、列車はそれほど頻繁にあるわけではないので、これに乗らなければならない。
チェックアウトの手続きは不要だと書いてあった。普通は、最後に受け付けに鍵を返したり、追加料金があれば支払ったりする、チェックアウトの手続きがある。鍵も追加料金も無かったとしても、一応その確認はしてもらってから帰るのが一般的だと思ってきた。何もないのは初めてだ。ロビーを抜け、本当にいいんだよなーと振り返り、振り返りながらホテルを出た。
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