105.これにて解決…?
「…ってワケなんで、一緒に来てくれないか?」
俺は今、エリュニエルの隠れ家を訪れている。天空の島の世界樹からエリュニエルを連れてくるように頼まれたからだ。
「いやしかし…」
「世界樹の世話を投げ出した事に負い目を感じているなら、尚更キチンと話したほうが良いと思うぞ?」
「それは…」
「ファスニエルさんに会いたくない?」
「っっ!まだ…まだ薬が出来てないんだ。それなのに戻るなんて…」
まぁ、薬を作るために島を飛び出したんだから、薬が完成していないのに戻るわけにはいかないよなぁ。
ちなみに、薬の方は『世界樹の樹液』のお陰で完成の目処は立っているらしい。
「よし、手伝うから完成させよう!」
「えっ?」
「ほらほら、早く!」
戸惑うエリュニエルを急かして作業台へと向かわせる。
「それで、どこで躓いてるんだ?」
「あ、あぁ。この素材を薬液に入れたあと沸騰させないように気をつけながら温めるんだ。その時に魔力を込めなければならないんだが…魔力が足りなくてな」
「なるほど?天族の魔力でも足りないんだな」
天族はヒトに比べて魔力量は豊富な種族なはずだが…
「いや、ここで籠もっていたせいで魔力の回復に時間が掛かっているのだ。天族はその翼に天からの恵みを浴びることで魔力を回復させているんだがここでは難しいのだ」
「そうなのか…」
「…アンタがやってくれないか?」
「えっ、ボク?」
「アンタはハイエルフだろう?頼む」
エリュニエルに変わって作業台の前に立つ。理科の実験道具みたいな器具が置かれていて、フラスコに入れられた薬草が火にかけられてそこから出た蒸気が管を通ってビーカーに水となって溜められていく。そこに『世界樹の樹液』を加えて、魔力を込めながらゆっくりとかき混ぜていく。
はじめはサラサラとしていた液体が徐々にトロリとしてくる。更にかき混ぜていくと液体が青色に輝き始めた。
鑑定すると『
「すごい…完成だ!」
エリュニエルが涙を流して喜んでいる。そして俺は、アムリタのレシピをちゃっかり手に入れていた。手伝ってたらレシピが開放されたんだよね〜。手持ちの素材で作れそうだから拠点に帰ったら作ってみようっと。
そんなわけで、アムリタを手に泣いているエリュニエルをサクッと天空の島まで連れ帰った。
「エリュニエル…ほんとにエリュニエルなの?!」
「ごめん、ファスニエル。どうしても君の翼を治したくて…」
「何言ってるの!!どれだけ心配したか…」
「ごめん、ごめんね…ファスニエル…」
子どものように泣きじゃくるエリュニエルと、怒りながらも会えた喜びを噛み締めているファスニエル。
うんうん、感動の再会だな。
さて、いい雰囲気の二人には悪いがエリュニエルにはもう1件行ってもらわないとなんだよな。とりあえずアムリタを渡したら世界樹のトコへ行ってくれないか?
「えっ…アムリタ?!」
驚いているファスニエルから、モダモダしているエリュニエルを引き剥がして世界樹の元へ向かう。
すると、ナサニエルが世界樹の下でお茶を飲んでいるところだった。
「おや、シオン様。…そちらはエリュニエルですか?」
「うん。薬が完成したからファスニエルに渡してきたよ。さて、おーいエリュニエル連れてきたぞー」
挨拶もそこそこに世界樹へ話しかける。
すると―
『おー、エリュ坊かー、ひさしいのー』
「せ、世界樹様…」
『お前さんがここに居るっちゅー事はー、問題は解決したんかのー』
「は…はい!」
『そうかぁー、そりゃ良かったのー』
世界樹はノンビリと話しかけている。手入れを放置されて怒ってる…様子はないな?
『そんでー、エリュ坊よー。儂の世話は誰かに譲る気かー?』
「えっ…私は世界樹様に申し訳ないことをしましたから…お世話係には相応しくありません」
『そうかぁー?儂は気にしとらんけどなー』
「えっ、でも…」
『それにー、儂の声が聴こえる者は天空の島におらんからのー。これからも世話係はやってほしいんじゃー』
「…いいんですか?」
『あれほど強烈な起床薬作れるのはお主しかおらんもんー。シオンの薬も効いたがー、お主の薬が一番なんじゃー』
「世界樹様…」
エリュニエルが世界樹と和解?してすぐ、翼の治ったファスニエルがエリュニエルの元へ文字通り飛び込んで来て、天空の島でのクエストは一旦完了したのだった。
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ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
しばらく時間は空きましたが、ようやく天空の島でのクエストが完了しました。
シオン君はこの後どこへ行くんでしょうね?
この作品が「面白かった」「楽しかった」と感じていただけたら、☆などで評価して頂けると嬉しいです。
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