第18話 金沢百番街あんと

 金沢駅まで、けっこう長い間バスに乗って座っていたので、足の疲れもだいぶ取れた。それでも時間はまだまだ早い。午後3時頃に金沢駅に到着。夕飯までには時間があるので、お土産を買う事にした。

 駅ビルの中に入ると、すぐに土産物が目に入った。買い求めている人もたくさんいる。なるほど、ここで買えばいいのか。とすると、時間が余りすぎる。もう疲れたし、ホテルに戻ってさっさとお風呂に入りたい。何かお弁当のような物を買ってホテルに帰ろうと決めた。

 後で、ここでお土産を買うとして、他に今日食べる物が売っているかどうか、色々見てみようと思った。ガイドブックに「百番街あんと」というものが駅にあると書いてあったので、そこへ行ってみる事にした。

 看板があったので、それに従って進むと、通路の両側にお弁当やおにぎりのお店が並んでいる所へ出た。デパ地下の雰囲気だ。だが、ただのデパ地下ではない。金沢名物などが並ぶ。加賀料理のお弁当は色とりどりで綺麗だし、ウナギや肉、富山のます寿司や白エビの天ぷら弁当もあって美味しそうだ。非常に迷う。加賀料理を食べていないからそれもいい。加賀料理というのは、身近な食材を生かした伝統的な郷土料理を、輪島塗や九谷焼などの豪華な器に盛りつける料理だそうだ。お弁当になると、流石に漆器や陶器ではなく、木の箱(多分)に入っているが、小さく仕切ったたくさんの四角いスペースに、色鮮やかなお料理が少量ずつ入れてあった。富山には明日行くから、と思ったけれども白エビの天ぷらも、とても美味しそうに見える。

 老若問わず、ご家族やご夫婦がお弁当を買い求めている。特に加賀料理のお弁当や、お肉やハンバーグのお弁当が人気のようだ。うーん、でも結局冷めたお弁当だからなぁ、と躊躇する私。

 ゆっくり歩きながら考え、更に歩いて行くと、ワーっと開けて天井の高い、すごく広い場所に出た。すごい数のお店と品数。食品、雑貨、色々なお土産物のお店が所狭しと並んでいた。

 なーんだ、さっきの駅ビルの入り口なんて、ここに比べたら小ぢんまりじゃないか。またもや「仁和寺のある法師」になってしまうところだった。ここでお土産を買おうじゃないか。

 すぐに目に付いたのが「金箔一味」だ。お馴染みの一味唐辛子の缶に入っている。蓋を回すと丸い穴が出て来るあの缶だ。金沢は金箔でも有名なので、金箔入りの一味唐辛子なのだろう。うちの長男は唐辛子好きなので、これを長男へのお土産にすると決めた。早速それを一つ買う。ペイペイで。

 奥へ進むと日本酒のお店があった。ここには人が大勢いる。やっぱりお土産にはその土地の地酒というのが定番なのだろう。それで、昨日飲み屋で飲んだ日本酒が美味しかったので、同じお酒を夫へのお土産にしようと思った。昨日、ちゃんとメニューの写真をスマートフォンで撮影しておいたのだ。撮影したのは、後でこのお酒が美味しかった、と誰かに言う為だったが、それが今役に立っている。何せ、名前を覚えておくつもりが覚えていなかったので。昨日の写真を見て、「加賀鳶 極寒純米 辛口」を一本購入した。昨日のお店はちゃんと地酒をお勧めしてくれたわけだ。加賀鳶はたくさん売っていた。

 因みに、やっぱりビニール袋は有料だった。私はエコバッグを何枚も持って来ているので、一つ取り出し、購入した箱入りの日本酒をその中に入れた。

 そして、親戚などに配るのにもってこいの、クッキーなどの箱入りお菓子を見に行った。たくさんある。次男の好きそうな「金沢の月」というお菓子を見つけた。「萩の月」が有名だが、あのような、カスタードクリームの入った、満月のような洋菓子。ケーキというのが正しいのか。これも買う事に決めた。それから、金沢のイメージと言えば黒、白、金という色合い。そんな感じのクッキーを見つけた。また、羽二重餅も気になった。親戚に配るのに良さそうだと思い、それらも買う事にした。自分も食べたいものはとりあえず二箱購入。そうしておけば、きっと自分の口にも入るだろう。ここでは何箱もお菓子を買ったので、紙袋に入れてくれた。良かった、良かった。

 さて、そろそろお土産はいいだろう。お弁当を買おうではないか。さて、どれにしようか。

 そう考えながらお弁当の売っている出入り口付近へ戻ると、途中で「海老弁当」という物を発見した。金箔の乗った白い海老のにぎり寿司に、イクラやカニのほぐし身などが乗ったちらし寿司。海老のすり身のような物も、ちらしの上に乗っているだろうか。これを見た瞬間、これと日本酒だ!とピンときた。冷めても美味しいお弁当と言えば寿司ではないか。それで、この海老弁当を購入し、それからさっき加賀鳶を買った日本酒のお店にとって返し、同じ加賀鳶のカップ酒を見つけて購入した。もう、両手に一杯だ。お土産の紙袋の中にお弁当を入れ、エコバッグにカップ酒を入れる。それで、あまりにペイペイでたくさん買い物をしたので、ペイペイが心配してくれた。「たくさん購入していますが、大丈夫ですか」と。

 さて、ホテルに向かおうと思うのだが、海老弁当だけでは野菜が足りない。量も足りないと思われる。これから夜にかけてゆっくり飲むわけだし、おつまみも必要だ。というわけで、コンビニに寄った。普通にファミリーマートだ。けっこうお腹が空いてきて、野菜を買う為にサラダを二つも買ってしまった。ポテトサラダと春雨サラダを。あ、炭水化物ばっかりではないぞ。ちゃんと野菜も入ったサラダだ。ビールも一缶買って、それからじゃガビーも買う。更に、関東では売っていないが北陸では普通に売っている「ビーバー」というお菓子が目に付いた。「ピーせん」のような、ホロホロっとした「揚げ餅」のようなお菓子だ。普通の赤いパッケージのビーバーの他に、ピンクの「白エビビーバー」、黒の「のどぐろビーバー」が売っていて、これはもう、ピンクと黒を買うしかないと思った。ただし、これはお土産として買おう。

 エコバッグが重たくなり、紙袋を持つ手が疲れてきた。一人なのに、家族で行ったのと同じようにお土産を買うから大変だ。ああ、夫の会社のお土産は買わないけれど。そして、やっとこさホテルに着いたのは、午後4時頃だった。やっぱり早い。当然まだ明るい。

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